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スライム、襲撃
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親友のミツバと別れ次の街を目指す。別れはつらいが俺にはすべきことがあるのだ。
すばり俺の目的はひとつ、色々なスライムを探しテイムすることだ。
テイムすればオークのように他の魔物がスライムを襲うかもしれないから保護することができる。さらにテイムしたスライムからちびスラを分けてもらえば色々なスライムを食べることもできる。
今から行く街にも珍しいスライムがいると聞いたことがある。新しいスライム、実に楽しみだ。いつか必ず世界中のスライムをテイムしてみせるぞ!
そんなわけでラスク・ハーゲンを出て次の街目指して歩いていると地面に何か光っているのを見つけた。スライムか!?と思って屈んで見ると1sだった。全然スライムではなかった。残念。
と思った瞬間頭の上を何かが通った。見ると目の前の地面に矢が刺さっている。ファッ!?
「チッ、さすがオーク王を倒しただけのことはあるな。俺の矢を避けるとは」
「やっぱり辞めといた方が良かったんじゃねえか?オーク王を倒したってことは実質Aランク冒険者だろ?」
「あんなガキ一人に本気でビビってるのかよ。俺はヤるぞ。少なくても30000s持ってやがるんだぜ。うまくいけばしばらくは遊んで暮らせるぞ」
後ろから3人組の男たちが何やら不穏なことを話しながら現れた。まって、展開急でついていけてないんだけどこれってチンピラ3人組に襲われてそうになっているってことでいいですか?いいですよね。何これやばい。
どうやらチンピラ3人組はオーク王の討伐報奨金を狙って襲ってきたらしい。やっぱり身の丈に合わないものを持っているのはダメですね。次の街に行ったら慎ましく穏やかに生きて行くことを誓おう。
「ああ、ここまで来たならやってやろうぜ。うまく仕留めれば俺たち一気に大金持ちだ!」
こちらの考えが纏まる前に向こうが先に決断を下したらしい。剣を抜いて斬りかかってくる。
うわああっ!!まって、まって、俺、本当に戦闘はダメだって!そりゃ投擲くらいなら出来るけどここまで距離を詰められてるとコメット袋漁っているうちに斬られるぞ?どうしたらいいんだ?!
いっそ有り金全部差し出して命乞いする?いや、でも最初に矢を放って殺しにきたところみると俺の生死はあんまり気にしてないっぽいぞ?あれ?これ本当にピンチじゃない?
とっさに薬草採取用のナイフを抜いて振り下ろされる剣に備える。レベルはそれなりにあるから一撃受けても致命傷にはならない、はず……。
防御力が相手の攻撃力より高ければダメージを負いにくいというのが一般論なんだけど、いくら防御力あっても刃物で斬られて無事でいられるものなのか?
ダメだ、全然大丈夫な気がしなくなってきた。やっぱり剣で斬られたら絶対に痛いよ!
チンピラその1が振り下ろしてくる剣に内心ヒィィィ!と悲鳴をあげる。だけどもその剣は俺に届くことはなかった。
「ご主人様にそんな粗末な鉄屑を向けるなど許しませんよ」
どこから現れたのかわからない、急に目の前にふわふわの緑の髪をした少女が立っていてチンピラその1の手首を掴んでいた。
その女の子は信じられないくらい可愛くて思わず目を奪われる。まるで人間とは思えないほど顔貌が整っている。昔教会で見た天使の絵にそっくりな子だった。
「な、てめえ、何処から現れやがった!」
「ガキだからといって容赦しねえぞ!俺たちは後ろの男に用があるんだよ。どけっ!」
チンピラその2が少女に向かって剣を振り下ろす。少女は動じない。
そしてチンピラその2が斬りつけた剣が当たった瞬間、少女がぐにゃりと歪んだ。
剣の軌跡に合わせて少女の身体が不自然に凹んだのだ。
「ひぃ、なんだっ!?」
「こいつ人間じゃねえ!化け物だ!」
「貴方達の攻撃力よりわたしの防御力の方が高そうですね。ならばもう貴方達が勝つ可能性は全くありません。ご主人様を襲った罪はその命を持って償ってもらいましょう」
少女が手を伸ばしチンピラその1の顔を掴む。瞬間、少女の手が緑色のゼリーのような物に変わりチンピラその1の顔を覆った。
