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第五話(ゲイツ視点)
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「ああ、君が僕の婚約者だなんて夢のようだよ。このレストランは僕の行きつけでね。特にこのステーキがオススメなんだよ」
美しいミラの顔に見惚れながら僕は自分の一番のお気に入りの店で料理を堪能する。
夢じゃないんだよなぁ。あのミラが、僕の妻になってくれるなんて。
ああ、食べる姿までなんて愛おしいんだ。最高だよ。
「このステーキ、靴みたいな味がしますわ」
「へっ?」
「ゲイツ様はわたくしに靴を食べさせて喜ぶような男ですの? 酷すぎますわ」
こ、このステーキが靴みたいな味だって?
あはは、ミラは冗談が好きなんだなぁ。だって、こんなに美味しいよ。
ミラったら、一口食べて本当にそれ以上口つけないじゃないか。
えっと、機嫌が悪い日なのかな。だって、いつもは天使みたいに微笑んでいるのに、なんか今日は違うんだけど……。
「ここのシェフを呼んでくださいまし」
「えっ? ミラ、今なんて……」
「シェフを呼べって言ってるんですわ! 顔だけじゃなくて耳も悪いんですか!」
「ひぃっ!? シェフ! シェフ! シェフ! こっちに来るんだ!」
怒りの形相でシェフを呼びつけろというミラ。
な、なんで、あんなに怒っているの? あんなに怒っているミラを見たこと今までないんだけど……。
てか、今、僕の顔のこと貶していなかった?
「ゲイツ様、お呼びでしょうか。シェフのアルベルトです」
「あ、ああ、アルベルト。なはは、特に用事がある訳じゃないんだが――」
「クビにしてくださいまし」
「「はぁ?」」
「わたくしに靴を食べさせた、その糞シェフをクビにしろと言っておりますの」
く、クビって、いわゆる解雇ってこと? いやー、この店は僕の持ち物じゃないんだけどな。
ミラったら、どうしたんだろう。今日はすっごく変だ。
「ミラ、君の虫の居所が悪いのは分かったけどクビっていうのは穏やかじゃないな。冗談っていうのは、もっと人を和ませるようなものじゃないと……」
「この顔が冗談を言っているように見えるなら眼科を紹介させてもらいますの。わたくしを幸せにするために何でもするって仰ったのは嘘なんですか?」
「ええっと、冗談じゃないというのね。なはは、参ったな。ううん、と」
こ、怖いんだけど。本当に怖いんだけど。
えっ? えっ? えっ? ミラって結構な我儘を言う系のお嬢様だったの?
だって、昨日まで全然そんなことなかったじゃん。
いや、僕は試されているんだ。本当にミラを幸せに出来るのかどうか。
シェフをクビに出来るかとかそういうんじゃない。
「アルベルト、腕落ちてるぞ。こんなのだと、いつかシェフから降格させられるかもしれないし、油断するなよ」
「肝に銘じます。それでは、私は失礼を……」
「ゲイツ様、ふざけていますの?」
「ひいっ! オーナーに言ってお前をクビにするように言ってやる! この糞シェフ!」
「そ、そんな、ゲイツ様……」
怖い! 怖い! 怖い! 怖い!
つい、シェフをクビにするくらいミラが怖いよ。
なんだ、あの氷のように何もかも射殺すような視線は。
どうして、こうなった? えっ? だって、君は天使のように美しくて優雅で可憐だったじゃないか。
今、どうして僕は君のこと悪魔みたいだと思っているんだ……?
美しいミラの顔に見惚れながら僕は自分の一番のお気に入りの店で料理を堪能する。
夢じゃないんだよなぁ。あのミラが、僕の妻になってくれるなんて。
ああ、食べる姿までなんて愛おしいんだ。最高だよ。
「このステーキ、靴みたいな味がしますわ」
「へっ?」
「ゲイツ様はわたくしに靴を食べさせて喜ぶような男ですの? 酷すぎますわ」
こ、このステーキが靴みたいな味だって?
あはは、ミラは冗談が好きなんだなぁ。だって、こんなに美味しいよ。
ミラったら、一口食べて本当にそれ以上口つけないじゃないか。
えっと、機嫌が悪い日なのかな。だって、いつもは天使みたいに微笑んでいるのに、なんか今日は違うんだけど……。
「ここのシェフを呼んでくださいまし」
「えっ? ミラ、今なんて……」
「シェフを呼べって言ってるんですわ! 顔だけじゃなくて耳も悪いんですか!」
「ひぃっ!? シェフ! シェフ! シェフ! こっちに来るんだ!」
怒りの形相でシェフを呼びつけろというミラ。
な、なんで、あんなに怒っているの? あんなに怒っているミラを見たこと今までないんだけど……。
てか、今、僕の顔のこと貶していなかった?
「ゲイツ様、お呼びでしょうか。シェフのアルベルトです」
「あ、ああ、アルベルト。なはは、特に用事がある訳じゃないんだが――」
「クビにしてくださいまし」
「「はぁ?」」
「わたくしに靴を食べさせた、その糞シェフをクビにしろと言っておりますの」
く、クビって、いわゆる解雇ってこと? いやー、この店は僕の持ち物じゃないんだけどな。
ミラったら、どうしたんだろう。今日はすっごく変だ。
「ミラ、君の虫の居所が悪いのは分かったけどクビっていうのは穏やかじゃないな。冗談っていうのは、もっと人を和ませるようなものじゃないと……」
「この顔が冗談を言っているように見えるなら眼科を紹介させてもらいますの。わたくしを幸せにするために何でもするって仰ったのは嘘なんですか?」
「ええっと、冗談じゃないというのね。なはは、参ったな。ううん、と」
こ、怖いんだけど。本当に怖いんだけど。
えっ? えっ? えっ? ミラって結構な我儘を言う系のお嬢様だったの?
だって、昨日まで全然そんなことなかったじゃん。
いや、僕は試されているんだ。本当にミラを幸せに出来るのかどうか。
シェフをクビに出来るかとかそういうんじゃない。
「アルベルト、腕落ちてるぞ。こんなのだと、いつかシェフから降格させられるかもしれないし、油断するなよ」
「肝に銘じます。それでは、私は失礼を……」
「ゲイツ様、ふざけていますの?」
「ひいっ! オーナーに言ってお前をクビにするように言ってやる! この糞シェフ!」
「そ、そんな、ゲイツ様……」
怖い! 怖い! 怖い! 怖い!
つい、シェフをクビにするくらいミラが怖いよ。
なんだ、あの氷のように何もかも射殺すような視線は。
どうして、こうなった? えっ? だって、君は天使のように美しくて優雅で可憐だったじゃないか。
今、どうして僕は君のこと悪魔みたいだと思っているんだ……?
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