上 下
59 / 87
第三章:【リメルトリア共和国】の危機編

第56話:リメルトリア兵として頑張って生活してみる話

しおりを挟む
 【ガガール基地】の兵士として潜入に成功した私は、裏切り者の1人【フィアナ=ノーティス】兵士長に挨拶をした。
 その後、ホビット族の兵士メルヴィンの案内で自分の部屋に入った。

「ふぅー、寝泊まりする所が個室なのは助かるなー」
 私は部屋のベッドに横になりながら独り言を呟いた。
 部屋は6畳ほどの広さで、ベッドと机が置かれていた。
 そしてフィリアから聞かされていたが、これがユニットバスというものか。
 トイレと風呂が一緒になっている。
 
 すごいな、こんなに簡単にお湯が出るんだ、へぇー便利だなぁ。トイレもスイッチ一つで水が流れるとは……。それに腰をかけて用を足せるのは楽でいいな。
 フィリアはこんなに凄い発明までしているのになんで裏切られたんだ?

 私は再びベッドに寝転がった。
 誤解のないように言いたいが、決してサボっている訳ではない。私は何か考え事をするときは横になったほうが頭が回るのだ。

 中央コントロールルームは警備が二人居て、しかも中に入る者はIDカードをかざした上にパスワードを入力する必要があると聞いた。
 当然、中も無人であるはずが無く監視の目が光っているだろう。
 そんな状況で、新人の私が妙な行動を取れば必ず怪しまれるに違いない。
 どうすればいいのか……。

「もう一度、近くに行ってみるか。なんかヒントになるようなものがあるかもしれない」
 私は情報を集めるために、基地の中を探索することにした。

――ウィィィン

 おおっ、エレベーターとやらに一人で乗るのは中々緊張するなぁ。
 まぁ、私はこの国に来て日が浅いということになっているし、多少ぎこちないのは大目に見てもらえるだろう。

――ウィィィン

 一階に着いた。さてさて、中央コントロールルームはこっちだったな。
 私はコントロールルームに向かって歩いた。近づくとさっき見た顔が見張りの兵士と話していた。

 げっ、あそこにいるのはフィアナ兵士長か……。まずいな、とりあえずコントロールルームはスルーするとしよう。
 私はこっそりとフィアナの横を通り過ぎようとした。

「フィアナ兵士長! よくもフィリア様を! 覚悟せよ!」
 赤髪の男性の天使が銅装飾銃(ブロンズガン)を構えて、フィアナを狙っていた。
 あー、フィリアを慕っている兵士が反抗しているのか。しかし、その距離はフィアナの剣撃の範囲内だ。
 フィアナの殺気が凄い……。恐らく、彼は殺されるな……。

ルシア→赤髪の天使
【侍スキル発動】
 
 居合い峰打ち

――ブワァッ

 私の咄嗟に放った、居合いの一撃は、赤髪の天使の背中を捉えて吹き飛ばした。

「大人しくしろ! 殺されるぞ……」
 私はロープで赤髪の天使をぐるぐる巻きにした。
 
「黙れっ、兵士長の犬が! 貴様らには恩という概念がないのか!」
 赤髪の天使は必死の形相で抵抗した。

「賊を牢に入れておけ! ルシアールはここに残れ」
 フィアナは近くにいた兵士に、赤髪の天使を牢屋に連れていくように命じた。
 とりあえず、殺されずには済んだが悪いことをしたな。
 作戦が終了するまで待っていてくれ。

「着任早々、お手柄だったなルシアール……/// そのう、褒めてつかわすぞ///」
 フィアナは私から目を逸らしてモジモジしながら話していた。

「いえ、フィアナ兵士長の身の危険を払うのは当然のことですから」
 私は心にも無いことを言った。

「わっ私のため……/// 守ってもらうなんて初めて……/// イカンイカン……、これは奴の術だ……」
 フィアナは顔を真っ赤にして、頭をブンブン振った。
 この人も変な人だなぁ。もう行っても良いのかな?

「あのう、用事が無いようでしたら失礼しますが……」
 私は遠慮がちにそう言った。
 
「よっ用事か……。用事がなきゃ駄目だよな。そうだな……」
 フィアナは少し困った顔をした。
 そりゃあ、そうでしょ。

「じゃ、じゃあ私は……」
「まっ待て!」
 私が歩き出そうとした瞬間、フィアナは大声で呼び止めた。

「るっルシアール=ダルメシアン。貴様を私の護衛に任命する/// だっだから、私の側に居ろ……。いいな///」
 フィアナは私に顔を近づけて命令した。

「へっ、あっはい」
 私は反射的に返事をした。
 えっ、この人の護衛ってことは四六時中一緒に居るってこと?
 
「ふぇっ、四六時中共にいるなんて/// ふっ不純だ……/// しかし……、ダメだ……目が合わせられない/// とっとにかく、護衛として働いてもらうぞ! わっ私以外の女に色目を使うことは禁止だからな!」
 フィアナは半ば強引に私を護衛にした。
 困ったぞ、これでは余計にコントロールルームに近づけないではないか……。

 私は明日から仕事開始の予定だったが、フィアナの護衛になったので今日から彼女の傍らに居なくてはならなくなった。
 そういうわけで、私は兵士長室の中で立っているのだ……。

「なあ、ルシアールよ。貴様は女性経験が豊富だと書いてあったが、何人くらいと、そのう、深い仲に……、なったことがあるのだ?」
 フィアナは相変わらずモジモジしながら、私に他愛のない話をしてきた。
 そんなの0に決まっているが、それも変な感じになりそうだし……。
 5人くらいとでも、答えておくか……、んっ鼻がムズムズするな……。

「ごっふぇゃくしょんっにんくらいです……」
 しまった、くしゃみをしながら答えてしまった。

「なんだと? 500人だって? くっそれほどの経験値だから、私をこのように手玉に……///」
 フィアナは盛大に勘違いをしている。
 500人ってそんなわけあるかよ!