「な、なんだこりゃッ!?もがっ……」
「“増殖”。貴方の力でわたしのスライムは振りほどけません。あと、2人ですね」
「ひいっ、こいつはヤバいぜ!早く逃げ……むぐっ!」
「これであと1人です」
少女が手から飛ばされた緑色のゼリーがチンピラその2の顔に張り付く。チンピラその1もその2もゼリーを引き離せないようだ。顔に張り付くゼリーを掴んでジタバタと暴れている。
それを見たチンピラその3がヒィィィッ!と叫んでその場から逃げ出す。少女は『逃がしませんよ』と呟くと手から緑色のゼリーを生み出し逃げるチンピラに向かって放り投げた。
べちゃりと音を立てて緑色のゼリーはチンピラその3の足元に落ちる。チンピラはそのゼリーを踏んで転んだ。
そしてゼリーはまるで意思を持ったようにチンピラに絡みつきチンピラが立ち上がるのを阻止する。少女がチンピラに追いつき顔にゼリーを沿わせトドメを刺した。チンピラは全滅した。
絶体絶命の大ピンチだと思ったらスピード解決しました。突然現れた天使顔の美少女が助けてくれたわけだけど、え、この子何者?あの手から出していたゼリーってスライムだよね?え、スライム出せる人間?なにそれ凄い。それは是非ともお友達になりたいよ。
取り敢えずまずお礼をいうところから始めよう。この子の助けがなかったら本気で俺は危なかった。
「あの、危ないところを助けてくださりありがとうございました。おかげで五体満足、ついでに有り金も奪われずにすみました」
「いえ、そんな、わたしがお助けしなくともエアト様ならお一人であの程度の賊など返り討ちにされたことでしょう。ご謙遜されなくとも大丈夫ですよ」
そういって天使な少女がにっこりと笑う。うん、待って。なんでこの子の俺の名前知っているんだ?あれ?俺名乗ったっけ?名乗ったとしてもなんで様付けされているんだ?
「えっと、ごめん。なんで俺の名前知っているの?どこかで会ったっけ?」
「何を仰いますか、エアト様。今までずっとご一緒させていただいたではないですか?わたしのことをお忘れなのですか?」
天使な少女が悲しそうに俯く。え、ちょっと、まって。今まで一緒にいた?いやいや、こんな美少女が近くにいたら絶対記憶に残っているって!向こうの勘違い?いやでもこの子俺の名前知っているぞ?
どこだ、どこだどこだ、どこで会ったんだ。ヤバい、まじわからん。この美少女は誰なんだ?
「えっと、ごめん。どこで出会ったんだっけ?」
「エアト様、本当に覚えておられないんですか?出会いは森の中で、エアト様がわたしのお尻を齧ったことが全ての始まりです。エアト様の力強いようでこちらを気にかけるような優しげな噛みつき、それでわたしはエアト様にすべてを奪われ心酔するようになったのです」
ポッと天使な少女が顔を赤く染めてそういう。森で俺がお尻に齧りついた?なんだその特殊な状況は。どういう経緯があったら俺が美少女の尻に齧りつくのかさっぱり検討つきません。それ本当に俺がやったの?
うん、やっぱり全くもって心当たりがないですよ。
「思い出せませんか、エアト様?」
「うん、全く。俺がいきなり外で美少女の尻にかぶりつく人間だと思いたくないです」
「そうですか、ではエアト様がわたしを召し上がられたことも?」
「なにそれしらない」
外で美少女のお尻に齧りつくだけでも完全アウトなのに俺がこの美少女を食べただと?え、それどういう意味?青年法に引っかかる的なお話ですか?
いや、本当に覚えがないですよ!俺の心も身体も清いままですよ!え、俺がこの美少女を食べた?いやいや、ないない!
「え、俺が君を食べたの?」
「はい。エアト様がわたしをお求めでしたのでこの身を差し出しました。ですが、エアト様のお気に召さなかったのでしょう。それからわたしは不特定多数の方々にこの身を捧げることになりました」
「なにそれひどい」
思わずその場で頭を抱える。美少女の身体を好き勝手して気に入らなかったからといって他の人に売り渡す?誰だそんな非道なことをする奴は。あ、俺か。俺なの?
え、俺、美少女を色々な人に売っちゃうようなことしましたか?本当に覚えがないんだけど、俺はそんな最低の屑野郎だったのだろうか?
