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夜
しおりを挟む取り敢えずチンピラどもを倒すこともできたし元来た道を戻って大通りに出る。異世界生活初日からハードスケジュールでしたね。嫌ではないんだけどイベントごとはもう少し控えめだと嬉しいです。
歩いていたヤギっぽい顔の人に声をかけてここから1番近い宿の場所を聞く。聞く相手に女の子はやめておいた。まあ俺に女の子に道を聞く気兼ねがあるかはさておきやっぱりこんなことがあった後では流石にやめておこうという気分になる。これから巨乳美少女に話しかけられてもほいほい着いて行くのはやめようと思いました。
宿に着くと受付には人間のおっちゃんがいた。『部屋はひとつでいいな?』と聞かれて思わずバッとどろ子を見る。そそそそうか、宿を取るということはどろ子とひとつ屋根の下で眠るということか。え、なにそれやばい。女の子と一緒に寝るとか幼稚園のお昼寝学習以来じゃないですか?
どうしよう、俺寝相酷くない?イビキ大丈夫?そもそも横で女の子が寝ているとか俺の心臓は保つのだろうか?夜のうちにパンっと破裂して死んでもおかしくない気がするぞ。
う、うむ。非常に惜しいけどここは別々に部屋を取ろうかな。どろ子もきっと1人部屋の方が落ち着いてすごせるよね?
「いえ、あの、部屋は別々にしてもらっていいですか?」
「ふた部屋分料金をもらうが構わねえか?」
「ええ、大丈夫です」
「ん。ひなた」
宿のおっちゃんに部屋を頼んでいるとクイッとどろ子が俺の服の袖を引いて来た。なにその仕草かわいい。どろ子のワン動作で俺がキュン死する日もそう遠くないかもしれない。
「どうしたのどろ子?」
「ん。どろ子はひなたと一緒にいたい」
ズッキューンッッ!!ドドドドドドッッッ!!!
ギュッと袖を掴んだまま上目遣いでどろ子に心臓にマシンガンを打ち込まれたような衝撃を受ける。え、嘘だろ。俺女の子に一緒に言われたのか?もう今日が命日になってもいいわ。心臓爆発してもいいからどろ子と一緒にいます!
「こここちらこそ、ふふつつか者ですがよろしくお願いしますぅ!!」
「ん。ひなたよろしく」
「あー、部屋はひとつでいいんだな」
めんどくさそうなおっちゃんの声が聞こえてくる。側から見ればバカップルのやり取りにしか見えなかったのだろう。そんな、カップルだなんて、俺とどろ子はそんな関係ではないんだよ?まだ手だって握ってないし、あ、でもどろ子を抱き上げたことはあるな。どろ子が黒い泥から人間になる時そうなるとは思ってなくて持ち上げていたんだけど、そうか、俺どろ子に触れたことあるのか。
これ責任とった方がいいんじゃない?女の子に触ってしまったんだよ?もはや結婚してもいい案件だと思います。というかもうこれ結婚しているんじゃないさ?そうか、異世界来て俺に嫁が出来たのか。どろ子のことは大切にしよう。
アホなことを考えているとベッドと机のみが置かれたシンプルな部屋に案内された。『飯は下で食堂やっているから食いたきゃ別料金だ』と言って親父さんは去っていった。正直今日は色々ありすぎて疲れているからご飯より早く寝たいんだけど、うん。ベッドがひとつしかない。
べ ッ ド が ひ と つ し か な い
うわああああっっ!!???どろ子と同じベッドで寝るだとぉぉーーー??!馬鹿なの?俺馬鹿なの?女の子と同じベッドで寝るとか心が保ちませんわ!死ぬ。これはマジで死ぬ!
なんで俺は宿のおっちゃんに部屋は同じだけどベッドは2つと言わなかったんだよぉー!!寝れるわけないじゃん。俺の童貞力なめんなよ!53万あるんだぞ!
