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スライム、後方戦闘。
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「やはり疲労したところを狙って後ろから急襲をかけて来ましたね。知性のあるモンスターというのは実に厄介です」
そういいながらノルンさんが両手に剣を構える。
安全後方配置、ポーション支援でクエスト貢献、って思っていたのに急に目の前が戦場になってしまったのであります。やはりとかいっているしノルンさんは後ろから敵が来ることを知っていたのだろうか。それなら教えておいてよ、全力で逃げたのに!
「オーク将軍が1体にオーク兵士が5体にオークが20体くらいですね。オーク将軍は私が相手をします。残りをよろしくお願いしますね」
「はい、え、俺ですか?」
「はい、オーク将軍を倒した手腕、期待してますよ」
ニコッと笑うとノルンさんはオーク将軍向かって走りだした。ええええっ?!よろしくって言われたって30体近いオークを俺ひとりで倒すだと?むりむりむり、1体目との交戦でひき肉にされる自信がありますよ!
だけどもそれを訴えようにもノルンさんはもう戦闘を始めちゃっているしオークたちは続々とこちらに向かって来ている。なんとかしなあかん。取り敢えず助けを呼ぼう。
「後ろからもオークが来ています!やばいです!結構来てます!ヘルプっ!ヘルプっ!」
俺の声を聞いて幾人かの冒険者が『なんだ?』といいながらこちらを向いた。その中で真っ先に駆けつけてくる人影があった。その姿に感動する。それは我が友、ミツバだった。
「まったく、世話がかかるのです。後ろにもオークが現れるのなんて……結構な数がいるのです」
「ミツバ!うん、オーク将軍もいて今ノルンさんが戦っているよ」
「1番強いところ請け負ってくれているのですね。後は雑魚の掃除をすればいいだけなのです」
ミツバが手を翳し魔法陣を構築する。空中に浮かび上がった魔法陣はやがて赤く光り始めた。
「行くのです。敵を燃やせ《-炎弾-》」
4つの火の玉が魔法陣から現れそれぞれがオークを焼く。一気に4体のオークが倒れた。
「おおっ、ミツバ凄い!」
「このくらい当然なのです。乱戦になったら味方に当たるかもしれないから魔法は使えなくなるので今のうちにできるだけ敵の数を減らさないといけないのです」
再びミツバが魔法陣を構築し始める。だけれども魔法を撃ったことでヘイトを稼いでしまったのかオーク達が一斉にこちらに向かってやって来た。
このままではミツバがヤバい。我が友ミツバを守るため俺もちょっと頑張るぞ!というわけで投げられそうなものを探すためコメット袋に手を突っ込む。
紫玉は効果が強すぎるし光玉、音玉はミツバも驚いてしまうかもしれない。なるべくオークだけに効果があるのは……うん、じゃあ黒玉を使おう。
黒玉はクラーケンを倒した時に手に入れたイカ墨とレインが作った料理(黒)を錬金して作ったものだ。
レインは一緒のパーティにいた人で凄腕の剣士だったんだけどそれがまな板の上でも発揮されてしまった。レインが料理すると食材が塵か消し炭になってしまう。そしてまな板が親の仇のように滅多刺しになる。
じゃあ味付けなら大丈夫なのかと思って任せると新たな物質(黒)を生成している。レインは料理してはいけない人間なのだろう。
そんなレインの作った料理をなんとか有効活用できないか考えて作ったのが黒玉だ。オーク達の足止めとして使うなら効果があるだろう。
「ミツバに近づくな!喰らえ、黒玉っ!」
魔法を構築しているミツバに襲いかかろうとしていたオークに向かって黒玉を投げる。見事顔面に当たった。
「ギャオォォーーッ!!」
「敵を燃やせ、《-炎弾-》!!」
その瞬間ミツバの魔法が発動し黒玉を受けて悶えていたオークを燃やした。おお、ナイス連携プレーですね。この調子でどんどん敵を倒していきましょう!
ミツバが魔法の準備をしている間にオークに向けて黒玉を投げていく。当たったオークは皆当たった場所を抑えて叫び声を上げている。オークの悲鳴が木霊する。中にはガンガンと頭を地面に打ち付けている者さえいる。
相変わらずの効果に思わず顔がひきつる。材料、イカ墨とレインの料理だけなんだけど、どうしてオークはあんなに苦しんでいるのだろうか。ひょっとして紫玉より効果でてない?
レインの料理、一体何に変わっていたのだろう。食べたいとは思わなかったけど食べなくて本当によかった。下手したらそのままあの世行きだったかもしれん。
他の冒険者も参戦してオークの数は順調に減っている。ノルンさんはまだオーク将軍と交戦中だけど戦況はけして悪くない。
このままいけば勝てるんじゃないだろうか?そう思った、瞬間だった。
目の前の世界が突然、消滅した。
「《ー全塵裂ノ覇風刃ー》」
あまりに暴力的な力がその場を襲った。風が吹き荒れ木々が倒れその場にいた冒険者たちを吹き飛ばし全てを薙ぎ倒していく。
大地すら抉れ嵐が通り過ぎたようなその場に二本足の何かが近付いてくる。
「人間風情二、手コズリオッテ……」
ドスンドスンと音を立てながらそれは現れた。
3mは軽く超えてしまえるような巨大な身体がその身体と同じだけの丈がある大剣を握りゆっくりと歩いてくる。
片目が潰れて傷になっているがそれが一層今まで戦場に身を置いていたことを想像させる。剥き出しの牙の間から漏れるフー、フーという息遣いがすぐ側で聞こえてきそうだった。
一歩一歩進むごとにその存在を肌で感じた。ああ、ダメだ。このモンスターはダメなんだ。
見たことはなかったけどわかってしまった。心と身体が絶望する。
あれはオーク王、オークという種族の頂点に立つ存在だ。
そういいながらノルンさんが両手に剣を構える。
安全後方配置、ポーション支援でクエスト貢献、って思っていたのに急に目の前が戦場になってしまったのであります。やはりとかいっているしノルンさんは後ろから敵が来ることを知っていたのだろうか。それなら教えておいてよ、全力で逃げたのに!
