※ただし童貞を失ったら死ぬ

空兎

文字の大きさ
上 下
14 / 14

べティアとアイリーン

しおりを挟む

街に着いたのでまっすぐギルドへ向かう。まずは手持ちの兎を貢献ルピとお金に替えてもらいたいので熊耳のお姉さんを探しましょう。

ギルドに入るとそこそこ混んでいるように思えた。夕方は混み時なんですかね。

「ヒナタ、まずは査定カウンターでその荷物を引き取ってもらおう」
「あ、そういう仕組みなのね。了解」

狩った獲物は受付に持っていくのではなく引き取ってくれるところがあるようだ。そりゃ書類書くカウンターに血生臭いもの置くのは嫌ですよね。

査定カウンターにいって錬鍛兎バラサニー等を渡す。受付の人は数人がかりで中を見るとサラサラと何か紙を書いて俺達に渡した。

錬鍛兎バラサニー1体と丸兎29体ですわん。素晴らしい成果ですわん。お支払いの方は受付カウンターでお願いしますわん」

垂れ耳のお兄さんが渡してくれた紙は俺には読めないけどイージスいわく『モンスターの名前と数が書かれてる』とのこと。取り敢えずこれを受付に持っていけば貢献ルピとお金になるらしい。

「じゃあ俺が受付カウンター並んでくるよ」
「ああ、頼んだ」
「ん。まってる」

受付の熊耳のお姉さんのカウンターに並んで(1番混んでいたけどやはり美人のお姉さんがいい)さっきもらった紙を渡す。

「すいません、これお願いします」
「ギルドカードの提示もお願いします、くま」
「あ、はい」
「ヒナタ様は今回錬鍛兎バラサニーを倒されたのですか?素晴らしい貢献です、くま。では早速お手続きさせていただきます、くま」

そういうと熊耳のお姉さんはジャラリと大人する袋とくすんだ青色のカードを取り出した。あれ?ギルドカード変わった?

「報奨金の銀貨1枚大銅貨1枚中銅貨4枚です、くま。ヒナタ様は現在のランクより3つ上のランクのモンスターを倒されましたのでランクを2つ上げさせてDランクのギルドカードをお渡しします、くま」
「え?まじ?」

なんとランクが上がるらしい。自分より上のランクのモンスターを倒すと一気にランクが上がるんだね。3つ上ってことは錬鍛兎バラサニーはCランクのモンスターか。どおりで強いわけだよ。

何にしてもこれで俺もDランク、ダンジョンの資格を得るまであとひとつだ。

「じゃああとひとつランクを上げればダンジョンに行けるんですね!」
「ヒナタ様は本気でダンジョンに行きたいんですか?くま」

熊耳のお姉さんが驚いた顔でそういう。本気も本気、ガチで行きたいですよ?だってダンジョン攻略したら魔王を倒した勇者様的な扱いになるんでしょ?ロマンしかないじゃん。絶対に行きたい。

「本気で行きたいと思っているんですけど何か問題があるのですか?」
「この国のダンジョンである『狂喜の魅檻グラサージュ』は生還率が10%と言われてます、くま」

その言葉に浮ついていた心がピシャリと冷める。え?10%?つまり10人にひとりしか帰ってこれないってこと?それやばくない?

「戻ってきた者も取り憑かれたようにまたダンジョンへと向かってしまいます。実際の生還率は限りなく0に近いでしょう。
「え、じゃあなんで皆ダンジョンに行くの?」

ダンジョンってめちゃくちゃ危ない所じゃん。それなのに行くのはなんで?

「国の依頼、腕試し、訳はたくさんありますが1番の理由は黒の結晶ブラッククリスタルの為でしょう、くま」
黒の結晶ブラッククリスタル?」

なにそれ?ダンジョンの中では綺麗な石が取れるってこと?

黒の結晶ブラッククリスタルはダンジョン内のモンスターを倒すと手に入る宝石で食べると格段に強くなれます」
「え、食べるの?」

それは予想外。クリスタルっていうくらいだから魔石的な物を想像していたのにまさか食べ物らしい。

「食べます、くま。食べるとギルドランクで1ランクほど強くなれると言われています、くま」
「え、すご。めっちゃ強くなるじゃん」
「ただし中毒性があり1度食べるとそれなしでは生きていられないほど依存します、くま。ギルドでは推奨しておりません」

