※ただし童貞を失ったら死ぬ

空兎

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神様お願い!

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「神様ッ!どうかお願いです!!俺を最強無敵の無双系イケメンモテ男にして下さいぃぃっ!!!」

『わしは神様じゃ』というロリペタ幼女が現れた瞬間、俺はその場に全力で土下座する。もう周りの目とか俺のプライドとかは一切関係ありません。

だってこれってラノベあるあるの異世界転移のお約束展開だよね??こんなの逃すわけにはいけませんよ!やっふぅぅー!!ついに俺にもチャンスが巡ってきたぞぉー!

異世界トリップといえば可愛い女の子とイチャイチャしながら冒険して魔王を倒す少年の夢を詰め込んだ素敵なお話だよね?3歳の頃から100万回は妄想してきましたよ。それがついに現実に起こるだからこんなの落ち着いていられません。

神様ぁー!どうか俺を異世界に連れていって下さいッ!!

「何やら忙しない奴よのう。まあ、よい。これから起こることがわかっているというならばそれはそれで手間が省けるというものじゃ。お主をこれから異世界に連れて行く」
「おおーっ!異世界トリップ!」

ロリペタ幼女の言葉に顔を上げてガッツポーズをする。そうだとは思っていたが実際にこれが異世界への導入展開だとわかると思わずその場で小躍りしたい気持ちになる。

ついに俺も異世界デビューか。向こう行ったら何しようかな。取り敢えずハーレム作って童貞を捨てたいです。

「神様っ!準備は万端です!いつでも連れって行って下さい!」
「落ち着け、そう慌てるでない。向こうの世界はお主が住んでいる世界とは違い戦闘を強いられることもある。そのまま行っても死ぬだけじゃから何かしらお主に力をやろう」

今すぐにでも異世界に飛び込みたいとばかりに食い気味に言うが、神様は手をひらひらと振りこのままでは戦闘が頻繁に起こる異世界に連れて行くことができないという。

その言葉に俺の心臓も高鳴る。おおおっ!?これはあれですか!?お約束のトリップ特典という奴ですか?!異世界行った主人公達がもらえるチートなアイテムとかスキルのことですか?ひゃっふぅぅ!!これで俺も無双系主人公だぜ!

「というわけじゃ。お主の欲しい能力を申してみよ。新たな世界で生き抜くお主の為にある程度の希望は叶えてやろう」
「やっぱりトリップ特典のお話だったんですね、神様ありがとう!じゃあ俺をイケメンで細マッチョで超絶強くて女の子にモテモテの最強系主人公にして下さい!」
「……お主、いくらなんでも盛りすぎじゃろ」

神様の呆れた声が降ってくる。え、ダメだった?せっかくの異世界なんだから自分の希望を余すことなく詰め込んだんだけど流石に多すぎたかな?仕方ない、細マッチョくらいは諦められるので俺をイケメンで強いモテ男にして下さい。

「ダメですか?」
「お主が異世界へ行くことへの対価ではそこまで叶えることはできないのぅ。できるのは精々ひとつの能力を与えることだけじゃ。過去世界を渡った者たちは自分にしか使えない神剣や1度行った場所ならば何処にでも飛ぶことのできる瞬間移動能力、それにアイテムボックスといういくらでも容積の入る魔法空間が欲しいと言った奴もいたのぅ。お主もそういうのを選ぶことはできないのか?」

神様が過去のトリッパー達の能力を教えてくれる。なるほど、神剣に瞬間移動に空間能力か。どれも主人公が使いそうないい能力ですね。確かに便利な能力だと思うしもらうことが出来たら異世界生活を楽しく送ることができるだろう。

だけどつまりこれってそういう能力を持った奴らがたくさん異世界に行っているってことだろ?ライバルは強敵ばかりじゃないですかやだー。自分でいうのもアレだがスペックモブの俺なんてどう考えてもやられキャラポジじゃね?やだやだ、俺は女の子といちゃいちゃして絶対にハーレムを作るんだもん。誰にも邪魔されない強さが欲しいです。

「神様ぁー!それでも俺はもうちょこっと強くなっておきたいんです!リセマラは全力でやるタイプの人間なのです!なんとか、もう少し条件をよくしていただくことはできませんか?」
「ふむ、そこまでいうならば考えてやらなくもないのぅ」

幼女な神様が顔に手をやり考えるポーズを取る。俺の粘りがついに譲歩を引き出すことができたらしい。これはマジで俺☆無双展開がくるんじゃね?!

「だがいくらなんでも何もなしに力を与えることはできん。支払った対価と同等の力を授けてやろう」
「マジっすか!じゃあ何でもお渡ししますので俺を無双系主人公にして下さい!」

何か代償を支払うことにより俺に能力を付けてくれるらしい。異世界でハーレム生活を送れるなら悪魔に魂だって売れますよ。このチャンスは逃さんぞー!

