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第八話(ゲイツ視点)
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こ、こんな、こんなはずじゃあなかった。
どうしてこうなった? 僕は幸せになるために人生の伴侶を決めたつもりだったのに。
天使だと思っていた麗しいミラは悪魔のような女だった……。
「喉が渇きましたわ」
「あ、ああ、気が付かなくて悪かった。すぐに君のために飲み物を持ってこさせるよ」
僕はミラと一緒に海まで来ている。美術館に行く予定だったのだが、彼女が急にイルカがみたいというので、船を出しているのだ。
イルカってどこにいるんだ? 漁師の話だと見れないことの方が多いとのことだが……。
「レモネードをお持ちしました」
「ほら、ミラ。飲み物だ」
「はぁ……、ゲイツ様、こっちに寄りなさい」
「んっ? どうしたんだ? わぷっ!?」
ミラはレモネードを受け取った瞬間、僕の顔にそれをかけた。
な、な、なんてコトするんだ! 人の顔に飲み物をかけるなんて。
「ゲイツ様、このクソ暑いのに、氷も入ってない飲み物を渡すなんて、わたくしのことをバカにしているのですか?」
「こ、氷だとぉ!? ここは船の上だ! そんなものはあるわけがない!」
「豚みたいな鼻をしているくせに言い訳だけはご立派ですわね。そんなの最初から用意して持ってくるんですよ」
「美術館に行く予定だったんだ! お前がわがまま言うから用意する間もなく、海なんかに出たんじゃないか! それに鼻はそこまで豚みたいじゃない!」
この女は次から次へと不満ばかり言いやがって!
自分勝手にも程があるじゃないか。
くそっ! くそっ! くそっ! 騙された!
ミラは最初だけ僕にしおらしい姿を見せて、婚約したらこっちのものだと思って好き勝手してやがる。
「あらあら、言い訳ばかりですわね。自分が使えない男だという自覚もなしに、グダグダ、グダグダ。愛するわたくしを幸せにするって仰ったのをもうお忘れですか?」
頭をペシペシと叩きながら、僕のことをバカにするミラ。
この女は僕に対して少しも敬意を払っていない。
ああ、腹が立つ。こんな屈辱を受けたのは初めてだ。
この僕は侯爵家の跡取りだぞ。この国を代表する貴族の名家でエリートなんだ。
たかが伯爵家の次女なんかに馬鹿にされて良い人間じゃあない……!
「ミラ! お前! いい加減にしろよ……! 僕がお前にいつまでも優しくしていると思って、つけ上がりやがって! お前なんて、顔だけが良い、性悪女だ! もう、お前なんて要らない!」
言ってやった! 言ってやったぞーーー!
そうだよ、そうそうそう。女の言うことを素直に聞いてやってる僕もどうかしていた。
強気に出れば良かったんだ! 強気に!
「ゲイツ様、今なんと仰せになりましたか?」
「お前なんて要らないって言ったんだよ! 家の格式は我が家の方が上だ! お前なんか捨てても他に良い女が――」
「十億エルド……」
「ぷえっ……?」
ボソッと耳元でミラがその金額を呟く。
あ、あれ? なんか、すごく聞き覚えのある金額だな……。
十億エルド、ね。十億エルド……。それって、なんだっけ……。
「わたくしとの縁談を破談にするなら、ご勝手に。十億エルド払ってもらう血判状が我が家にはありますから。一向に構いませんよ」
「み、ミラ~~! くぅ~~~~!」
そ、そうだった。ぼ、ぼ、僕はなんて契約を。
悪魔だ……! この女は悪魔すぎる……!
ああ、こんなことなら、アリアと婚約破棄するんじゃなかった……!
どうしてこうなった? 僕は幸せになるために人生の伴侶を決めたつもりだったのに。
天使だと思っていた麗しいミラは悪魔のような女だった……。
「喉が渇きましたわ」
「あ、ああ、気が付かなくて悪かった。すぐに君のために飲み物を持ってこさせるよ」
僕はミラと一緒に海まで来ている。美術館に行く予定だったのだが、彼女が急にイルカがみたいというので、船を出しているのだ。
イルカってどこにいるんだ? 漁師の話だと見れないことの方が多いとのことだが……。
「レモネードをお持ちしました」
「ほら、ミラ。飲み物だ」
「はぁ……、ゲイツ様、こっちに寄りなさい」
「んっ? どうしたんだ? わぷっ!?」
ミラはレモネードを受け取った瞬間、僕の顔にそれをかけた。
な、な、なんてコトするんだ! 人の顔に飲み物をかけるなんて。
「ゲイツ様、このクソ暑いのに、氷も入ってない飲み物を渡すなんて、わたくしのことをバカにしているのですか?」
「こ、氷だとぉ!? ここは船の上だ! そんなものはあるわけがない!」
「豚みたいな鼻をしているくせに言い訳だけはご立派ですわね。そんなの最初から用意して持ってくるんですよ」
「美術館に行く予定だったんだ! お前がわがまま言うから用意する間もなく、海なんかに出たんじゃないか! それに鼻はそこまで豚みたいじゃない!」
この女は次から次へと不満ばかり言いやがって!
自分勝手にも程があるじゃないか。
くそっ! くそっ! くそっ! 騙された!
ミラは最初だけ僕にしおらしい姿を見せて、婚約したらこっちのものだと思って好き勝手してやがる。
「あらあら、言い訳ばかりですわね。自分が使えない男だという自覚もなしに、グダグダ、グダグダ。愛するわたくしを幸せにするって仰ったのをもうお忘れですか?」
頭をペシペシと叩きながら、僕のことをバカにするミラ。
この女は僕に対して少しも敬意を払っていない。
ああ、腹が立つ。こんな屈辱を受けたのは初めてだ。
この僕は侯爵家の跡取りだぞ。この国を代表する貴族の名家でエリートなんだ。
たかが伯爵家の次女なんかに馬鹿にされて良い人間じゃあない……!
「ミラ! お前! いい加減にしろよ……! 僕がお前にいつまでも優しくしていると思って、つけ上がりやがって! お前なんて、顔だけが良い、性悪女だ! もう、お前なんて要らない!」
言ってやった! 言ってやったぞーーー!
そうだよ、そうそうそう。女の言うことを素直に聞いてやってる僕もどうかしていた。
強気に出れば良かったんだ! 強気に!
「ゲイツ様、今なんと仰せになりましたか?」
「お前なんて要らないって言ったんだよ! 家の格式は我が家の方が上だ! お前なんか捨てても他に良い女が――」
「十億エルド……」
「ぷえっ……?」
ボソッと耳元でミラがその金額を呟く。
あ、あれ? なんか、すごく聞き覚えのある金額だな……。
十億エルド、ね。十億エルド……。それって、なんだっけ……。
「わたくしとの縁談を破談にするなら、ご勝手に。十億エルド払ってもらう血判状が我が家にはありますから。一向に構いませんよ」
「み、ミラ~~! くぅ~~~~!」
そ、そうだった。ぼ、ぼ、僕はなんて契約を。
悪魔だ……! この女は悪魔すぎる……!
ああ、こんなことなら、アリアと婚約破棄するんじゃなかった……!
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