上 下
30 / 32

最終話

しおりを挟む
 一体何がどうなっているのか。
 あれから結婚式自体は無事に終わったのですが、色々とその後が大変だったみたいです。
 なんせ、オリビア殿下がいきなり現れてリュオン殿下に求婚したのですから。

 両国間の関係は一気に緊張感が増しました。
 なんせルーメリア王国は二度やらかしたことになるのですから。厳しい批判が起こるのは必然です。

 しかし、これに待ったがかかりました。
 マルサス様の侍女であるアネットさんが調査報告書なるものを提出したのです。

 その報告書には今回の件の首謀者はルーメリア王国と戦争を起こさせて、利益を上げようとしたこちらの国の武器商人ギルドであり、ゲイオスという王宮の使用人を使って騒動を企てたと書いてありました。

 マルサス様はそれをいち早く察知して、カムフラージュも兼ねてあれほど豪華なショーを催し、裏でアネットさんにゲイオスの周りを洗わせていたのだそうです。
 
 つまり両国どちらともに過失があり、この件は痛み分けとなりました。
 もちろん、武器商人ギルドは解体、オリビア殿下は下流貴族の養子に出されて王族権は剥奪と厳しい処分はかかりましたが。


「あのマルサス様が英雄になるとは分からないものですわ」

「そういう星のもとに生まれた人もいるということです」

「ですが、その後、この国に戻られないのには何か理由があるのでしょうか?」

 マルサス様は行方不明になってしまいました。
 テスラー伯爵は勘当するという宣告はなかったことにすると言っているのですが、家に一向に戻られないみたいです。

「どうやら、多額の借金を抱えた上に、この国のならず者たち殆ど全員に目を付けられて帰ることが出来なくなったそうだぞ」

「「お兄様!」」

 兄のカインが会話に入って来られました。
 マルサス様が多額の借金って、大金持ちになられたのではなかったのですか……。

「例の結婚式のショーなんだが、一発限りで終わらせるつもりではなく、定期的に公演するために劇団を作ったらしいんだ。さらに今後の運営を支えるためにレアポーションの原料が見つかったという鉱山を大借金して丸ごと買い取ってな。それが見事に不良債権になってしまったらしい」

「その借金が質の悪い方々を?」

「いやー、武器商人ギルド絡みの中にはヤバいやつも多いからなー、そっちに恨みを買ったみたいだぞ」

 な、なんというスケールの大きい転落の仕方をされたのでしょう。
 両国の戦争を止めて大手柄を上げたのに、肝心の凱旋が果たせないなんて、可哀想です。

「まぁ、お前はお前のことだけ考えろ。前の男がどうなったって関係ないんだから」

「わたくしはファンとして行く末を知りたいですけど」

 そうですね。
 私もリュオン殿下と来週には夫婦になります。
 色々ととんでもないことがあって、どうしようかと思いましたが幸せになれそうです。
 今後、大体のことには驚かないように耐性がつきましたし……。

 マルサス様、どうかお達者で――。


病弱な幼馴染が大事だと婚約破棄されましたが、彼女は他の方と結婚するみたいですよ

 ~完結~

 ◇ ◇ ◇

 あとがき(言い訳とか色々……)

やっぱり、主人公のスペックを凡人にすると空気になってしまいます。「元婚約者は~」で学んだのにどうしてこうなったのか……。
ルティアの今後とかほとんど興味持たれていないだろうと薄々感じていたので、この辺で締めようかと思います。

マルサスについては、予想以上に人気になってしまって、こんなはずでは……とも思っています。
主人公より人気のざまぁ対象っていうのは初めてですね。

一応、マルサスのキャラクター自体は今開催されている次世代ファンタジーカップの主人公として考案したキャラクターなんです。
ざまぁされ続けても、謎の方向の努力で成り上がるみたいなキャラを主人公にしたら新しいのでは?と思いまして。
色々と理由があって断念しましたが……。

ただ、主人公にしていたら人気は出なさそうです。
マルサスが主人公なら絶対に鼻につくと思うんですよね。最初の部分で……。
脇役だから頑張れたのでは、と。

スピンオフを書こうとしたのですが、やっぱり難しいんですよ。
彼を主役にすると何かマルサス感が薄れるというか……。

ですから、後日談的な感じで番外編を何話か書ければと思います。
アネットとの今後とか……。ハッピーエンドになるような感じで。

そして、次作なのですがかなり間が空きそうでして……。
実は私的な話で恐縮なのですが、現在四作品の書籍化が決まっていまして、同時進行で改稿や加筆などの作業に追われてのたうち回っています。
そういう時に無責任に連載を始めるのは悪手かと考えて、自重することにしました。

自分としては書籍化も嬉しいですけど、この作品みたいに絶対に書籍化しないけれどWEB小説だからこそ楽しいみたいな作品も沢山書いていきたいと思っていますので、必ず戻ってきます。

厚かましいお願いですが、その時はまた楽しんで頂けると幸いです!

最後までご愛読ありがとうございました!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました

柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》  最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。  そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。

完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。 結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに 「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……

今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?

水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。 メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。 そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。 しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。 そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。 メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。 婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。 そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。 ※小説家になろうでも掲載しています。

〈完結〉ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」マニュレット・マゴベイド男爵令嬢は、男爵家の婿である父から追い出される。 そもそも男爵の娘であった母の婿であった父は結婚後ほとんど寄りつかず、愛人のもとに行っており、マニュレットと同じ歳のアリシアという娘を儲けていた。 母の死後、屋根裏部屋に住まわされ、使用人の暮らしを余儀なくされていたマニュレット。 アリシアの社交界デビューのためのドレスの仕上げで起こった事故をきっかけに、責任を押しつけられ、ついに父親から家を追い出される。 だがそれが、この「館」を母親から受け継いだマニュレットの反逆のはじまりだった。

どうやら我が家は国に必要ないということで、勝手に独立させてもらいますわ~婚約破棄から始める国づくり~

榎夜
恋愛
急に婚約者の王太子様から婚約破棄されましたが、つまり我が家は必要ない、ということでいいんですのよね?

婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました

柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。 「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」 「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」  私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。  そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。  でも――。そんな毎日になるとは、思わない。  2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。  私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

(完結)相談女とお幸せに!(なれるものならの話ですけども。)

ちゃむふー
恋愛
「私は真実の愛に目覚めたんだ!ミレイユ。君は強いから1人で大丈夫だろう?リリアンはミレイユと違って私がいないとダメなんだ。婚約破棄してもらう!!」 完全に自分に酔いしれながらヒーロー気分なこの方は、ヨーデリア侯爵令息のガスパル。私の婚約者だ。 私はミレイユ・ハーブス。伯爵令嬢だ。 この国では、15才から18才まで貴族の令息令嬢は貴族の学園に通う。 あろう事かもうすぐ卒業のこの時期にこんな事を言ってきた。 できればもう少し早く言って欲しかったけれど…。 婚約破棄?大歓迎ですわ。 その真実の愛とやらを貫いてくださいね? でも、ガスパル様。 そのリリアンとやらは、俗に言う相談女らしいですわよ? 果たして本当に幸せになれるのかしら…?? 伯爵令嬢ミレイユ、伯爵令嬢エミール2人の主人公設定です。 学園物を書いた事があまり無いので、 設定が甘い事があるかもしれません…。 ご都合主義とやらでお願いします!!

処理中です...