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第三章:【リメルトリア共和国】の危機編

第57話:フィアナに死ぬほど愛されてしまう話

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 【ガガール基地】潜入初日、私はフィアナ兵士長を襲った兵士を捕まえた。
 その手腕を買われて私はフィアナ兵士長の護衛の仕事をいただくハメになってしまった。
 
「ちょっちょっと、フィアナ兵士長。ふっ服を着てください……」
 私は状況の理解が追いつかなくなっていた。
 どうして、こうなった?

「フッ、貴様のアプローチに気づかぬ私ではないわ。ルシアール、こんな気持ちになったのは初めてだ……/// 姉を裏切り、これから大仕事を成さねばならぬ不安のせいでもあるが……。貴様という男が、悔しいが愛しくて堪らないのだ……。経験豊富な貴様に頼む……。わっ私を……、慰めてほしい///」
 フィアナはいつの間にか、生まれたままの姿で仁王立ちしていた。
 なっ慰めてって、んなことできるか!
 どっどうしよう。経験なんてないし、あってもダメだろ……。
 とっとにかく、そういうつもりでは無いということをやんわりと伝えねば……。

「かっ風邪を引いては大変です。わっ、私は帰りますので……」
 私はフィアナから背を向けて、ドアに近付こうとした。
 
 いやっ、下手くそか私はっ!
 風邪って何言ってんだってレベルだし、まずいなぁ……怒らせたかな?

――ギュッ

 私はフィアナに後ろから抱きしめられる……。なんでだよっ!
 くっ、ラミアだったら肘鉄を食らわせてやるところなのに!

「じっ焦らすのが貴様の流儀か? 仕方ない奴だな……、そういうことなら私も貴様の好みに付き合ってやる……はぁはぁ……」
 何を勘違いしたのか、フィアナはより興奮してしまった。
 ちょっ、ちょっとどこを触っている……、きっ気持ち悪くなってきた……。
 私は反射的にフィアナを押しのけてしまった。

――ドンッ

 フィアナはよろけて、ベッドに倒れて頭を打ってしまう。
 しっしまった、大丈夫か?
 私は急いでフィアナに駆け寄った。

「私を簡単にベッドに連れて行くとは、流石に百戦錬磨の男は違うな/// そろそろ、貴様のも見せてくれ……」
 フィアナは盛大に勘違いをして、私の股間に手を伸ばしてきた。
 くっ、これだけは嫌だったが……。止む得ないか……。

「むっ、貴様のは……、その……、大きいのだな///」
 フィアナは私の股間を触りながら呟いた……。
 知らんがな。そろそろ頃合いか……。

――ニョロニョロッ

 私のズボンからアオダイショウが顔を覗かせた。

ルシア
【蛇使いスキル発動】

 アオダイショウ召喚

「………………」

「…………」

「……」

「」

――パタッ

 フィアナは気を失ってしまった。
 あらあら、気絶してしまったか。ムードが台無しになるくらいしか予想していなかったがラッキーだな。
 私はフィアナに布団をかけて、急いで部屋を出た。
 
 やれやれ、潜入初日からえらい目にあってしまったな。
 
 結局、帰りがけにコントロールルームの入口を覗いたが、何も有効な手を思い付かなかった。夜も警備が厳重か……。
 それにしても、疲労感が凄い……。さっきは【ベルゼブブ大公】と戦ったときよりも焦ったな。
 まさか、フィアナがあんな風になるなんて……、男装すると本当に録なことがないのだが……。
 
「おー、新入りぃ。今帰りかぁ?」
 エレベーターを待っていると、メルヴィンに話しかけられた。

「メルヴィンさん! お疲れさまです。そうですよ、結局今日から仕事が始まっちゃって……。メルヴィンさんも仕事終わりですか?」
 私はメルヴィンに返事をした。
 
「いんや、オラはこれから夜勤なんだー。コントロールルームでよぉ」
 メルヴィンはこれから仕事に行くところらしい。
 ほぉ、夜勤か……。しかもコントロールルームで……。

