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第二十話(マルサス視点)
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「よし! すべて合わせて1200万エルド! 何とか目標額に近付いたな!」
「若様が私から借りた800万エルドを溶かして暴れられて、出禁にならなかったらもっと稼げましたけどね」
アネットから2000万エルド借りることになったが、僕は現金1200万エルドを手にすることが出来た。
まったく、アネットのやつ。僕が信用出来ないって借用書まで作らせやがって、利息でも何でも払ってやるよ。全て終わったらな。
残念なのはカジノは出禁になってしまったこと。
だって、おかしいだろ。あのあと、赤にいくら賭けても全部黒に玉が入るなんて。
インチキに決まってるのに、抗議したら追い出されるって。
「1200万エルドを5050万エルドに増やすなんて出来るのですか? あと4000万近く稼がねばなりませんが」
「ふっふっふっ、最初から僕だって運頼りのギャンブルに全振りしようなんて思ってなかったさ」
「流石です。とても、ぽえっ、ぎゃピッ、とか言いながら2回も全財産を失って土下座される方の発言とは思えません」
うるさいな。
あのときは熱くなって、自分を見失っていたんだ。
ギャンブルって怖いね。取り返さなきゃ、取り返したいって感情が理性を失わせるんだもん。
それにしても、こいつ――。
「お前、金を貸したからって調子に乗るなよ」
「……それでは、今から旦那様にこの借用書を――」
「アネット様~~! 僕が調子に乗ってましたーーーー!」
「路上で土下座しないで下さい……。分かりましたから」
あ、危なかった。今、こいつに借金のことをバラされたらおしまいだ。
土下座なんて、タダなんだからいくらでもしてやるさ。
――そう、愛のために!
「よし! どんどん掘っていこう!」
土工用のつるはしを片手に僕はある鉱山に来ている。
そう、この鉱山の一角を僕は買い取った。
どうやら、その昔。この鉱山では沢山の宝石が取れたそうだ。
特にエメラルドは末端価格でも5000万エルドは下らない貴重なものを多く算出していて、一時期は世界一の宝石鉱山だと名を馳せていたとのこと。
僕はここが特別な格安価格で売られていることを知っていた。
だから、ある程度の軍資金が貯まったらここで宝石を掘り当てて、一攫千金を狙うつもりだったのである。
「どう見ても掘り尽くされた後なんですけど……」
「そんなのやってみなきゃ、分からないだろ? アネット、知っているか? 夢というのは諦めたら終わりなんだぜ……!」
「格好つけていますけど、“夢”って言っちゃってますからね」
僕は一心不乱になって買い取った鉱山の一角を掘りまくった。
そう、「一念岩をも通す」という言葉が遥か東の大国にはある。
僕には誰にも負けない愛の大きさがあるんだ。
掘る! 掘って、掘って、掘りまくる!
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
そして、一週間が過ぎた――。
「また徹夜していたんですか? 食料と水です。ここに置いておきますよ」
「はぁ、はぁ……」
お、おかしいな。一週間穴を掘り続けたら筋肉もついたし、慣れると思ったのに――つるはしが重い……。
「不眠不休で掘り続けても、無いものは見つかりませんよ」
「ぜぇ、ぜぇ……、諦められないんだよ! あの日、誓った愛は裏切れない! はぁ、はぁ……!」
「はぁ……、本当に、世界一のバカ様ですね……」
僕は絶対に諦めない!
掘り続ければいつか――!
「ぬわああああああっ!」
そのとき!
いつもとは違う感触が、僕の腕は感じ取った!
やっと来たか! 見つかったか!
「うわっぷ! つ、冷たい!」
プシューとものすごい勢いで噴射される水。
……どうやら、湧き水らしい。
はぁ~、また別のところを掘らないと……。
「わ、若様……、この銀色に輝いている水って。レアポーションの原材料になっている“輝水”じゃないですか? 確か、末端価格が1リットル、1万エルドくらいで取引されていたような……」
「ぽえっ!?」
……あはは、ほら、言っただろう?
――最後に愛は勝つって!
