推しに似すぎてて無理!!

ぱるむ。

文字の大きさ
上 下
17 / 35

17 ご褒美

しおりを挟む
「…おお!スゲェ、やっと解けたじゃん」

悠はようやく自分の力で問題を解くことが出来た。

「で、できた…!けど、ヤバい頭パンク寸前…」

悠は教えてくれる流華の距離に気を取られてしまい、流華の説明が全く説明が耳に入って来ず、問題を解いてみても、ずっと同じ計算ミスを繰り返していた。

(数学もだし流華のことも…色々考えすぎてパンクする…)

「ホントお前数学苦手な笑 まあでも頑張ったじゃん」

流華は悠の顔を見て微笑んだ。

「うん、ありがとう…」

 「まあここ応用問題だったしな…よく頑張ったよ」

(好きな人に褒められた時ってこんな幸せなんだな…頑張ってよかったぁ…)

「あ、じゃあちょっとまってて」

流華はそう言うと、立ちあがり部屋から出て行ってしまった。

(…?どこ行ったんだろ)

数分後

「悠~!」

バタンという扉の音と同時に流華が部屋に入ってきた。

流華は皿に乗ったショートケーキを二つ持ってきた。

「うおっ…!?」

「俺ら勉強頑張ったっしょ?冷蔵庫にケーキあるの思い出してさ、一緒に食おうぜ」

「いいの…?」

「あたりめーじゃん!お前も数学頑張ったし俺も英語頑張ったから笑」

悠は流華にフォークを渡される。

(ま、また隣で…本当に慣れないから定位置に移動したい…んだけど、これも何かのチャンスか…)

悠と流華は二人でショートケーキを食べ始めた。

「ん!うま」

流華は悠の横で幸せそうにショートケーキを頬張っている。

(美味しそうに食べるな、流華は…)

美味しそうに食べる流華が可愛くて堪らなくなり、ついケーキを食べるのを忘れてしまう。

「ん、ほら」

流華に呼ばれたため横をむくと、フォークを持ち待機している流華と目が合う。

「…ん!?」

「口、開けて」

そう言われた悠は反射的に口を開いた。

口を開いた瞬間、 流華がくれた甘さが悠の口の中で広がり溶けていく。

(待って今僕、あーんされた…!?!?)

「ん、どお?美味し?」

「うん。美味しい…」

「俺からのご褒美」

流華は照れくさそうに言い、再び自分のケーキを食べ始める。

(ほんとこの人は…っっ!!し、心臓落ちそう…っ)

いきなりの出来事に理解がまだ追いつかない。

さすが無自覚男、サラッとこのような事をしてくるせいで、とても気が狂う。

(…でもあっちがご褒美…くれたなら僕もあげないとおかしいよね…)

悠は自分のショートケーキを一口切り分けた。

「流華」

「ん?」

「はい…あーん、して」

「んっ!?」

流華はいつもより積極的な悠の姿を見て驚いた表情を見せたが、後に照れた様子で口を開いた。

(夢…かもしれない、僕、流華にあーん、した…)

流華はショートケーキを頬張った。

「…美味しい」

「美味しいよね。じゃあ…これは僕からのご褒美…ってことで」

「や、やめろよっ…」

流華は、悠がいる方向とは逆の方へ顔を向けた。

「…照れた?」

「て、照れてねえよ…!!」

流華は今どのような顔をしているんだろう。

表情が見えないからこそ、心の中で想像するのが少し楽しい。

(自分は恥ずかしいことしても平気なくせに、自分がされると照れるんだから…ほんと、こういうところも好き)

悠はそんな流華も愛おしく思える。

「…お前がくれた方が美味しかったよ」

「…え?」

「だから!お前が…あーんしてくれた方が美味しかった、って!」

流華はそっぽ向いたままぶっきらぼうにそう言った。

「…僕も流華が食べさせてくれたケーキの方が美味しかったよ」

「はあ…ほんっと、お前といると駄目だな、俺」

流華はようやくここで悠の方を見た。

「…クリームついてる」

流華は悠の唇の横に僅かについたクリームに気付いた。

「…取って…?」

「な…!!」

「ご、ごめん自分で取れって感じだよね…!!」

悠は自分の言ったことを掻き消すようにそう言いクリームを自分で拭こうとした。

流華は、そんな悠を止めるかのように

「…いいよ、取るから」

と言い、悠の唇の横のクリームを人差し指で取る。

「あ、ありがと…」

「…お前、何か人格変わった…?」

「か、変わってない!!失礼な!!」

(流華を振り向かせたくてこっちは必死なんだから…!ほんっと、鈍感…)

お互いの頬の色がショートケーキの苺のように紅く色付いているのが分かる。

(世界一幸せなショートケーキだったな、ドキドキ止まんない…)

そうして悠は夢見心地なまま、ショートケーキを食べ終えたのだった。
しおりを挟む

処理中です...