熊耳のお姉さんが真剣な顔でいう。まあ確かに強くなる代わりに廃人になるんじゃ意味ないよね。黒の結晶ブラッククリスタルは食べない方向でいこう。

「わかりました。じゃあ黒の結晶ブラッククリスタルはやめといてダンジョン攻略をがんばります」
「まだダンジョンに行きたいと思うのですか?」

熊耳のお姉さんが驚いた顔でそういう。え、行きたいよ?だってその方がかっこいいもん。ダンジョン攻略してSランク冒険者になりたいです。

「行きたいです。俺はダンジョン攻略してSランク冒険者になりたいので」
「ダンジョンはヒナタ様の考えられている場所よりずっと危険な場所です。それに、」

その瞬間、バンッ!と大きな音がして勢いよく扉が開かれる。そしてそこには背の低い金色の耳と尻尾を持つ女の子が立っていた。

「ベティア、いくぞ。ダンジョン攻略だ」

その子はズンズンとカウンターに向かって歩いてくる。何故だろう、それだけのことなのに道を開けなければならない気持ちになる。

小柄な身体なのにその全身からはなんとも言えない重量感が伝わってきた。

「アイリーン、前にも言ったけど私は行かない、くま」
「どうしてもダメか?お前達姉弟がついてきてくれれば非常に心強いのだが?」
「ごめんなさい、」

熊耳のお姉さんことベティアさんが頭を下げる。ここに来てやっと熊耳のお姉さんのお名前がわかりましたね。で、このアイリーンって呼ばれている美少女は誰?

「そうか、残念だ。お前が来てくれたら最高の盾を手にすることができたのにな」
「……」
「いい。意志なき者を連れて行っても意味はないからな。気にするな」
「……弟をよろしくね、アイリーン」
「うむ。だが助けぬぞ?彼奴も強者だ。自分でなんとかするだろうよ」

その時こちらを向いたアイリーンと目が合う。ドキリとした。意思の強そうな目だ。燃えるような赤い瞳がこちらに向いて心臓がバクバク脈打つ。たぶん獅子を目の前にした草食動物はこんな気分なのだろう。捕食者の前に立たされた気分だ。

やがてアイリーンが口を開く。

「お前、弱いな」

ドドドッ、ドッカーン!

心臓をバズーカで吹き飛ばされたような衝撃が走る。

ちょ、女の子に弱いとか言われるとめっちゃ傷付くんですけどッ!?てかなんで俺弱いって言われたの!?

「ええっ!?ちょ、何でですか?!」
「目に力がない。身体を鍛えている様子もない。意志も肉体も脆弱だ。どうみても弱者であろう」

アイリーンがあっさりそういう。いやまあそうだけど。超一般的男子高校生の陽向くんの生身のスペックだけ見られたら仕方ないけど、でも傷つく。ううっ、俺も変身したら凄くなるんだよ!

「アイリーン、ヒナタ様は錬鍛兎バラサニーを倒され先ほどDランクに昇格しました、くま。けして弱くはないです」
「何?錬鍛兎バラサニーを倒したのか?この男が?」

アイリーンがジロジロと俺を見る。あ、あんまり見ないで下さい。女の子に見られると照れちゃいますので。

まあ今はあんまりそんな気分にならないけど。どちらかというと蛇に睨まれたカエルの気分です。

「そうは見えないがな。まあどうでもいい話だ。
アイリーン、出立は一週間後だ。気が変わったらいつでもこい」
「何度言われても行かないですよ、くま」

そういうとアイリーンは去って行った。なんか嵐に巻き込まれたような気分だね。俺の精神HPに100のダメージです。

「気にしないで下さいね、ヒナタ様。アイリーンに比べたら弱いのは皆同じなのですから」
「え、あの子強いの?」

めっちゃオーラ出てたけどやっぱり強いの?

「アイリーンはこの世界最強の獣です。最強種と呼ばれるライガー族の中でも彼女が1番強いのです、くま」
「ええっ、世界最強なんですか?やばっ、めっちゃ凄い人やん」
「そのアイリーンが自身の選んだ7人の戦士と共にダンジョン攻略に向かいます。このアルキテア国史上最高の戦力と言われてますので『狂喜の魅檻グラサージュ』もきっと攻略されるでしょう、くま」

アイリーンは世界最強の獣と言われる人らしい。道理でめちゃめちゃオーラ出てるわけですよ。ダダ者じゃない感半端なかったもんな。

で、今さらりととんでもないこと言われたぞ?え、あのむちゃんこ強いという話のアイリーンがダンジョン攻略にいく?待って、それやばいんじゃね?先に攻略されるんじゃね?

「え、困ります。俺もダンジョン攻略したいのに!」
「ヒナタ様はDランクなのでダンジョンにはいけないです、くま。でもこれでよかったと思います。アイリーンならきっとダンジョンを攻略してくれるので、くま」

ベティアさんがにっこりと笑う。いやいや、俺は困る!ダンジョン攻略してSランク冒険者になって勇者になるという夢が崩れるじゃないですか!ダンジョン行きたい!

うん、こうなったら仕方ない。1週間以内にCランクに上がってダンジョンを攻略しよう!



しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

うめぼし
2020.01.29 うめぼし

…これは…DTにはきついものだな
まぁ見てる分には大丈夫だけど

空兎
2020.01.30 空兎

コメ感謝です!本人は地獄ですね。書くのは楽しい(°▽°)

解除

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。