「しっしかし、貴様の先程の動き良かったぞ。よく訓練されているな。私も最近は激務でな……。反応が少し遅れていたのだ」
 フィアナは慌てて話題を変えた。
 ふーん、クーデター起こせばそりゃあ忙しくなるだろう。
 しかし、彼女の信頼を得ることはこの先、重要になるかもしれない。少しだけサービスしてやるか。

「フィアナ兵士長、お疲れでしたら私がマッサージをして差し上げましょうか?」
 私はフィアナに媚を売ることにした。

「マッサージ? いっいかがわしいことではなかろうな///」
 フィアナはビクッとして、私の顔を見た。
 そんな訳ないだろ、何考えてんだ……、この人は……。

「そっそうか、では頼もうかな。優しく頼むぞ///」
 フィアナは頬を赤らめて、マッサージを依頼した。

ルシア→フィアナ
【マッサージ師スキル発動】

 癒やしの乱舞

――モミモミ、モミモミ

「くっ/// くはぁん/// きっ気持ちいい……/// きっ貴様、なかなかやるじゃあないか……」
 フィアナは顔を綻ばせて、そう言った。
 変な声出さないでもらえるかな……。

 その後、【吟遊詩人スキル】の癒やしの歌を歌ってみたり、【話術師スキル】の楽しい小話をしてみたりすると意外と好評で、フィアナは大層喜んでくれた。
 いやぁ、芸は身を助けるとはよく言ったものだ。

 そして夜になり、私はフィアナの部屋まで共に行き、護衛の任務は終了と思われた。
 
――ウィィィン

 フィアナの部屋のドアが開いた。

「それでは、私は失礼します。おやすみなさい」
 私はどっと疲れていた。戻りがけにコントロールルームの様子でも見ておくか。

「まっ待て……、ルシアール。貴様と共に居た数時間……。そのっ……、とても楽しかったぞ/// ちょっと上がっていけ……」
 フィアナは私を部屋に誘った。
 はぁ、まだ何かあるのか。結構、頑張ったんだが……。

――ガチャ

 ガチャって、鍵が閉まったのか?

――ファサッ

 ファサッって……。フィアナ兵士長?
 ふっ服が……、なっなんで服を脱いでいるのですか?
 突然、フィアナ兵士長は私の目の前で真っ白い肌を露出してきた。

「るっルシアール///」

 潜入初日、私は予想もつかない大ピンチに見舞われた……。
 
「どうしてこうなった?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

持ち主を呪い殺す妖刀と一緒に追放されたけど、何故か使いこなして最強になってしまった件

玖遠紅音
ファンタジー
 王国の大貴族であり、魔術の名家であるジーヴェスト家の末っ子であるクロム・ジーヴェストは、生まれつき魔力を全く持たずに生まれてしまった。  それ故に幼いころから冷遇され、ほぼいないものとして扱われ続ける苦しい日々を送っていた。  そんなある日、 「小僧、なかなかいい才能を秘めておるな」    偶然にもクロムは亡霊の剣士に出会い、そして弟子入りすることになる。  それを契機にクロムの剣士としての才能が目覚め、見る見るうちに腕を上げていった。  しかしこの世界は剣士すらも魔術の才が求められる世界。  故にいつまでたってもクロムはジーヴェスト家の恥扱いが変わることはなかった。  そしてついに―― 「クロム。貴様をこの家に置いておくわけにはいかなくなった。今すぐ出て行ってもらおう」  魔術師として最高の適性をもって生まれた優秀な兄とこの国の王女が婚約を結ぶことになり、王族にクロムの存在がバレることを恐れた父によって家を追い出されてしまった。  しかも持ち主を呪い殺すと恐れられている妖刀を持たされて……  だが…… 「……あれ、生きてる?」  何故か妖刀はクロムを呪い殺せず、しかも妖刀の力を引き出して今まで斬ることが出来なかったモノを斬る力を得るに至った。  そして始まる、クロムの逆転劇。妖刀の力があれば、もう誰にも負けない。  魔術師になれなかった少年が、最強剣士として成り上がる物語が今、幕を開ける。

ギルド最弱と呼ばれているけれど、実は数年前、大厄災を起こした最強の能力者でした。最高のヒロインと一緒に隠していたチートの力を使って無双します

シア07
ファンタジー
主人公、レンは冒険者である。 それも討伐系のクエストをしたことのないちょっと変わった冒険者。 周りから腰抜け、雑魚と揶揄され、石を投げられる毎日。 そんなある日、いつも通りダンジョンに向かうと少女、リンがモンスターに襲われているのを発見する。 それを助けると次の日、家の前にリンの姿が。 レンの家を突き止めて、やって来たらしい。 根気よく迫られ、仕方なく少女と共にクエストにいくことにしたレン。 しかし、今度はダンジョン内でボスに出会ってしまい、少女がまたしても襲われる。 レンはそれを必死に助けようとするが、どうやら助けれそうになく…… 「もう……やるしか……ないのか」 ずっとひた隠していた能力を使ったのだった。 これは最強の能力を持ちながら、最弱と呼ばれた少年と天真爛漫な少女が巡る壮大な物語だ。 ※カクヨム、なろうでも連載してます

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...