仕方ない、ここはもう俺は床で寝てベッドはどろ子に使ってもらおう。正直女の子とベッドで寝れるというシチュエーションを逃すのはもったいない気もするのだが、実際にやるとなるとたぶん心臓が破裂する。同じ部屋にいるというだけで心臓ばくんばくんいって口から飛び出しそうなんだぞ?童貞には早すぎる試練でしたよ。
「どろ子、今夜寝る場所なんだけどどろ子はベッドを使ってね。俺は床で寝るから」
そういいつつベッドから枕をひとつ取り床に置く。床で寝るのはまあいいとしても頭の位置が低いのはなんか落ち着かないんです。うん、これなら寝れそうだ。おやすみなさい。
硬くて冷たい床ではあるが疲れているからか横になると眠気が襲ってくる。今日一日でいろんなことがあったもんな。身体は疲れているんだよ。
そのまま眠りにつこうとしたら背中に温もりがあることに気付いた。なんだろう、気持ち良いな~と思っていると『ん。どろ子も寝る』と声が聞こえてきた。……ファファファッ!??
「どろ子なんでここにいるの!?ベッド使ってねって言ったじゃん!」
「ん。どろ子ひなたと一緒がいい」
振り返ると枕を抱えたどろ子がいた。枕をぎゅっとするどろ子もかわいいですね。大きなクマのぬいぐるみとか持たせたらめっちゃ似合いそう。どこかに売ってないかな。
「いやでも男女で一緒にいるのは色々問題があるといいますか、いや俺は絶対に手を出さないけど、そもそも出し方とかよくわからないけど、それでも良くないんですよどろ子!」
婚前前の男女が一緒に寝るのはモラル的にも現実的にもやはりダメでしょう。男は狼なのよ?どろ子みたいなかわいい子と一緒にいたらイチャコラちゃっちゃとしたくなるのは当然じゃないですか!まあ俺の下半身には爆発機能がついているからとても使おうとは思わないんだけど。使うと死ぬとかなにこれつらたん。
そんなわけでどろ子に男と2人からでいることの恐ろしさを切々と訴える。しかしどろ子は話を聞いてもこてんと首を傾けた。大丈夫かどろ子。
「どろ子わかった?」
「でもどろ子はなにされてもいいよ?」
「え、」
「ひなたにならなにされてもいいよ?」
首を傾けたままどろ子がそういう。なにされてもいい?え、なにしてもいいの?どろ子に?なにしてもいいの?
え、まじで?じゃあ、こうぐちゃぐちゃしたことをどろ子にしてもいいの?いや童貞だから具体的なことはわからないんだけど、きっと音的にはぬっちゃぬっちゃした感じなんだよね?まって、心臓がばくんばくんいい過ぎて痛い。血管に血が巡り過ぎて顔が熱くなる。
ぐるぐると思考が回り目も回る。女の子と同じ部屋にいてベッドがひとつしかなくて、しかもその子は俺になにされてもいいという。夢か?俺は夢を見ているのか?
でも目の前にはどろ子がいて、こてんと首を傾げながら無防備に俺を見上げている。夢じゃない、夢じゃないよあばばばばっ!
何してもいいって言われても何すればいいんだ!スタイリッシュに童貞卒業する妄想は死ぬほどしてきたけど現実には全く役に立たないよ!頭が爆発しそう。ダメ、無理、もう限界。
ぷつんと何かが切れる音がした。キャパオーバーになった俺はそのまま電源を切ったテレビのように視界が真っ暗になったのだった。
……朝だ。
窓から差し込む日の光で目が覚める。窓の外は快晴で小鳥が羽ばたいているのがガラス越しに見えた。
ふと隣を見るとすやすやと寝息を立てているどろ子の姿があった。穏やかな寝顔に心がほっこりと暖まる。天使とはこんな形をしているのかもしれませんね。感無量。
結局俺はどろ子に手を出すことはできなかったわけだけれども隣で一緒に寝ちゃったんだよね?もうこれ俺童貞捨てたようなもんだよね?やった、今日から俺は非童貞だ!身体は清いままだけど。
何はともあれ異世界生活2日目が始まる。昨日はイベント盛りだくさんだけど今日はどんな一日になるのだろう?取り敢えず異世界トリップお約束の冒険者ギルドがないか探しに行くか。
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