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第8話 災害対策

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「テュテレール、どうかした? どこか痛い?」

『いや、問題ない。機能正常』

 現在、私はセーフハウスでテュテレールをベッドに寝かせ、修理している真っ最中。途中でちょっと反応が鈍くなっていたことに、こてんと首を傾げていた。

 どこか悪いところを見落としたのかな? 心配だし、もう一度フルメンテしよう。

“しかしこの絵面、自分が解体されてるみたいでちょっと落ち着かないなw”
“だがそれも解体してるのがアリスちゃんだと思うとこれはこれで”
“ご褒美です”
“通報した”

 ……配信は、テュテレールの目で見たものがそのまま地上に放送されてる。

 だから、まるで自分が解体されてるみたい、って感想は分かるんだけど、それがご褒美ってどういうこと?

『……不健全な書き込みを検知、削除する』

「あっ」

 意図を聞き出す前に、コメントがなくなっちゃった。
 どうしよう、余計に気になる。

「ねえ、今一瞬だけ見えたご褒美ってどういう意味?」

『アリスが知る必要はないと判断する』

“アリスちゃんにはまだ早いね”
“うんうん”

「むぅ~」

 また私だけ除け者にして! 私、そんなに子供じゃないもん!

「いいもん、そんな意地悪するなら、テュテレールに合体機能つけちゃうんだから」

『待て、アリス。落ち着いて話し合おう』

「待たないも~ん、それに、テュテレールだって強くなるし、良いこと尽くめでしょ?」

『自律行動可能なロボットを、わざわざ一個体に集結させるのは非効率。戦闘中の合体は大きな隙を晒すことにも繋がり、戦闘中以外での合体は追加兵装で十分である』

「非効率でもテュテレールが強くなるなら十分だよ。それに、色々理由を付けてるけど、本当はみんなの前で合体とかするの恥ずかしいと思ってるんでしょ!」

『…………』

 テュテレール的には、外装フレームがロボットにとっての服で、内装を剥き出しにするのは裸になるのに近い感覚みたい。

 そして、合体しようと思ったら、やり方にもよるけど確実に内装の一部は剥き出しになるからね。敵の前で裸になるのは嫌! みたいな感じなんじゃないかな。

“えっ、テュテレールにも恥ずかしいとかあるんだ”
“なにそれ可愛くない?”
“アリスちゃんだけでなくテュテレールも可愛いじゃったか”

『私はロボットだ、そのような感情はない』

「じゃあ、合体機能あっても大丈夫だよね?」

『…………』

「ふふふ、大丈夫、ちゃんと恥ずかしくないようにやるから」

 そんなことを言いながら、私はテュテレールの調整を続ける。

 即席の武器ならパパッと作って終わりでもいいけど、テュテレールは大切な家族だ。ちゃんと時間をかけて、丁寧に作業を進める。

“しかし、もうじき迷宮災害が起きるって言われてるのにここは平和だな……”
“アリスちゃん、避難しなくて大丈夫なの?”

「避難? しないよ。だって迷宮災害って、普段は深層に引きこもってるモンスターの素材を集める絶好の機会だもん」

 私の言葉に、みんな一斉に“えっ”と呟く。
 どうしたんだろう、私変なこと言ったかな?

「深層のモンスターが強いのは、上層、中層、下層って戦い抜けた上で、更に罠だらけ敵だらけの深層に攻め込まなきゃいけないからだよ。向こうから攻めてくるなら、いくら数が多くてもやりようはあるの」

 モンスターにとって、このダンジョンは自分達の家で、身を守る盾なのかもしれないけど……災害の時は、モンスター達自らその優位を捨ててくれる。

 だから、普段と違ってこっちが罠を張って待ち構えればいい。

「今回の災害ではどんな素材が集まるかな~、楽しみだね、テュテレール」

『油断は禁物だ、アリス。我々は常に万全の準備で挑まなければならない』

「分かってるよ。深層に繋がる道に色々と仕掛けはしておいたから、準備の方は大丈夫だし、油断もしてないよ。だけど、深層の素材を使って武器を作れば、私も自力で戦えるようになるかもしれないでしょ? わくわくしちゃって」

 ポワンっていう護衛も作ったけど、やっぱり私自身が戦ってモンスターを倒せるようにならないと、テュテレールは中層で探索者をするのを認めてくれないだろうからね。

 そのためだけに、テュテレールに素材を集めて貰うのは気が引けたけど……災害の中でなら私も罠を作って貢献出来るから、自分用の武器に使う素材を確保するにはちょうど良い。

「えへへ、楽しみだな~」

“俺、迷宮災害を楽しみだなんて言う子初めて見た”
“奇遇だな、俺もだ”
“いやまあ、武闘派な配信者ならいないことはない、かな?”
“ちなみに、テュテレール君的には勝算どれくらいなの?”

『私が単独で迷宮災害に対処する場合、勝率は六十七パーセント。だが……』

 視聴者のみんなからの質問に、テュテレールは律儀に答える。

 そして──メンテナンスを終えたテュテレールはベッドから起き上がり、先の答えに付け足すように堂々と断言した。

『アリスの支援があれば、百パーセントだ』
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