「へぇ、メルヴィンさんはいつも夜勤なんですか?」
 私はさりげなく話を聞いてみる。

「いんや、明後日までだねぇ。本当、生活リズム狂っちまうでよー。まぁ、給金は高ぇんだどもな」
 メルヴィンは明後日まで夜勤……。
 これはかなり大事な情報かも。
 覚えておくとしよう。

「大変ですね。それじゃ、私はこれで失礼します。お仕事頑張ってください」
 私はエレベーターがとっくに一階に到着していたことに気付いて慌てて乗り込んだ。

「おおう、おやすみなぁ」
 メルヴィンはニッコリ笑って手を振った。

 かくして、私は部屋に戻り眠りに着いた。
 しかし、明日フィアナと顔を合わすのが嫌すぎる……。

 
――【ガガール基地】、潜入2日目、【兵士長室】――

 私は勤務場所である、兵士長室に訪れた。
 はぁ、フィアナにどんな顔をして会えばいいのだろう?

――ウィィィン

「おっおはようございます。フィアナ兵士長。きっ昨日はよく眠れましたか?」
 私は恐る恐る、フィアナに挨拶をした。
 バカか私は、なんで余計なことを訊いてしまったのか?

「るっルシアールか/// おはよう。きっ昨日はその……、すまなかったな。最中に寝てしまうとは……、私も相当疲れているな……。しかし、かなり乱れてしまったのか、全く記憶がないのだ……。なにやら凄いものを見た記憶だけはあるのだが///」
 そこまで言うと、フィアナは頬を真っ赤にして、私の下半身を見た。
 いや、それアオダイショウだから。私のここには何もないからね。

「そうですか、私は全く気にしてませんよ。しかし、しばらくああいったことは止めたほうが良いでしょう。私と貴女は部下と上司です。そのような関係だと、他の兵士に知れると士気に関わりますから……」
 私は言葉を選びながら提案した。
 あんな風に迫られるのは御免こうむる。正直、ラミアやグレイスが可愛く見えるレベルだった。

「そう……だな……。貴様の言うとおりだ。おおっぴらに付き合うのもよくないな。上司と部下のヒミツの関係かぁ///」
 フィアナはボーッとした表情をしていた。
 どうして、そういう発想になるんだ。
 ていうか、なんでこんな奴に出し抜かれたんだ、フィリアとメフィストは!

「フィアナ兵士長、今日のご予定は?」
 私は埒が明かないので、話題を変えた。
 
「はっ、ボーッとしてすまない。午前は武器工場の視察と【魔界貴族】の残党の狩り計画のための会議だ。午後はほとんどデスクワークだな」
 フィアナはキリッとした表情でそう返事をした。
 うーん、こうやって見ると頭が良さそうには見えるのだが……。

――【リメルトリア共和国】、武器工場――

 武器工場は見たこともない武器が大量に生産されていた。銅装飾銃(ブロンズガン)はもとより、高性能の爆弾や大砲のような形状の大型の武器も作られていた。
 そして、気になったのは剣の柄のような形をした筒である。

「あれは、なんですか?」
 私はフィアナに質問した。

「ああ、あれはレーザーブレイドだ。私も持っているぞ。ほらっ」
 フィアナは筒を握って私に見せた。

――ブゥゥゥゥン

 筒から光の刃が出てきた。うわっ、びっくりした。
 光の刃は持ち主の意思をどおりに伸びたり縮んだりするらしく、剣の弱点である短い射程を克服している。
 便利な武器を開発するもんだ、感心するな。

「こっコレを貴様にやろう。私からの就任祝いだ///」
 フィアナはモジモジしながらそう言った。
 えっ、私にくれるのか。拒否するのも変だし、貰っておくか。

【レーザーブレイド】を手に入れた。

「ありがとうございます。大切にしますね」
 私はフィアナにお礼を言った。

「そんな、私だと思って大切にするだなんて///」
 フィアナは恍惚とした表情でそう言った。
 言ってない、言ってない……。

 しかし、武器工場の視察って何が楽しくてやっているんだ?
 ん、あの顔には見覚えがあるぞ……。
 黒い翼は久しぶりに見たけど……。

「るっルシアール様ぁ、やっと会えましたわぁ」
「らっラミア先輩、駄目ですよ……」
 ラミアとグレイスが武器工場で働いていた。

 

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