なーはっはっはっはっは! 大金持ちだ!
「若様が私から借りた800万エルドを溶かして暴れられて、出禁にならなかったらもっと稼げましたけどね」
アネットから2000万エルド借りることになったが、僕は現金1200万エルドを手にすることが出来た。
まったく、アネットのやつ。僕が信用出来ないって借用書まで作らせやがって、利息でも何でも払ってやるよ。全て終わったらな。
残念なのはカジノは出禁になってしまったこと。
だって、おかしいだろ。あのあと、赤にいくら賭けても全部黒に玉が入るなんて。
インチキに決まってるのに、抗議したら追い出されるって。
「1200万エルドを5050万エルドに増やすなんて出来るのですか? あと4000万近く稼がねばなりませんが」
「ふっふっふっ、最初から僕だって運頼りのギャンブルに全振りしようなんて思ってなかったさ」
「流石です。とても、ぽえっ、ぎゃピッ、とか言いながら2回も全財産を失って土下座される方の発言とは思えません」
うるさいな。
あのときは熱くなって、自分を見失っていたんだ。
ギャンブルって怖いね。取り返さなきゃ、取り返したいって感情が理性を失わせるんだもん。
それにしても、こいつ――。
「お前、金を貸したからって調子に乗るなよ」
「……それでは、今から旦那様にこの借用書を――」
「アネット様~~! 僕が調子に乗ってましたーーーー!」
「路上で土下座しないで下さい……。分かりましたから」
あ、危なかった。今、こいつに借金のことをバラされたらおしまいだ。
土下座なんて、タダなんだからいくらでもしてやるさ。
――そう、愛のために!
「よし! どんどん掘っていこう!」
土工用のつるはしを片手に僕はある鉱山に来ている。
そう、この鉱山の一角を僕は買い取った。
どうやら、その昔。この鉱山では沢山の宝石が取れたそうだ。
特にエメラルドは末端価格でも5000万エルドは下らない貴重なものを多く算出していて、一時期は世界一の宝石鉱山だと名を馳せていたとのこと。
僕はここが特別な格安価格で売られていることを知っていた。
だから、ある程度の軍資金が貯まったらここで宝石を掘り当てて、一攫千金を狙うつもりだったのである。
「どう見ても掘り尽くされた後なんですけど……」
「そんなのやってみなきゃ、分からないだろ? アネット、知っているか? 夢というのは諦めたら終わりなんだぜ……!」
「格好つけていますけど、“夢”って言っちゃってますからね」
僕は一心不乱になって買い取った鉱山の一角を掘りまくった。
そう、「一念岩をも通す」という言葉が遥か東の大国にはある。
僕には誰にも負けない愛の大きさがあるんだ。
掘る! 掘って、掘って、掘りまくる!
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
そして、一週間が過ぎた――。
「また徹夜していたんですか? 食料と水です。ここに置いておきますよ」
「はぁ、はぁ……」
お、おかしいな。一週間穴を掘り続けたら筋肉もついたし、慣れると思ったのに――つるはしが重い……。
「不眠不休で掘り続けても、無いものは見つかりませんよ」
「ぜぇ、ぜぇ……、諦められないんだよ! あの日、誓った愛は裏切れない! はぁ、はぁ……!」
「はぁ……、本当に、世界一のバカ様ですね……」
僕は絶対に諦めない!
掘り続ければいつか――!
「ぬわああああああっ!」
そのとき!
いつもとは違う感触が、僕の腕は感じ取った!
やっと来たか! 見つかったか!
「うわっぷ! つ、冷たい!」
プシューとものすごい勢いで噴射される水。
……どうやら、湧き水らしい。
はぁ~、また別のところを掘らないと……。
「わ、若様……、この銀色に輝いている水って。レアポーションの原材料になっている“輝水”じゃないですか? 確か、末端価格が1リットル、1万エルドくらいで取引されていたような……」
「ぽえっ!?」
……あはは、ほら、言っただろう?
――最後に愛は勝つって!
なーはっはっはっはっは! 大金持ちだ!
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