いやでも本当にしてないよ?しかしこの美少女は真剣な顔しているし嘘ついているようにも見えない。どういうこっちゃ。
「それがエアト様の為になるのならわたしはこの身を捧げることになんの抵抗もありません。ただ、エアト様。わたしは貴方の物です。貴方に食べられたいのです。多くの人に分け与えていただいて構いませんが、せめて僅かでもその身体にわたしを入れていただけるよう、お願い致します」
「もう、俺のHPはゼロだよ。こんな天使に非道な行為したやつ許せん!と思うのに犯人俺なのですか。もうつらい。生きるのつらい」
天使系美少女の言葉に絶望する。この天使系美少女は弄ばれて他の人に売られたというのにまだ俺に心を寄せているらしい。
健気過ぎてホントつらい。なにこの純粋な子、ピュアすぎて心に突き刺さります。
それに比べて俺はなんで外道なんだ。こんなにも俺を慕ってくれる子の純情を踏みにじるなんて……踏みにじったのかな?
いや、やっぱりそんなことした記憶ないぞ?弄んだもなにも俺はまだ汚れなき身体だよ。俺のエクスカリバーはまだ鞘を被ったままだよ。うん、やっぱりおかしい。
「えっと、それ本当に俺?」
「はい。毎日のように好きだ、愛していると仰って下さいました」
「マジか。俺って好きになると積極的に愛を囁くタイプなんだ」
「そのご様子だとやはりわたしのことはわからないのですね。それも仕方ないことなのでしょう。わたしはエアト様の為にお役に立てることがほとんどありませんから。この間のオーク王との戦いでも瀕死のオーク王に向かって飛びかかり口を塞ぎ呼吸を奪うことしか出来ませんでしたしエアト様の記憶に残らないことも仕方ないのかもしれないです」
そういって天使系美少女が項垂れる。
……ちょっとまって、今大事なこと言わなかったか?
オーク王に飛びかかって呼吸を奪った?それに該当するのはただひとつしかない。
森でお尻に噛み付いた。俺が食べた。そしてたくさんの人にも売った。
そんでもって俺が好きだと囁くもの、そんなものひとつしかない。
俺が愛しているものはただ一つ、スライムだ。そして、この美少女は、
「……もしかして、スラりん?」
「はい、エアト様。貴方のスラりんです」
そういって美少女がにっこり笑う。そうか、やっぱりスラりんか。スラりんだったのか。
取り敢えず言いたいことはただひとつ、
スライムが美少女化するなんて聞いてませんよ?
すばり俺の目的はひとつ、色々なスライムを探しテイムすることだ。
テイムすればオークのように他の魔物がスライムを襲うかもしれないから保護することができる。さらにテイムしたスライムからちびスラを分けてもらえば色々なスライムを食べることもできる。
今から行く街にも珍しいスライムがいると聞いたことがある。新しいスライム、実に楽しみだ。いつか必ず世界中のスライムをテイムしてみせるぞ!
そんなわけでラスク・ハーゲンを出て次の街目指して歩いていると地面に何か光っているのを見つけた。スライムか!?と思って屈んで見ると1sだった。全然スライムではなかった。残念。
と思った瞬間頭の上を何かが通った。見ると目の前の地面に矢が刺さっている。ファッ!?
「チッ、さすがオーク王を倒しただけのことはあるな。俺の矢を避けるとは」
「やっぱり辞めといた方が良かったんじゃねえか?オーク王を倒したってことは実質Aランク冒険者だろ?」
「あんなガキ一人に本気でビビってるのかよ。俺はヤるぞ。少なくても30000s持ってやがるんだぜ。うまくいけばしばらくは遊んで暮らせるぞ」
後ろから3人組の男たちが何やら不穏なことを話しながら現れた。まって、展開急でついていけてないんだけどこれってチンピラ3人組に襲われてそうになっているってことでいいですか?いいですよね。何これやばい。
どうやらチンピラ3人組はオーク王の討伐報奨金を狙って襲ってきたらしい。やっぱり身の丈に合わないものを持っているのはダメですね。次の街に行ったら慎ましく穏やかに生きて行くことを誓おう。
「ああ、ここまで来たならやってやろうぜ。うまく仕留めれば俺たち一気に大金持ちだ!」
こちらの考えが纏まる前に向こうが先に決断を下したらしい。剣を抜いて斬りかかってくる。
うわああっ!!まって、まって、俺、本当に戦闘はダメだって!そりゃ投擲くらいなら出来るけどここまで距離を詰められてるとコメット袋漁っているうちに斬られるぞ?どうしたらいいんだ?!
