魔王の嫁入り

やすいち

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「な、お前・・!!」

レイルは体温が低い。そのせいだろうか、「触られている」というのを意識したくなくても感じさせられていた。手つきが、いやらしい。こういうことをしているのだからいやらしくもなるかもしれないが、正直レイルの手はそうでなくてもいやらしいと想う。頬を撫でられていた時だって、あんなに背筋が反応する程にはいやらしかったのだから。
心に背いて、体は段々とその手の動きに従順に反応し、興奮して来ている。触られ始めた時からこれはいけない、と想っていたのだがやはり、割と性欲に素直な自分の体の中心は、ビン、と立上がりつつある。

「レイル、と、とりあえず落ち着いてくれないかな!まだ嫁入りしてないんだし、婚前交渉なんてのは、!」
「しますよ。事実作らないと、貴方いつまで経ってもまごまごしそうですし」
「いや、だからって無理矢理っていうのは、んっ」

それまで臍の下の辺りを撫でていた大きな掌が動いて、とうとう反り返っているそれの先っぽに直に触れられる。
先程のようにきゅ、とそこだけつままれるとビクンと意志に背いて腰がはねた。

「ぁ、ンッ」
「濡れてますね。敏感なんですか?」

耳元でレイルの声がする。
鼓膜を揺らす低い声は、そのまま脳まで響いて来てたまらない気持ちに陥れて来る。今、完全に主導権を握られていて、完全に支配されそうになっている。いつものように女性が相手なら、俺はそれを快くは想わない。いじめられるのや支配されるのが好きな方ではないから、行為中は主導権を握りたい方だ。
けれど、レイル相手はそうはいかないし、何故だかそれでいいと想っている自分さえいる。

「レイル、ぁ、」
「ここですか?」
「あッ、んんっ」

くにくにと亀頭にある小さな穴、先端にあるそれを指で押しつぶされゆっくりと動かされる。ピクピクと腰が浮き、足まで震え始めてきた。

「声、案外出す人なんですね」
「へッ・・!?」

緩んだ唇からだらしない声が漏れているのは自覚できていたが、それでも自制できるほどではなかった。

「ご、ごめ、」
「何故謝るんです。私は貴方の嫁なんですよ?貴方が満足していると解るくらいいやらしい声が聞けて、嬉しくない筈無いでしょう」
「でも、男なわけだし、き、気持ち悪い、だろ」

動きを止めない手は、段々と亀頭からズレ、今度は裏筋をゆっくりと、撫で上げ始める。

「声、もっと出して良いんですよ?」
「あ、えっ・・!?」

少し強く、次は弱く。撫でる手は俺がイかないように、または感じすぎないようにとでもするみたいにもどかしい刺激を与えて来る。こんな焦らされ方も知らない俺の体は、素直にそれに焦らされるしか無く、腰をずらしたり足を動かして、何とかその快感から逃げるか、それかもっと強く感じようともがくかと試行錯誤してしまう程だ。

「レイル」
「ユウゼン、見えますか?貴方の、反り返って辛そうですね」

グイ、と袴を下に下げられ見せつけられたのは自分のもの。興奮し切って血管を浮き出たせ、臍の方へ反り返ってしまっている。

「ぁ、」

恥ずかしい。レイルに見られていることが死ぬ程恥ずかしいけれど、それ以上にこれを何とかしてほしいとせがみそうになっている自分がいた。

「ユウゼン」
「ん、ぁ、」

ちゅ、と軽い口づけをされて、その後に今度は深い口づけをされる。ああ、頭がクラクラするほどだ。
また、吸い取られて行く様なあの感覚がする。冷たい唇と真っ白な視界。

(やっぱり、見た事がある・・・触れた事も、ある筈だ)

懐かしい。嬉しい。もっと、感じていたい。
消えそうな記憶に火が灯って行く。長く暗闇にいたせいで、まだぼんやりとしか見えないけれど。確実に、レイルが現れたから、記憶が戻って来ようとしている。

(思い出していいのか・・・?)

何がいやでこの世界に来たのだったか。
何を思い出したくなくて逃げて来たのだったか。



『この悪魔め』



「ッ・・!!」

あの目、あの声。
焼ける様な痛みの記憶。
そうだ、レイルの事を思い出したいなら、その他全ての記憶も思い出さなければならない。

その他全ての、痛みの記憶。

「ッぁ、」

事切れる寸前まで与えられ続けた苦痛。

「あ"ッ・・!!」

それら全てを思い出しても、
この世界で壊れずに生きていられるだろうか・・・?

「ユウゼン?」


『この悪魔め』


「ッッッ、!!!」


「ユウゼン、入りますよ!!!」


「っ、え!?」


バンッ!!

と勢い良く開かれる扉。
視界いっぱいのレイルは俺から唇を放していて、部屋の出入り口のある方へ視線を向けている。

いや、まさか。

と恐る恐る声のした方へ俺も視線を廻らせると、そこにはドアを開け放ったまま心底汚いものを見る目でこちらを凝視しているキンレイがいた。

「あ・・・あらら!?」
「あららではありません。仕事すっぽかしてなにしてらっしゃるんです、国王代理」
「あ~~・・・」

ベッドの上に二人。俺に伸し掛かっているレイルと、袴を解かれて局部露なままやりたい放題にされている俺の姿。
ナニを致そうとしていたかはバレているだろうが、そこに堂々乗り込んで来て引こうともしてないのは流石だ。

「れ、レイル!!とりあえず後でゆっくり話し合おう!!な!話し合うだけだからな!じゃあ俺は仕事があるから!」

ババッとレイルを上から退かし、袴を引き上げて帯を締め直す。
幸いな事に、キンレイにいつもひっついているセンリは今はおらず、それに加えてお付きの者達も連れていない。彼らに見られなくて本当に良かったと心底想った。
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