「オーク将軍が1体にオーク兵士が5体にオークが20体くらいですね。オーク将軍は私が相手をします。残りをよろしくお願いしますね」
「はい、え、俺ですか?」
「はい、オーク将軍を倒した手腕、期待してますよ」
ニコッと笑うとノルンさんはオーク将軍向かって走りだした。ええええっ?!よろしくって言われたって30体近いオークを俺ひとりで倒すだと?むりむりむり、1体目との交戦でひき肉にされる自信がありますよ!
だけどもそれを訴えようにもノルンさんはもう戦闘を始めちゃっているしオークたちは続々とこちらに向かって来ている。なんとかしなあかん。取り敢えず助けを呼ぼう。
「後ろからもオークが来ています!やばいです!結構来てます!ヘルプっ!ヘルプっ!」
俺の声を聞いて幾人かの冒険者が『なんだ?』といいながらこちらを向いた。その中で真っ先に駆けつけてくる人影があった。その姿に感動する。それは我が友、ミツバだった。
「まったく、世話がかかるのです。後ろにもオークが現れるのなんて……結構な数がいるのです」
「ミツバ!うん、オーク将軍もいて今ノルンさんが戦っているよ」
「1番強いところ請け負ってくれているのですね。後は雑魚の掃除をすればいいだけなのです」
ミツバが手を翳し魔法陣を構築する。空中に浮かび上がった魔法陣はやがて赤く光り始めた。
「行くのです。敵を燃やせ《-炎弾-》」
4つの火の玉が魔法陣から現れそれぞれがオークを焼く。一気に4体のオークが倒れた。
「おおっ、ミツバ凄い!」
「このくらい当然なのです。乱戦になったら味方に当たるかもしれないから魔法は使えなくなるので今のうちにできるだけ敵の数を減らさないといけないのです」
再びミツバが魔法陣を構築し始める。だけれども魔法を撃ったことでヘイトを稼いでしまったのかオーク達が一斉にこちらに向かってやって来た。
このままではミツバがヤバい。我が友ミツバを守るため俺もちょっと頑張るぞ!というわけで投げられそうなものを探すためコメット袋に手を突っ込む。
紫玉は効果が強すぎるし光玉、音玉はミツバも驚いてしまうかもしれない。なるべくオークだけに効果があるのは……うん、じゃあ黒玉を使おう。
黒玉はクラーケンを倒した時に手に入れたイカ墨とレインが作った料理(黒)を錬金して作ったものだ。
レインは一緒のパーティにいた人で凄腕の剣士だったんだけどそれがまな板の上でも発揮されてしまった。レインが料理すると食材が塵か消し炭になってしまう。そしてまな板が親の仇のように滅多刺しになる。
じゃあ味付けなら大丈夫なのかと思って任せると新たな物質(黒)を生成している。レインは料理してはいけない人間なのだろう。
そんなレインの作った料理をなんとか有効活用できないか考えて作ったのが黒玉だ。オーク達の足止めとして使うなら効果があるだろう。
「ミツバに近づくな!喰らえ、黒玉っ!」
魔法を構築しているミツバに襲いかかろうとしていたオークに向かって黒玉を投げる。見事顔面に当たった。
「ギャオォォーーッ!!」
「敵を燃やせ、《-炎弾-》!!」
その瞬間ミツバの魔法が発動し黒玉を受けて悶えていたオークを燃やした。おお、ナイス連携プレーですね。この調子でどんどん敵を倒していきましょう!
ミツバが魔法の準備をしている間にオークに向けて黒玉を投げていく。当たったオークは皆当たった場所を抑えて叫び声を上げている。オークの悲鳴が木霊する。中にはガンガンと頭を地面に打ち付けている者さえいる。
相変わらずの効果に思わず顔がひきつる。材料、イカ墨とレインの料理だけなんだけど、どうしてオークはあんなに苦しんでいるのだろうか。ひょっとして紫玉より効果でてない?
レインの料理、一体何に変わっていたのだろう。食べたいとは思わなかったけど食べなくて本当によかった。下手したらそのままあの世行きだったかもしれん。
他の冒険者も参戦してオークの数は順調に減っている。ノルンさんはまだオーク将軍と交戦中だけど戦況はけして悪くない。
このままいけば勝てるんじゃないだろうか?そう思った、瞬間だった。
目の前の世界が突然、消滅した。
「《ー全塵裂ノ覇風刃ー》」
あまりに暴力的な力がその場を襲った。風が吹き荒れ木々が倒れその場にいた冒険者たちを吹き飛ばし全てを薙ぎ倒していく。
大地すら抉れ嵐が通り過ぎたようなその場に二本足の何かが近付いてくる。
「人間風情二、手コズリオッテ……」
ドスンドスンと音を立てながらそれは現れた。
3mは軽く超えてしまえるような巨大な身体がその身体と同じだけの丈がある大剣を握りゆっくりと歩いてくる。
片目が潰れて傷になっているがそれが一層今まで戦場に身を置いていたことを想像させる。剥き出しの牙の間から漏れるフー、フーという息遣いがすぐ側で聞こえてきそうだった。
一歩一歩進むごとにその存在を肌で感じた。ああ、ダメだ。このモンスターはダメなんだ。
見たことはなかったけどわかってしまった。心と身体が絶望する。
あれはオーク王、オークという種族の頂点に立つ存在だ。
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