【完結】妹が我儘すぎると元婚約者が土下座して復縁を求めてきた

冬月光輝

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第九話(ゲイツ視点)

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「ミラ、フルーツの盛り合わせを持ってきた」

「そんなに食べたら太るでしょう。わたくしはゲイツ様みたいな豚にはなりたくなくてよ」

「ほら、欲しがっていたネックレス。オーダーメイドで作らせた」

「わたくしがそんな派手なのをいつ身に着けたいと申しましたか? まぁ、犬の首輪くらいにはして差し上げましょう」

「疲れたのか。よし、メイドにマッサージをさせよう」

「ゲイツ様がなさってくださいな。ほら、足のマッサージ。跪きなさい」

 くぅぅぅぅぅ! なんで、この僕が膝をついて、女の足のマッサージをしなくてはならないんだ。
 
 屈辱だ……! なんたる屈辱!!
 この僕は侯爵家の跡取りであるゲイツ様だぞ! 

「下手ですわね。もっと力を入れてくださいな」

「この女! 言わせておけば!」

「十億エルド……」

「いやー、ミラ様。すみません。もっと力を込めますね。へへへ」

 だが、卑怯なミラは十億エルドを引き合いにして、僕の反抗を許さない。
 畜生! どうして、僕は調子に乗ってあんな契約をしちまったんだ。
 だって、あの時は格好いいと思ったんだもん。ミラがそういう契約をして永遠の愛を誓った貴族令息の話をしたときは。
 思えば、あれが罠だったのか。ベタベタとやたら触ってきて、色仕掛けを使ってくるから気付かなかった。

 なんて、姑息で卑劣な手段を使うんだ。

「やっぱり下手ですわ。この役立たず」
「ぐえっ!」

 マッサージを気に入らなかったミラは僕のことを蹴飛ばす。
 そして、ゴミを見るような冷たい視線をこちらに送ってきた。

「はぁ、なんだか暇ですし、つまらないです。このまま、ゲイツ様と結婚するより十億エルド貰っておいた方が良さそうな気がしますの」

「い、いや! そ、それだけは勘弁してくれ! 頼む! このとおりだ!」

「頭を下げるくらいお猿さんでも出来ますが、まぁいいでしょう。これからもわたくしを退屈させぬように足りない頭で知恵を出して、精進してくださいまし」

 優しく、僕の頬を触りながらミラはずっとこんな生活が続くのだと恐ろしいことを宣言した。
 だが、この女に従わなくては僕はエルミリオン家に十億エルドも支払わなくてはならない。

 それは僕の人生の破滅を意味していた。だから、絶対にそれだけは避けなくては……。

 い、いやエルミリオン家? 待てよ。待ってくれ。僕は大事なことを忘れていたぞ。
 ミラの横暴ぶりのせいで頭の中が麻痺していたが、エルミリオン家にはもう一人の女がいたではないか。

 そう、僕の前の婚約者のアリアだ。
 アリアと僕は元々、結婚する予定だった。それならば、彼女と復縁すれば全部丸く収まるのでは? だって、あの女は行き遅れないし、僕は違約金を払ってもエルミリオン家と縁は切れないのだから実質痛みはゼロ。

 ほら! 全部上手く行くし、みんな幸せになる!

 そうか、そうか。これは愛の試練だったのか。僕が本気で愛さなくてはならないのはアリアだということに気付かせるための。

 アリア、待っていてくれ! 今から運命の人フォーチュンパートナーであるこのゲイツ様が君のもとに迎えに行くからね……!
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