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最終話 あたしとトレンチコートと探偵

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「りょっ涼子くん? これは一体どういうことなんだい?」
 珍しく立花は動揺していた。

「いやー、夏休みになったので宿題終わらせて来ちゃいました」
 あたしは笑って答えた。

「来ちゃいましたってねぇ、そんなに簡単に異世界を行ったり来たり出来るものかね。ど○でもドアじゃないんだから」
 立花は呆れた顔をした。

「あはは、あれから色々試してみて出来そうかなあって思ってみて。成功して良かったです」
 あたしは、戻ってからも色々実験していた。

「それは凄い。ではなくてね、今度は何の用事なのかい?」
 立花はあたしに尋ねた。

「それなんですけど、あたし達もあの後色々あってまだ依頼料を払ってないじゃないですか」
 あたしは立花に話した。

「なんだそんなことかい? 君を色々と危険な目に合わせてしまったからねぇ。大丈夫。依頼料は無料にするよ」
 立花はあたしにそう言い放った。

「そんな訳にはいかないですよ。じゃあ、これからあたしを助手として雇ってもらえませんか?助けて貰った分をお返ししたいんです」
 あたしは、立花の目を見て話した。

「助手かい? 涼子くんがねぇ。私は構わないが……、お父さんは反対したんじゃないかい?」
 立花は涼子に尋ねる。

「めっちゃ反対されました。転移呪文で失った寿命を元に戻したりして、許して貰うの大変でしたよー」
 あたしは、腕を組みながら苦労を語った。

「それなら良いんだけど。ねぇ」
 立花はニーナを見る。

「私は嬉しいですわ。かわいい後輩が出来るなんて最高ですわ」
 ニーナは目をキラキラさせている。

「やれやれ仕方ないねぇ、それじゃあしばらくの間、君を助手にしよう」
 立花はあたしに頭を下げた。

「先生、よろしくお願いします」
 あたしは、ニッコリ笑った。

(あれ? 何か大切なことを聞き逃した気がしますの)
 ニーナが結婚できるのは、もう少し先の話になる。

――3年後――


「先生、依頼人の方もう来てますよ。急いでください」
 ソファに2人の少年と少女が座っている。

「もう、帽子なんてどれでもいいですよ。早くしてください」

――ガチャ

ドアが開いた。

「待たせて、ごめんなさい。このコートに合う帽子がなかなか見つからなかったものですから……」
 トレンチコートを着たあたしは頭を下げて謝罪する。

「あっすみません。あたしは、こういう者です」
 あたしは、出来たての名刺を2人に渡す。

【探偵 雨宮 涼子】

「まだまだ、探偵になりたてだけど、これから名探偵になる予定です。依頼なら何でも受付けますよ」
 あたしはニッコリ笑って話しかけた。

「あっ、あたしったら最初に聞かなきゃいけないこと忘れてた。あははは」
 あたしは、大事なことを忘れていた。

「コーヒーと紅茶どちらが好きですか? あたしはコーヒーですけど、全然紅茶でも淹れますよ」
 あたしは彼らに聞いてみた。

「コーヒーで」
「紅茶‥」
2人が同時に答える。

「コーヒー1つ、紅茶1つですねー」
 あたしは席を立って飲み物を準備する。

「どうぞ、お口に合えば嬉しいけど……」
 2人は飲み物に口をつけた。

「「美味しい……」」
 2人は同時にそう言って顔を見合わせた。

「それは良かったです。それでは、依頼の話に移りましょうか」
 あたしは、満足そうな顔をして話を進めた。

 外にはピカピカの【雨宮探偵事務所】と書かれた看板。ここは、あたしがかつて、名探偵と冒険をした世界。

 名探偵に憧れた私(あたし)は、うっかり異世界で探偵事務所を構えてしまった。

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