いっそ有り金全部差し出して命乞いする?いや、でも最初に矢を放って殺しにきたところみると俺の生死はあんまり気にしてないっぽいぞ?あれ?これ本当にピンチじゃない?
とっさに薬草採取用のナイフを抜いて振り下ろされる剣に備える。レベルはそれなりにあるから一撃受けても致命傷にはならない、はず……。
防御力が相手の攻撃力より高ければダメージを負いにくいというのが一般論なんだけど、いくら防御力あっても刃物で斬られて無事でいられるものなのか?
ダメだ、全然大丈夫な気がしなくなってきた。やっぱり剣で斬られたら絶対に痛いよ!
チンピラその1が振り下ろしてくる剣に内心ヒィィィ!と悲鳴をあげる。だけどもその剣は俺に届くことはなかった。
「ご主人様にそんな粗末な鉄屑を向けるなど許しませんよ」
どこから現れたのかわからない、急に目の前にふわふわの緑の髪をした少女が立っていてチンピラその1の手首を掴んでいた。
その女の子は信じられないくらい可愛くて思わず目を奪われる。まるで人間とは思えないほど顔貌が整っている。昔教会で見た天使の絵にそっくりな子だった。
「な、てめえ、何処から現れやがった!」
「ガキだからといって容赦しねえぞ!俺たちは後ろの男に用があるんだよ。どけっ!」
チンピラその2が少女に向かって剣を振り下ろす。少女は動じない。
そしてチンピラその2が斬りつけた剣が当たった瞬間、少女がぐにゃりと歪んだ。
剣の軌跡に合わせて少女の身体が不自然に凹んだのだ。
「ひぃ、なんだっ!?」
「こいつ人間じゃねえ!化け物だ!」
「貴方達の攻撃力よりわたしの防御力の方が高そうですね。ならばもう貴方達が勝つ可能性は全くありません。ご主人様を襲った罪はその命を持って償ってもらいましょう」
少女が手を伸ばしチンピラその1の顔を掴む。瞬間、少女の手が緑色のゼリーのような物に変わりチンピラその1の顔を覆った。
「な、なんだこりゃッ!?もがっ……」
「“増殖”。貴方の力でわたしのスライムは振りほどけません。あと、2人ですね」
「ひいっ、こいつはヤバいぜ!早く逃げ……むぐっ!」
「これであと1人です」
少女が手から飛ばされた緑色のゼリーがチンピラその2の顔に張り付く。チンピラその1もその2もゼリーを引き離せないようだ。顔に張り付くゼリーを掴んでジタバタと暴れている。
それを見たチンピラその3がヒィィィッ!と叫んでその場から逃げ出す。少女は『逃がしませんよ』と呟くと手から緑色のゼリーを生み出し逃げるチンピラに向かって放り投げた。
べちゃりと音を立てて緑色のゼリーはチンピラその3の足元に落ちる。チンピラはそのゼリーを踏んで転んだ。
そしてゼリーはまるで意思を持ったようにチンピラに絡みつきチンピラが立ち上がるのを阻止する。少女がチンピラに追いつき顔にゼリーを沿わせトドメを刺した。チンピラは全滅した。
絶体絶命の大ピンチだと思ったらスピード解決しました。突然現れた天使顔の美少女が助けてくれたわけだけど、え、この子何者?あの手から出していたゼリーってスライムだよね?え、スライム出せる人間?なにそれ凄い。それは是非ともお友達になりたいよ。
取り敢えずまずお礼をいうところから始めよう。この子の助けがなかったら本気で俺は危なかった。
「あの、危ないところを助けてくださりありがとうございました。おかげで五体満足、ついでに有り金も奪われずにすみました」
「いえ、そんな、わたしがお助けしなくともエアト様ならお一人であの程度の賊など返り討ちにされたことでしょう。ご謙遜されなくとも大丈夫ですよ」
そういって天使な少女がにっこりと笑う。うん、待って。なんでこの子の俺の名前知っているんだ?あれ?俺名乗ったっけ?名乗ったとしてもなんで様付けされているんだ?
「えっと、ごめん。なんで俺の名前知っているの?どこかで会ったっけ?」
「何を仰いますか、エアト様。今までずっとご一緒させていただいたではないですか?わたしのことをお忘れなのですか?」
天使な少女が悲しそうに俯く。え、ちょっと、まって。今まで一緒にいた?いやいや、こんな美少女が近くにいたら絶対記憶に残っているって!向こうの勘違い?いやでもこの子俺の名前知っているぞ?
