※ただし童貞を失ったら死ぬ

空兎

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エルフ君

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はい、陽向ひなたです。やっと黒の森から出てそんでもって二足歩行の猫さんの荷馬車に拾ってもらったと思ったら中にいたエルフ君にめっちゃ睨まれてます。

え、なんでエルフ君に嫌われたのだし。俺何かした?いや何もしてないよ?むしろあまりの顔面偏差値の差に俺の方が嫉妬でメラメラしてきているレベルなのに何故嫌われるのだし。意味がわかりません

「おい御者、何故人間が乗ってくるのだ。この馬車には人間は乗っていないということではなかったか?」
「最初は乗ってにゃかったけど途中で乗ってきたことについてはしょうがないにゃ」

俺のことをじろりと睨みながらエルフの青年がいう。どうやらエルフ君は俺個人というより人間のこと自体が嫌いらしい。そんな生まれ持った要素で嫌い言われてもどうしようもないんですが?このエルフ君は何か人間に対して良くない思い出でもあるんですかね。

「……」
「トリュフの街には今日中に着くのにゃ。ちょっとだけ我慢して欲しいのにゃ」
「……後半日も人間と同じ環境で過ごさなければならないとはな。御者、できるだけ急がせろ」

エルフ君が不機嫌そうにいう。おおぅ、半日同じ馬車に乗るのも嫌なレベルなんですか?旅の途中でたまたま同乗しただけの一般人をそこまで嫌わなくてもいいじゃない。エルフ君が人間を嫌いすぎじゃね?

なんとなく腑に落ちない気持ちになりながら荷馬車の隅っこにどろ子と座り込む。場の空気は冷え切っているがどろ子がいるからつらくはありません。向こうはぼっち、こっちには隣に可愛い女の子が座っている。どう見ても俺の勝利でしょう。

そのまま荷馬車にガタガタ揺られている。エルフ君が言ったから急がせているのか結構早い。このままいけば今日中に街に着くのかなと思っていると急に馬車の速度が遅くなった。おや?

「御者、できるだけ急ぐのではなかったのか」
「にゃっ、にゃっ、疾走の遊犬ランナーズ・ドックが現れたのにゃ!」
疾走の遊犬ランナーズ・ドック?」

知らない言葉に思わず聞き返すと御者の猫さんが詳しく教えてくれる。

疾走の遊犬ランナーズ・ドックは草原を走り回る犬に似たモンスターで動いている物を追いかける習性があるのにゃ。目標が止まるまでしつこく追い回してくるからいなくなるまで待っているのが良いのにゃ」
「何?それでは暫く人間がいるこの空間に留まらないといけないということか」

疾走の遊犬ランナーズ・ドックは草原を駆け回る犬っぽいモンスターらしい。おお、ここはモンスターが普通にいる世界なんだ。じゃあ冒険者とかもいるのかな?なんて思っているとスクッとエルフ君が立ち上がる。

「御者、スピードを緩めるな。そのまま奴らの間に突っ込め」
「にゃあっ!?そんなことしたら馬車が壊れるのにゃ!?」
「奴らに突っ込まれる前に全て仕留めきる。いいから速度を落とすな」

御者の猫さんは困惑したようににゃあにゃあ鳴いていたがやがてエルフ君の言うことに従うことにしたのか馬車のスピードを上げた。

すると前方より何か焦げ茶色の影が5つ程近付いてくるのが見える。よく見るとそれは額に角を生やした大型犬くらいの大きさの動物だった。おそらく疾走の遊犬ランナーズ・ドックだろう。

疾走の遊犬ランナーズ・ドックはまっすぐとこの荷馬車に向かって走ってくる。

勢いよく犬が突っ込んでくる様子は普通に怖い。このままで本当に大丈夫?と思ったらエルフ君が弓を構える。使い込まれているのかくすんだ銀色をしていてエルフ君は手慣れた様子で弓を引き絞る。非常にサマになっているんだけど、うん、矢は?

弦を引くエルフ君の手にはなにも持たれてない。どうするんだろう?と不思議に思っているとその疑問はすぐに解消される。

エルフ君が弦を離すまさにその瞬間に緑色に輝く矢が弓に装填されたのだ。

「【変幻の必撃矢フェイルノート】!」

あっという間だった。緑の矢は真っ直ぐと疾走の遊犬ランナーズ・ドックの額に突き刺さる。疾走の遊犬ランナーズ・ドックが『キュワンッ』と悲鳴をあげて倒れる。

だけれどもエルフくんの手は止まらない。次々弓を引き絞り疾走の遊犬ランナーズ・ドックを討ち取っていく。どれもこれも全て眉間を撃ち抜かれていた。

3体の疾走の遊犬ランナーズ・ドックがやられたところで残りの2匹も敵わないと思ったのか顔を見合わせキャンキャン言いながら全力で逃げいく。

他にもうモンスターはいない。そのことを確認するとエルフ君は弓を下ろした。

「にゃにゃにゃ。すごいにゃ。馬車に乗りながら疾走の遊犬ランナーズ・ドックの急所を撃ち抜いていくなんてすごい射ち手なのにゃ」
「弓においてエルフは最高の種族だ。エルフの矢はけして外れることはない」

そういってエルフ君は弓を収める。おそらく今のはエルフ君のスキルだろう。矢を無尽蔵に作成できるスキルとかかな?弾数気にしなくていい飛び道具は強いな。

エルフ君の態度は一年中氷点下の南極並に冷たい物だけどあのスキルと戦闘能力は素直に羨ましい。襲いかかってくるモンスターを矢で仕留めていく姿はカッコ良かった。

でも襲われた馬車を助けるのって主人公の役目じゃないの?あれ、誰が主人公だっけ?え、ひょっとして俺じゃないの?ヤダヤダ、主人公になって可愛い女の子と冒険するのは俺だからね!

取り敢えずスキルは便利だし使いこなしたいと思うんだけど、でも俺のスキルってどう使うのだろう?

俺のスキルは童貞力という悲しみしか感じない能力値を別のステータス値に割り振るという【童帝ヴァージンロード】と望んだ姿になれるという【童貞の妄想ヴァージンドリーム】の2つだ。

童帝ヴァージンロード】の方はなんとなくできることがわかるけど【童貞の妄想ヴァージンドリーム】はこれ、どうするんだ?

変身っていうと仮面ライダーとかセーラームーンを思い出すが別にライダーキックしたいという願望はない。美少女戦士になりたいという願望はもっとない。なりたいのは勇者様です。冒険がしたい。

でも勇者ってどうなの?変身したいっていってなれるものなの?変身って姿形を変えることじゃん。なんか変身して勇者っていうのは違う気がするんだよなー。

まあ何にしても姿変わっちゃうなら今はスキルを試せないね。街についたらスキルも使ってみるか。
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