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第二部

チョコレート騒動

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「ニックぅーーッ!!このやろう!お前人のこと利用して金儲けするんじゃねえ!」


「おや、お帰りなさいシロムはん。これはまた随分な荷物で、よかったじゃないですか、大好物のチョコレートをそれだけ貰えて」


「チョコは好きだけれどこんなにはいらねえよ!バレンタインでもないのにチョコもらっても嬉しくないわ!」


机の上に白猫チョコぶちまけながら俺を叫ぶ。確かにバレンタインに大量のチョコレートを貰うのは俺の夢だが、野郎から貰っても意味がないんだよ!チョコレートは女の子からもらうから価値があるんです!


「バレンタイン?」

「俺の故郷であったイベントだよ。好きな子にチョコレート贈って告白するんだよ」


もっとも俺は貰う側じゃなくてあげる側だったけどね。同じくモテない男どもから『こうなったら白夢からでもかまわないから手作りチョコよこせー!』って感じで作らされる羽目になった。

おまけに『お兄ちゃんが作るならいいや。私の本命チョコも作ってね』と義理チョコを貰う機会すらなくなってしまった。妹は『みーんなみんな断られる中私のチョコだけ彼方くんに受け取ってもらえたよ。お兄ちゃんありがとう!』と大喜びだったけどね。俺は泣いた。


「ほう、それはええことを聞きました」

「ニックぅ!」

「まあまあ、それだけシロムはんを応援している人がいるってことじゃないですか。ファンが多いのはええことですわ」

「いやそもそもなんで俺にファンがいるんだよ。俺はアイドルじゃなくて冒険者なんだよ?いつのまにかそんな具像崇拝物になっちゃっているの?ニック、お前何かしたの?」

「あちきはなにもしてまへんよ?全てシロムはんの行いですわ。まあその容姿で冒険者なんてやってたら応援したいと思う人もおるやろうし、それに白猫団は今ルーキーで1番のパーティと言われてますから、そのリーダーであるシロムはんに憧れる人もいるでしょうねえ」


ニックの言葉に頭を抱える。チョコを貰うのはニックのせいでもチョコを渡す人がいるのは俺のせいらしい。女の子にキャーキャー言われるのならともかく男の野太い声に応援されても別に嬉しくないです。なんで俺アイドル化されてるの?勘弁してくれ。


「取り敢えずニック、白猫チョコの販売は禁止で」


「そんな殺生な!もう専門店と専属契約して店の手配も全部終わってますんや。ここで止められたら大赤字になりますわ!」


そんなもん知らんといってやりたいが思ったより白猫チョコの作成が大掛かりでギョッとする。え、俺たちがダンジョン内に潜っていたので3日間だけなんだよ?それでなんで仕入先と売り場の確保が出来ているんだよ。ニックの商売に対する熱意は本当尊敬するわ。その対象を俺にしなければなんの問題もなかったのに!


「えー、でも俺これ以上野郎からチョコもらいたくないんだけど」


「白猫チョコの販売に協力してくれるんでしたら売り上げの一部をシロムはんにあげますわ。シロムはんはチョコレートもお金も貰えるんですよ?こんないい話ありまへんわ」


気乗りしない俺にニックが交渉を持ちかけてくる。え、売り上げの一部をくれるの?つまりただチョコを貰うだけで金銭的な収入も得られるということですか?それはおいしいな。でも、野郎にチョコもらうのか、うーん。


「仕方ありまへんな。シロムはん、これはとっておきで手に入れるのにも苦労したんですけど、シロムはんがこの件を受けてくださるのでしたら差し上げますわ」


「なんだよ、そんなに勿体ぶって、その袋には何が入っているんだ?」


ニックが俺に小さな麻袋を差し出してくるので受け取るとさらにその中に小さな袋がたくさん入っていた。なんだろうと思いながらひとつ袋を取り出し開けて見るとスパイシーな香りが広がり何種類もの枯れた草や木の実が入っているのが見える。ま、まさか、これは…!


「香辛料を探していたんでっしゃろ?それだけあればかれえとやらも作れるんとちゃいますか?」


「ニックぅぅーっ!!ナイスだ!よく見つけてくれたよ!うおおおっ!これ本当にカレー作れるんじゃね?」


「喜んで貰えてなによりですわ。で、白猫チョコ作っても構いまへんか?」


「あ、うん、まあいいよ。でも俺協力はしないぞ?」


「ええ、構いまへんよ。シロムはんが自然体でいるのが大事なんやし」


そういってニックが意味ありげに笑う。なんかうまくニックに嵌められた気もするがまあお金貰えて香辛料もゲットできるんだからいいんじゃないかな?

取り敢えず俺はカレーを作るために台所へ駆け込んだ。
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