どこだ、どこだどこだ、どこで会ったんだ。ヤバい、まじわからん。この美少女は誰なんだ?
「えっと、ごめん。どこで出会ったんだっけ?」
「エアト様、本当に覚えておられないんですか?出会いは森の中で、エアト様がわたしのお尻を齧ったことが全ての始まりです。エアト様の力強いようでこちらを気にかけるような優しげな噛みつき、それでわたしはエアト様にすべてを奪われ心酔するようになったのです」
ポッと天使な少女が顔を赤く染めてそういう。森で俺がお尻に齧りついた?なんだその特殊な状況は。どういう経緯があったら俺が美少女の尻に齧りつくのかさっぱり検討つきません。それ本当に俺がやったの?
うん、やっぱり全くもって心当たりがないですよ。
「思い出せませんか、エアト様?」
「うん、全く。俺がいきなり外で美少女の尻にかぶりつく人間だと思いたくないです」
「そうですか、ではエアト様がわたしを召し上がられたことも?」
「なにそれしらない」
外で美少女のお尻に齧りつくだけでも完全アウトなのに俺がこの美少女を食べただと?え、それどういう意味?青年法に引っかかる的なお話ですか?
いや、本当に覚えがないですよ!俺の心も身体も清いままですよ!え、俺がこの美少女を食べた?いやいや、ないない!
「え、俺が君を食べたの?」
「はい。エアト様がわたしをお求めでしたのでこの身を差し出しました。ですが、エアト様のお気に召さなかったのでしょう。それからわたしは不特定多数の方々にこの身を捧げることになりました」
「なにそれひどい」
思わずその場で頭を抱える。美少女の身体を好き勝手して気に入らなかったからといって他の人に売り渡す?誰だそんな非道なことをする奴は。あ、俺か。俺なの?
え、俺、美少女を色々な人に売っちゃうようなことしましたか?本当に覚えがないんだけど、俺はそんな最低の屑野郎だったのだろうか?
いやでも本当にしてないよ?しかしこの美少女は真剣な顔しているし嘘ついているようにも見えない。どういうこっちゃ。
「それがエアト様の為になるのならわたしはこの身を捧げることになんの抵抗もありません。ただ、エアト様。わたしは貴方の物です。貴方に食べられたいのです。多くの人に分け与えていただいて構いませんが、せめて僅かでもその身体にわたしを入れていただけるよう、お願い致します」
「もう、俺のHPはゼロだよ。こんな天使に非道な行為したやつ許せん!と思うのに犯人俺なのですか。もうつらい。生きるのつらい」
天使系美少女の言葉に絶望する。この天使系美少女は弄ばれて他の人に売られたというのにまだ俺に心を寄せているらしい。
健気過ぎてホントつらい。なにこの純粋な子、ピュアすぎて心に突き刺さります。
それに比べて俺はなんで外道なんだ。こんなにも俺を慕ってくれる子の純情を踏みにじるなんて……踏みにじったのかな?
いや、やっぱりそんなことした記憶ないぞ?弄んだもなにも俺はまだ汚れなき身体だよ。俺のエクスカリバーはまだ鞘を被ったままだよ。うん、やっぱりおかしい。
「えっと、それ本当に俺?」
「はい。毎日のように好きだ、愛していると仰って下さいました」
「マジか。俺って好きになると積極的に愛を囁くタイプなんだ」
「そのご様子だとやはりわたしのことはわからないのですね。それも仕方ないことなのでしょう。わたしはエアト様の為にお役に立てることがほとんどありませんから。この間のオーク王との戦いでも瀕死のオーク王に向かって飛びかかり口を塞ぎ呼吸を奪うことしか出来ませんでしたしエアト様の記憶に残らないことも仕方ないのかもしれないです」
そういって天使系美少女が項垂れる。
……ちょっとまって、今大事なこと言わなかったか?
オーク王に飛びかかって呼吸を奪った?それに該当するのはただひとつしかない。
森でお尻に噛み付いた。俺が食べた。そしてたくさんの人にも売った。
そんでもって俺が好きだと囁くもの、そんなものひとつしかない。
俺が愛しているものはただ一つ、スライムだ。そして、この美少女は、
「……もしかして、スラりん?」
「はい、エアト様。貴方のスラりんです」
そういって美少女がにっこり笑う。そうか、やっぱりスラりんか。スラりんだったのか。
取り敢えず言いたいことはただひとつ、
スライムが美少女化するなんて聞いてませんよ?
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