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第12話 探索者になりました

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「わーい、私のライセンスだー!」

 迷宮災害を鎮圧した後、私は地上付近でライセンスを受け取った。

 二級探索者免許。これがあれば、私もついに探索者として大手を振って中層を歩ける。

「苦労しましたから、大事に扱ってくださいね~?」

「はーい、分かってます!」

 喜ぶ私に声をかけたのは、探索者協会の職員だっていう照月歩実さん。テュテレールに頼まれて、私のライセンスを用意しておいてくれたみたい。

「ともあれ、私もこれでちゃんと自力でお金が稼げるよ! 配信の収益なんてすぐ追い抜いてやるんだから!」

 それに、今回の迷宮災害は今までにないくらい大漁だったからね。何なら、それを換金するだけであっさり越えちゃうかも。うへへ。

『今回の迷宮災害によって得られた素材を売却して得られる利益は、想定八百万円超だ』

「はっぴゃくまん!?  すごい、私達大金持ちだよ、テュテレール! もう一生働かなくていいかも!」

「いや、一生というにはさすがに安すぎるわよアリスちゃん!?」

 大喜びしてたら、茜お姉ちゃんに窘められちゃった。
 そっかぁ、これじゃあ足りないんだ。

『ちなみに、今月の配信収益は一千万円を越えるため、探索による利益が配信を上回るには、まだ時間がかかると考えられる』

「嘘ぉ!?」

 一千万円!? 配信だけで!?

『もっとも、これはアリスの寝顔配信が想定を越える再生回数を記録したことで得られた、一時的な金額である。来月以降は落ち着くだろう』

「だよね、流石にびっくりしちゃった……」

『ただし、探索者としての収益もまた、迷宮災害の終息と共に低下すると見られるため、探索者としての収益が配信の収益を越えることは、来月以降も困難と考えられる』

「むぐぐぐ……!」

 すごく真っ当な意見を口にするテュテレールに、私は頭を抱える。

 そんな私達に、お姉ちゃんが恐る恐る話しかけてきた。

「アリスちゃん、配信の方が稼いでると何か問題があるの?」

「テュテレールと約束したの、探索者としての稼ぎが配信を越えたら、配信はやめるって」

「なんで!? そんなに稼いでるのに!?」

「だって、恥ずかしいから……」

 お金は大事だけど、だからって知らない間に寝顔が配信されてた時の羞恥に代えてまで欲しいかって言われると、ちょっと悩む。

「羨ましい……!! 私もそれくらい人気配信者になって、いっぱい稼ぎたい……!! 余裕のある暮らしがしたい……!!」

「お、お姉ちゃん大丈夫……?」

 泣き崩れるお姉ちゃんに話を聞くと、どうやら相当お金に困っているらしい。

「アリスちゃん……引退するならせめて、その前に私に、人気配信者になるコツを伝授してください……」

「ど、土下座しなくてもいいから!」

 必死に懇願するお姉ちゃんに、私はどう答えたものかと困ってしまう。

 そもそも、私は知らないうちに勝手に配信されてただけで、コツとかよく分からないんだけど!

『ならば、アリスとパーティを組み、共に配信を行うことを提案する』

「パーティ?」

 テュテレールからの思わぬ提案に、私もお姉ちゃんも目を瞬かせる。

 探索者達は、一人でダンジョンに挑むわけじゃない。その多くは複数人で集まってパーティを結成し、協力して攻略に当たるみたい。

『アリスと共に行動すれば、アリスが配信で人気になった秘訣を学ぶことが出来るだろう。そしてアリスもまた、西城茜と共に行動することで、探索者としてのノウハウを学ぶことが出来る』

「なるほど!」

 私は探索者になって自立しようと思ってるけど、よく考えてみれば、探索者が普段どうやって活動しているのか、細かいことはよく知らなかった。

 実際に特級探索者として活動してるお姉ちゃんから教われるなら、私としても大助かりだ。

「えっ、いいの? 私、あなた達ほど強くないんだけど……」

「私よりずっと強いから大丈夫! 私からもどうかよろしくお願いします、お姉ちゃん!」

「そ、そこまで言うのなら……」

「やったー!」

 お姉ちゃんが了承してくれたことに、私は喜びの声を上げる。

 ふふふ、お姉ちゃんが師匠になってくれたし、これでまた一歩、立派な探索者に近付いたよ!

『西城茜の配信とコラボすることで、これまでリーチ出来なかった視聴者にまでアリスの魅力を伝えることが出来る。そして、特級探索者としての西城茜の技術は、アリスの生存に大きく貢献するだろう。……照月歩実、パーティ申請を頼む』

「は~い、分かりましたよ~っと……けど、ダンジョン孤児と巨額の借金を背負う女子高生のパーティですか……前途多難ですねぇ~」

『アリスが今以上に有名になれば、何も問題はない。いずれ相応しい居場所も見つかるだろう。……あるいは、すぐにでも。ところで、アリスの服はあるだろうか? 今着ているものは修復しながらでもそろそろ限界だ』

「それはもちろん用意してきましたよ~。丈夫さと可愛さを両立する、探索者に好まれる最新のやつです~」

『なかなかだな。しかし、値段が張るのではないか?』

「大丈夫ですよ~、気にしなくて。代わりに……表に出してないアリスちゃんの写真とかあったら、是非とも……」

『……仕方ない、今回だけだぞ』

 後ろの方で、テュテレールと照月さんが何か話してるみたいだけど、何を話してるのかまではよく聞こえない。

 うーん、まあテュテレールに限って変なことを企んでたりはしないだろうし、別にいいかな。

「それじゃあお姉ちゃん、せっかくだから私の家に来ない? 一緒にご飯食べよう!」

「わ、分かった、分かったから引っ張らないでって、全く……」

 仕方ないな、って感じに肩を竦めるお姉ちゃんの手を引っ張って、私はダンジョンの中……セーフハウスへと向かって走り出した。
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