「そうか、ではお前の最も大切な物を力に変えてやろう。これで望んだ姿になるがいい」

幼女な神様はそういうと杖でトントンと地面にを叩く。すると魔法陣が浮かび上がり瞬間俺の身体もその中に吸い込まれて行く。

「え?うわああああっ!!!??」
開示セラフと唱えれば自分の状態がわかるじゃろう。後は好きに生きるが良い」

上から神様の声が降ってくるが落下して行く俺はそれどころではない。え、これ大丈夫なのか?異世界着いて早々墜落死とか絶対に嫌だぞ?どうやったら止まるんだ?ちょ、まって、誰か助けてくれぇぇーー!!!

だが俺の叫びは虚しく辺りに響くだけでどんどん身体は落ちて行く。まさかこのまま本当に死んでしまうのだろうか。ふざけんな、そんなの嫌だぞ、

 俺 は 絶 対 童 貞 捨 て る ま で 死 な な い か ら な !

その瞬間何処までも続くと思えた穴の先が光輝くのが見えた。自由落下するしかできない俺はその光の中に吸い込まれるように落ちて行く。

暖かい光に包まれ俺の意識も遠のいて行った。






ガサガサと木の葉の掠れる音が聞こえる。頰にしっとりとして冷たくザラザラとした物があたり『あ、これ土だわ』と思った瞬間意識が覚醒する。

がばりと起き上がり辺りを見渡すと周りには黒い葉の木々が立ち並び上を見れば葉に覆われた隙間から僅かながら光が漏れている。そして目の前には黒い湖がある。

こんな場所日本にはありませんよね?ついに来ましたぞ異世界トリップです!俺はやっと夢にまで来た異世界に来ることができたのですね!神様ありがとう!ここから俺のハーレム無双が始まるというわけですね!

だけれども辺りを見回して首を傾げる。ここが日本でないというのは間違いないと思うが、でもここ何処だ?

森の中だというのはわかるんだけどジメジメとしているし人気ないし目の前には真っ黒な湖があるしどう見てもまともな場所では無いですね。

取り敢えずは神様がくれたはずのチート能力が何か見ようか。それによっては今の状況をなんとかできるかもしれない。

神様が言った通り『開示セラフ』と唱えてみる。すると目の前に半透明の緑色の画面が現れた。


開示セラフ

〔名前〕
柊野ふきの 陽向ひなた

〔スキル〕
童帝ヴァージンロード
類稀なる童貞のみが扱うことの許されるスキル。浄化作用を持ち童貞力をHP体力MP魔力ATK攻撃力DFC守備力DEX速度に変換可能。ただし童貞を失うと死ぬ。

童貞の妄想ヴァージンドリーム
童貞の妄想力により憧憬の対象へと姿を変える。

◇ステータス◇
◆HP63
◆MP102
◆ATK59
◆DFC67
◆DEX57
★童貞力531531★

どうしよう、このスキル。突っ込みどころしかないんだが?

まず【童帝ヴァージンロード】ってなんですか?これが神様のくれたチート能力なのだろうけど名前酷くない?

いや、確かに俺が童貞なのは事実なのだけれどそれをメイン能力にする必要はないじゃないですか神様の馬鹿やろうー!なんなの、俺は確定童貞なの?俺が童貞なのは変わらぬ事実なの?こんな全力で童貞を推さなくてもいいじゃないですか、マジで泣くぞ。

いや、俺のメインスキルが童貞になっているのもヤバいがそれよりも先に突っ込まないといけないことがありますね。たぶん、これが神様の言っていた対価なのだろうけど、うん。ただし童貞を失うと死ぬ

※ た だ し 童 貞 を 失 う と 死 ぬ

神様、神様ぁー!この代償はあんまりじゃね?!俺の目的覚えている?異世界行ってハーレム作って童貞捨てるですよ?捨てれないじゃないですか!捨てたら死ぬじゃないですか!

なんだ、この本末転倒な代償は。いや、確かに無双系主人公になれるのならなんでも支払いますよ!っていったけどそれは女の子にモテモテになりたくてそう望んだわけで、童貞を捨てられないなら意味ないじゃないですかやだー。

嘘だろ?マジで言っているのか?俺死ぬの?童貞捨てたら死ぬの?え、なんで俺異世界トリップしたんだよ。これなら現実世界の方がワンチャンあったんじゃね?

チート能力を得て憧れの異世界トリップをすることができましたが俺の童貞が確定したらしい。もう生きるのが本当つらい。

暗い森の中、あんまりな現状に俺は伏してむせび泣くのだった。
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