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第六話
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「うわぁ……、ナッシュ様の子供がシェムロイ夫人のお腹の中にいて、レイラさんも二人の子供で、ティアナ様はそんなナッシュ様にご執心……」
今日あった出来事を妹のルミアに話してしまいました。
あまりにも、という内容でしたので両親にはとても話す気にはなれず、だからといって自分一人で抱え込むには重すぎましたので、非常に遺憾ではありますがこの能天気娘が一番話しやすかったのです。
「姉さん……ドンマイ」
「軽くない?」
ルミアはニコッと笑って肩を叩きました。
まったく、この子ときたら他人事だと思ってヘラヘラして。
ドンマイじゃありませんよ。こんな胃もたれする話を四文字で締めたりしないでください。
「だって、当然破棄するんでしょ? ナッシュ様との婚約。まさか母子の愛の結晶を自分の子供にして育ててくれって、イカれた話を飲み込むつもり?」
「嫌に決まってるでしょ。そんなおぞましいこと出来るはずがないわ。あり得ない」
「だったら、答えは出てるじゃん。やばい婚約者とそのお母さんからは、さっさと逃げ出そう。結婚なんてしたら大変だよ。シェムロイ夫人ってば、辺境に家買ったんでしょ? 手厚く軟禁するつもり満々じゃない」
ルミアの中ではさっさとナッシュとは縁を切って、逃げ出すことが正解だと答えが出ているみたいです。
もちろん、私もそれには全面的に同意ですし、なんのしがらみも無ければそうしたい。
しかし、ナッシュは公爵家の嫡男。父も母も婚姻に乗り気どころか、多少の難ありは目を瞑ってでも結婚すべきだと声を揃えています。
この二人を説き伏せる為には当然のことながら夫人のお腹にナッシュの子供がいることとか、彼の妹のレイラはナッシュと夫人の子供ということまで話さなくてはならないでしょう。
「お父様とお母様は事情を聞いて納得してくれるでしょうか? それに……ルミアもこの調子ですから嫁の貰い手が見つかるかどうか不安ですし、その上、私が公爵家と揉めて破談となるのは――」
「ちょっと、そこはかとなく私のことをディスるのをやめてもらえない?」
我が家の両親は変なところでおおらかな部分があるので、この話を聞いても「お前が育てれば良いじゃないか」とか「逆に公爵夫人の弱みを握ったんだ。お前が主導権をそこから奪えば良い」とか言い出し兼ねない人たちです。
それに、このことを話して両親が婚約破棄に納得してくれたとしましょう。
私たちは当然のことながらシェムロイ公爵夫人のことを糾弾するのですが、そうなれば修羅場になることは必至。
公爵家とひと悶着あれば、私の今後にも響き……もっと言えばイースロン家の将来にも影響しそうなのです。
「まぁ、姉さんの言うことも分かるよ。なるべく穏便に事を済ませたいってことでしょ?」
「ええ、それはまぁ。穏便に済ませることが可能なら」
「だったら、良いアイデアがある。ナッシュ様に心変わりしてもらえばいいんだよ。向こうからの都合で破棄してもらえば、私らは何も悪くないじゃん」
「心変わりさせる? そんなことが出来るの?」
「うーん。多分だけど、何とか頑張れば。取り敢えず姉さんはナッシュ様にご執心のティアナ様に会ってみてよ」
ルミアが何やらナッシュに婚約破棄をしてもらう方法を思いついたみたいですが、本当に大丈夫なのでしょうか。
というより第一王女のティアナ様を巻き込もうとしている時点でかなり不安なのですが――。
でも、信じてみますか。この子、昔から変なときに頭が切れる子でしたから――。
今日あった出来事を妹のルミアに話してしまいました。
あまりにも、という内容でしたので両親にはとても話す気にはなれず、だからといって自分一人で抱え込むには重すぎましたので、非常に遺憾ではありますがこの能天気娘が一番話しやすかったのです。
「姉さん……ドンマイ」
「軽くない?」
ルミアはニコッと笑って肩を叩きました。
まったく、この子ときたら他人事だと思ってヘラヘラして。
ドンマイじゃありませんよ。こんな胃もたれする話を四文字で締めたりしないでください。
「だって、当然破棄するんでしょ? ナッシュ様との婚約。まさか母子の愛の結晶を自分の子供にして育ててくれって、イカれた話を飲み込むつもり?」
「嫌に決まってるでしょ。そんなおぞましいこと出来るはずがないわ。あり得ない」
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もちろん、私もそれには全面的に同意ですし、なんのしがらみも無ければそうしたい。
しかし、ナッシュは公爵家の嫡男。父も母も婚姻に乗り気どころか、多少の難ありは目を瞑ってでも結婚すべきだと声を揃えています。
この二人を説き伏せる為には当然のことながら夫人のお腹にナッシュの子供がいることとか、彼の妹のレイラはナッシュと夫人の子供ということまで話さなくてはならないでしょう。
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「ちょっと、そこはかとなく私のことをディスるのをやめてもらえない?」
我が家の両親は変なところでおおらかな部分があるので、この話を聞いても「お前が育てれば良いじゃないか」とか「逆に公爵夫人の弱みを握ったんだ。お前が主導権をそこから奪えば良い」とか言い出し兼ねない人たちです。
それに、このことを話して両親が婚約破棄に納得してくれたとしましょう。
私たちは当然のことながらシェムロイ公爵夫人のことを糾弾するのですが、そうなれば修羅場になることは必至。
公爵家とひと悶着あれば、私の今後にも響き……もっと言えばイースロン家の将来にも影響しそうなのです。
「まぁ、姉さんの言うことも分かるよ。なるべく穏便に事を済ませたいってことでしょ?」
「ええ、それはまぁ。穏便に済ませることが可能なら」
「だったら、良いアイデアがある。ナッシュ様に心変わりしてもらえばいいんだよ。向こうからの都合で破棄してもらえば、私らは何も悪くないじゃん」
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「うーん。多分だけど、何とか頑張れば。取り敢えず姉さんはナッシュ様にご執心のティアナ様に会ってみてよ」
ルミアが何やらナッシュに婚約破棄をしてもらう方法を思いついたみたいですが、本当に大丈夫なのでしょうか。
というより第一王女のティアナ様を巻き込もうとしている時点でかなり不安なのですが――。
でも、信じてみますか。この子、昔から変なときに頭が切れる子でしたから――。
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