怪奇ファイル

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真夜中の間違い電話

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「何これ!こんな部屋が月25000円で借りられるの」爽子は面白いことがあったとき
上擦る癖があって滑舌が悪くなりラ行の発音が変に高くなる。いわくつきの部屋だからさ。「何それ」「訳ありってことだよ」「何かあったの?」「ああ。なんでも三角関係のもつれから元カノが元カレを殺しちまったんだと」「ふうん何らか大変ねいいのこんなとこに決めたりして」『お前だってさっきまでいい部屋だって言ってたじゃんか」「だって間取りは広いし日当たりはいいし。駅からも近いし近所にコンビニもあるから買い物も便利だしそれにこの家賃でしょ。』私が褒めたの間違ってる?」「いいや何にも言ってないだろ、そんなこと」「ねえ窓を開けましょう。何か血の匂いがするぅような気がして」「気のせいだよ臆病だなおまいはよ」「いいよ、俺が開けるよ」「何さ銀二何独り言言ってんの」窓際に人影が立ちいつまで経っても窓が開かないから爽子が手間取っているのだと思っていた。その爽子の物言いが不自然なのでよく見ると爽子は窓の方に向いてもいない。しかし程なく風が吹き込んできた。
いわくつきの物件なんてむしろ出会えてラッキーくらいに思っていた。オカルトが好きで幽霊の話題などに耐性ができていた俺にとって格安の家賃で借りられて退屈も凌げるとあっちゃ極上の物件とさえ思っていたあれを見るまでは。
それは日付が変わって待望の日曜日が終わった頃のことだった。ルルルルルル……「っ誰だよこんな時間に明日が月曜で憂鬱なこともあり俺は余計にブルーになった。たかが深夜の間違い電話適当にやり過ごして寝床に入れば羊も数えない内に高いびきのはずだ。弾みを付けて寝転んだベッドに体を沈ませてもじゃもじゃとした毛むくじゃらの羊を思い浮かべてその日は眠りについた
ルルルルルルルルルルルル「ったくまたかよ」そう、まただ。また先週と同じように日曜日の日付が変わって程なくして電話が鳴り出すのだ。同じやつかも知れない。今度は怒鳴りつけてやろう。そう思って受話器を取ろうとしたとき俺は焦った。なぜなら電話のベルなど鳴ろうはずがないと気付いたのだ。先週の間違い電話に懲りて俺はもしまた掛かって来た時に備えて晩飯を食べた後電話機の電源コードを抜いておいたのだから。では、あの電子音のベルは一体どういう仕組みで音をを出しているのだろう。ともかく受話器だ。「っもしもしアナタねえ今何時だと思っているんですかあ!「…………」「……ピーという音の後にお名前とご用件をお話になって下さい」「る、留守電になってる。……ピーおかけになった電話番号は現在使われておりません」なぜ留守電がこんなメッセージを再生するんだ。ち、ちょっと健二、ふざけないでよいるんでしょそこに。いいわ、携帯に掛けるから」それから数秒の後窓際で風もないのに揺れるカーテンのようなものの丁度ポケットみたいな形をした撓みにLEDのランプが光ったかと思うとその周辺に微量の振動が起きて揺れる。それはカーテンではなかったなぜなら袖状のものがそのランプを灯した物を掴んで話し始めたからだ。「何だ。何の用だまだ刺し足りないのか」
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