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ハーレム
しおりを挟むガーナ草原に動く物はない。辺り一面には白いモフモフとした丸兎が落ちている。
「まさか、負けたのか。100戦しても負けることのなかった僕が、」
イージスが茫然とした表情で呟く。お前100戦も決闘しているのかよ。どこの決闘卿だ。
まあでも普通に戦ったら1000%イージスが勝つ勝負でしたからね。俺が童貞でなければ負けていましたよ。
「ん。ひなた、カゲとどいた」
「ありがとう、どろ子。というわけでこの勝負俺の勝ちでいい?」
影を見ていたどろ子が戻ってくる。制限時間も来たようだしこれで勝負はおしまいだ。
うん、で、この勝負は俺の勝ちだよね?ここで『いや、勝負は数えるまでわからない!』と言われるとちょい困る。満遍なく矢を射ったせいでどれがイージスの仕留めた丸兎でどれが俺の仕留めた丸兎かっていうのが全然わからん。次する時にはもっと勝敗のわかりやすい勝負をしようよ。いや、もう決闘するつもりはないんだけど。
「……ああ、勿論だ。仕留めた丸兎の数は明らかに君の方が多い。僕の負けだ。人間だと軽んじ驕ったのは僕の方だった」
静かな声でイージスがいう。ああ、よかった。素直に負けを認めてくれて。これで俺の右腕は助かりましたね。
「1つ謝罪をさせてくれ。君を軽んじる発言をした。本質を見えていなかったのは僕だった。すまなかった」
「いや、いいよ。そんなに気にしてないし」
「そうか。それでは代償を払わせてくれ」
穏やかなムードで終わりそうだったのにイージスが不穏なことを言い出した。代償って右腕がどうたらのことだよね?あの、まったくもっていらないんですけど。
「いやいや、さっきも言ったけど俺気にしてないから別に代償なんか払わなくていいよ。イージスの右腕が使えなくなっても俺なんにも嬉しくないし」
「君の右腕を賭されたのに僕が無傷というわけにはいかない。腕、足、目、耳好きなところを持っていくといい。それがどうしても気になるというならば奴隷にしてくれても構わない。エルフの奴隷は高く売れる」
イージスは中々引いてくれない。いやいや、部位欠損なんて誰も幸せになれないことはしたくないし奴隷にして売り飛ばすって人としてどうだよ。鬼畜外道やん。俺そこまで人でなしではないぞ。
まあこれでイージスが女の子なら少し考えることがあるけど。異世界行って奴隷のエルフの女の子に『ご主人様』って呼ばれるのはロマンです。うん、やっぱり女の子は正義だね。
「奴隷もいらないです。女の子ならともかく野郎には興味ないから」
「なんだ、女がよかったのか。それならそうしよう」
え?どういう意味なの?と尋ねようとした瞬間、俺の目の前に美少女が立っていた。気の強そうな緑の眼にさらりと伸びた細い手足、そして耳は三角に尖っている。エルフだ、エルフの美少女が俺の目の前にいた。
エルフの女の子!?え、まって、異世界行ったら会いたい女子No.1のエルフっ娘じゃないですか!わわわわっ!?どうしよう、サインとかもらったほうが良いのだろうか?
いやまて、落ち着け俺。普通に考えていきなり目の前にエルフっ娘が現れるとかおかしいだろう。落ち着いてよく考えるのだ。
ひっひっふーと呼吸してから冷静にみる。よく見るとこの子の顔見たことあるぞ?
背は少し低く身体も丸みを帯びている。だけれども間違がいない、このキリッとした顔はイージスの物だ。このエルフっ娘はイージスだ。ファッ!?
「ええええっ!??ちょ、なんでいきなり女の子になっているの!?お前男だったじゃん!なんでエルフっ娘になってるの!?」
「エルフは生殖行為を行うまでは性別を選べるのだ。自分が種を残したいと思った者と性別の違いで子を為せないことになれば困るだろ?だから相手が見つかるまでエルフは性別を決めないのだ」
淡々とした口調でとんでもないことを言うイージス。え、まって、ってことはこの世のエルフはすべてエルフっ娘になれるってこと?なにそれすごい。この世の春が来たんじゃね?全員女の子になれるとかエルフは神種族か。なお男にもなれるという意見は聞かなかったことにする。
「それで女になったわけだが何が望みだ?このまま売り飛ばしたいならそうするがいい」
「いやいやいや、女の子ならなおさらそんな酷いことするわけないじゃん!俺は人類史上最も女の子に優しいひなたくんです。イージスを売り飛ばしたりしませんよ!」
いい加減イージスに納得してもらわなければこの子どんどん過激なこと言ってくるぞ?もうサインくれて握手してくれたらいいからそうしよう。
「どんな望みを言おうが構わない。何でも言ってくれ」
その言葉に『じゃあ握手してよ』と言おうとした口がピタリと止まる。え、何でもでもいいの?本当にいいの?好きにしていいの?
この世界に来てからずっと願っていたことがある。いや、この世界にきてどころか1歳の時にハイハイし始めるより早く思っていたことが俺にはある。え?叶えちゃっていいの?俺の願い叶えちゃっていいの?
いやいや、ダメでしょ!人の弱みにつけ込むようなゲス行為はよくないですよ!こういうはちゃんと自分の意思で選んだことじゃないと……
「君の心底望むことを教えてくれ」
「ハーレムメンバーに入って欲しいです」
気付いたら口が滑っていた。一瞬の間、俺は顔を手で覆う。
うわあああっ!!!何言ってるんだよ俺!それは言ったらあかん奴だろ!いや実際に望んでいることではあるけどそれって面倒向かって女の子にいうことじゃないよ!やってしまった!
「たんま!今のなし!握手握手!やっぱ俺イージスと握手したい!」
「何故だ。それが君も本心なのだろ?」
イージスは平然とした顔でそういう。こやつ全然表情変わらないけど心の中では『うわっ、こいつ変態だ』とか思っているんじゃね?つらぴー。変態はやめて下さい、ただ女の子を愛する健全な男子なだけです。
「いや、まあそう聞かれるとそうじゃないと言いにくいと言いますか、とにかく別にハーレムメンバーに入って欲しいとかは言葉の綾なので気にしないで……」
「僕は構わない」
イージスが淡々とそういう。んん?構わないってどういう意味だっけ?貴方は変態ですっていう意味だったかな?
「ハーレムメンバーとやらに加われというのならばそうしよう。君は人間だがそれほど悪い奴でもないようだ。うまくやっていけるだろう」
イージスが手を差し出す。え?あ、握手?握手するの?取り敢えず手を握る。うわっ、柔らかい。
「僕はイージス・ヴィ・トリスタン。そういえばまだ名前を聞いてなかったな。何という名前だ?」
「え?あ、陽向。柊野陽向。ひなたが名前だよ」
「ヒナタか。では今日から僕は君のハーレムの一員というわけだ。よろしく頼む」
イージスが手に力を込める。うん、女の子の手に動揺している場合ではなかった。なんかいつの間にかイージスがハーレムメンバーになったよ。あわわ。
異世界生活2日目だがどうやら俺のハーレム計画は順調に進んでいるようだ。
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