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第七話
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「あの、どうしました? 魔物を駆除することにお金がかかるから、賃料が値上げされると聞いたのですが……」
「……あんた誰だ? 賃料を上げるのは言いたくはないが、先代が借金を作ったからだ。こいつらから金が取れないなら、この辺の土地を売りに出すしか無いんだよ。ったく、無駄に領地だけ広くても金が無いんじゃあ、我が家も没落するしかないからな」
身なりが良いにも関わらず、無精髭を生やして目に隈があり疲れきった表情をしている男性――この方が獣人族の集落の土地の所有者みたいです。
伯爵にしては随分とやつれていますね。
借金で首が回らなくなっているとのことですが、どれくらいなのでしょう……。
「分かりました。それでは、領主さんの土地を私が買い取りましょう。いくらですか?」
「はぁ? はっはっは! 小娘が何を言うと思えば……。言っておくが、宮廷鑑定士に相場を調べさせたが全て合わせると1000億エルドは下らない。どこの馬の骨かも分からんヤツには、1500億エルドは貰わなきゃ売る気は無いが……。なんせ、このエーゼルシュタイン家の歴史ある領地だからな」
この大陸の共通通貨であるエルドは大陸全ての国で使用が可能なお金です。
1500億エルド……ですか。それで、この辺り一体の土地が買えるのなら丁度良いかもしれません。
「1500億エルドですね。これくらいでしょうか?」
「「――っ!?」」
時の収納庫を発動させて、アーヴァイン殿下に頂いた慰謝料の6割程をエーゼルシュタイン伯爵の前に出しました。
かなり驚いていますね……。大金が目の前に出てきたので当たり前かもしれませんが……。
「ば、ば、馬鹿な……。確かにこれだけあれば1500億エルドは下らないかもしれんが。こんな小娘が何でこんな大金を……」
「ちょっと、色々と事情がありまして……。これで、領主さんの土地を売って頂いてもよろしいですか?」
「そ、そりゃあ勿論願ってもないことだが。すぐに土地の権利書を用意する。くぅ~、1500億エルドもありゃあ、何代遊んで暮らせるか。土地の管理するのも面倒だったし、助かったぞ。お嬢ちゃん!」
お金と財宝を見せるとエーゼルシュタイン伯爵は手のひらを返したように上機嫌になりました。
1500億エルドで彼の所有する殆どの土地の所有者が私になったのです。
隣国でどうやって暮らそうかと思いましたが、領主になってみるのも悪くないかと思いまして、大金を払ってみました。
半分は獣人族の方々が不憫に見えたのもありますが……。
他種族に対する風当たりは冷たいことを私も知っていましたので、彼らが路頭に迷うことから助けられるのなら助けたいと思ったのです。
エーゼルシュタイン伯爵はあっさりと土地の権利を私に売り渡してくれました。
きちんとジルベータ王家に口を利いてくれて、王家の公認で私が伯爵が管理していた広大な土地の領主となったのです。
まぁ、広大といっても山と荒野が多くて魔物が巣食っていることから人間は殆ど住んでなく、僅かに獣人族たちが住んでいるだけだったのですが……。
「ほ、本当に賃料は要らないんですか?」
「はい。ですから、少しだけ手伝ってください。この領地を住み良い場所にするための作業を……」
せっかくですから、自分の領地を少しでも住み良い場所にしてみたい――。
そんな目標を作った私は、殿下から貰ったお金を惜しみなく使って領地改革に乗り出したのでした――。
「……あんた誰だ? 賃料を上げるのは言いたくはないが、先代が借金を作ったからだ。こいつらから金が取れないなら、この辺の土地を売りに出すしか無いんだよ。ったく、無駄に領地だけ広くても金が無いんじゃあ、我が家も没落するしかないからな」
身なりが良いにも関わらず、無精髭を生やして目に隈があり疲れきった表情をしている男性――この方が獣人族の集落の土地の所有者みたいです。
伯爵にしては随分とやつれていますね。
借金で首が回らなくなっているとのことですが、どれくらいなのでしょう……。
「分かりました。それでは、領主さんの土地を私が買い取りましょう。いくらですか?」
「はぁ? はっはっは! 小娘が何を言うと思えば……。言っておくが、宮廷鑑定士に相場を調べさせたが全て合わせると1000億エルドは下らない。どこの馬の骨かも分からんヤツには、1500億エルドは貰わなきゃ売る気は無いが……。なんせ、このエーゼルシュタイン家の歴史ある領地だからな」
この大陸の共通通貨であるエルドは大陸全ての国で使用が可能なお金です。
1500億エルド……ですか。それで、この辺り一体の土地が買えるのなら丁度良いかもしれません。
「1500億エルドですね。これくらいでしょうか?」
「「――っ!?」」
時の収納庫を発動させて、アーヴァイン殿下に頂いた慰謝料の6割程をエーゼルシュタイン伯爵の前に出しました。
かなり驚いていますね……。大金が目の前に出てきたので当たり前かもしれませんが……。
「ば、ば、馬鹿な……。確かにこれだけあれば1500億エルドは下らないかもしれんが。こんな小娘が何でこんな大金を……」
「ちょっと、色々と事情がありまして……。これで、領主さんの土地を売って頂いてもよろしいですか?」
「そ、そりゃあ勿論願ってもないことだが。すぐに土地の権利書を用意する。くぅ~、1500億エルドもありゃあ、何代遊んで暮らせるか。土地の管理するのも面倒だったし、助かったぞ。お嬢ちゃん!」
お金と財宝を見せるとエーゼルシュタイン伯爵は手のひらを返したように上機嫌になりました。
1500億エルドで彼の所有する殆どの土地の所有者が私になったのです。
隣国でどうやって暮らそうかと思いましたが、領主になってみるのも悪くないかと思いまして、大金を払ってみました。
半分は獣人族の方々が不憫に見えたのもありますが……。
他種族に対する風当たりは冷たいことを私も知っていましたので、彼らが路頭に迷うことから助けられるのなら助けたいと思ったのです。
エーゼルシュタイン伯爵はあっさりと土地の権利を私に売り渡してくれました。
きちんとジルベータ王家に口を利いてくれて、王家の公認で私が伯爵が管理していた広大な土地の領主となったのです。
まぁ、広大といっても山と荒野が多くて魔物が巣食っていることから人間は殆ど住んでなく、僅かに獣人族たちが住んでいるだけだったのですが……。
「ほ、本当に賃料は要らないんですか?」
「はい。ですから、少しだけ手伝ってください。この領地を住み良い場所にするための作業を……」
せっかくですから、自分の領地を少しでも住み良い場所にしてみたい――。
そんな目標を作った私は、殿下から貰ったお金を惜しみなく使って領地改革に乗り出したのでした――。
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