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痴漢対策にボディーガード
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はああああ~・・・
うわ・・我ながらすごいため息。
とにかく今日一日中ため息ついてた気がする。
ガチャン
あ、車が一台帰って来た。お兄ちゃんか。
ドタドタと足音が階段を上がってくる。チャリチャリと鍵の音をさせながらがさつにドアを開け、暢気な鼻歌まで・・
ああ、うるさいっ
「ちょっと、もう少し静かに歩いてよ!」
「ああメンゴォ」
ったく、この脳天気な感じが今日は妙に癪に触った。つい聞こえよがしに舌打ちし、睨みつけてやった。
「ん、何だよご機嫌スラッシュだな」
ああ腹立つ!もう喋るな!
「あ、すまんすまん、アレか?」
「何よ!」
「女の子の日ってヤツだろ?」
「黙って!」
ナーバスな時には絶対会話しちゃいけない相手かも知れない。
私は思い切りドアを閉めてやった。
お兄ちゃんは二つ歳上。
N大はこの地方ではそこそこの大学だけど、割とチャラい雰囲気。ウチのお兄ちゃんもナンパなキャンパスライフを楽しんでる。
あのカッコからすると、今日も学校じゃなくてバイトから帰って来たみたい。
マジでホントにちゃんと学校行ってんの?
壁の向こうでは何やら話し声が。
スマホで誰かと電話してるみたい。
どうせまた女の子でしょ。
お兄ちゃんはなぜか昔から女の子にモテる。まぁ確かに見た目は悪くない。中学時代の私の同級生は、お兄ちゃんを紹介すると必ずカッコいいって言う。
本人もそれを分かっていて、すぐに調子に乗るから、もう友達にはあんまり会わせないことにした。
そんな風だから、お兄ちゃんの周りには可愛いかどうかは別にして、たいてい女の子がいる。取り立てて目立つほどのイケメンとは思わないし、カースト上位のキャラでもない。でもそうなの。
一体何がいいんだろ・・
あああ、そんなことより・・
またため息。
「おぉい、美希」
「なに?」
「耳かき持ってない?」
耳をホジホジしなからお兄ちゃんがドアの縁に立ってる。
「ヤダよ。人に耳かき貸すの。」
「お前ね、悲しいこと言うんじゃないよ。いいだろ?赤の他人じゃない、家族なんだから。」
「ダメ、颯太菌がうつるから。」
お兄ちゃんはチッと舌打ちして階段を降りてった。
そして少ししてから耳かきしながらまたドアにすがって私を見てる。
「何?」
「なんかあったか?」
「何もないよ。」
「ふうん・・」
一体なんなのよ!
「お、大物がとれた!」
それ・・耳垢のことらしい。
「きしょ!やめてよ、そこらに落とさないでよ?」
「見て見て、すごいよコレ!」
「んんもぉ、アッチ行って!バカ!」
怒れば怒るほど面白いらしい。イッヒッヒと、下衆な笑いで私の神経を逆撫でする。イライラして机をバンと叩いた。
「おいおい美希ちゃあん、どうしたの。マジで今日は変だぞ?」
まぁ確かに・・ちょっと尖り過ぎてるかも・・
「痴漢?」
お兄ちゃんは目を丸くして私を眺めた。
「物好きもいるもんだな。へぇ~」
「真面目に聞いてくれないならいいよ」
「あ、ああゴメンゴメン。で、いつ?今日?」
お兄ちゃんはいつのまにか私のベッドに座り、腕を組んで眉間に皺を寄せた。その大げさなリアクション、ギャグなのか真面目なのか分かんないよ。
「で?明日も電車に乗らなきゃならないし?痴漢に遭うんじゃないかと?」
「いや、大丈夫とは思うけど、やっぱ怖くてね。」
「車で送ってやろうか。同じ方面だし。」
「それはいいよ。友達に見られたくないし。」
そんなの見られたら、どんな噂が立つかわかったもんじゃない。面倒くさいのは嫌。
「お兄ちゃんさ、ちゃんと学校行ってる?」
「へ?・・何で?」
「なんかバイトばっかしてるってお母さん嘆いてたよ?」
「行ってる行ってる。バカ言うんじゃないよ。」
「へぇ、だけど、最近電車で行かないんだね?どうして?」
「そりゃお前、時間が自由になるからだよ。」
「定期もったいない。」
「ああ、まあ・・って、関係ないだろ?今お前の痴漢の話してんじゃないのか?」
私には、突然妙案が浮かんだの。
「嫌だよぉ」
「可愛い妹が痴漢の毒牙にかかるかも知れないんだよ?見て見ぬフリするの?」
「いや、見てねえし。」
「いや、そうじゃなくて、知ってしまった以上、放って置けないでしょう?」
お兄ちゃん冷めた目で見てる。放っておけるって目だ。
「マジで・・ちょっとお願いできないかなぁ。」
「いやマジで・・んん~、お前の電車で行くなら早起きしなきゃいけないしゃん・・え~・・ん~・・」
「じゃお母さんに相談するよ。」
お兄ちゃんはチッと舌打ちした。お母さんに相談したら、絶対一緒に行ってやれ、って言われる。それに、電車ならお兄ちゃん絶対学校行くでしょ。車なんか乗って行くから寄り道ばっかしてるってお母さんボヤいてた。
お兄ちゃんは頭を掻き掻き、ホントに気が進まないようで、何度もため息をついてた。
「はあ~・・痴漢対策のボディーガードか・・面倒くさいなぁ・・」
「頼むよぉ~・・」
「見返りは?」
見返り?そんなもん・・
「そのうち・・そのうち、考えとくよ。」
「絶対だぞ?」
「う、うん」
うわ・・我ながらすごいため息。
とにかく今日一日中ため息ついてた気がする。
ガチャン
あ、車が一台帰って来た。お兄ちゃんか。
ドタドタと足音が階段を上がってくる。チャリチャリと鍵の音をさせながらがさつにドアを開け、暢気な鼻歌まで・・
ああ、うるさいっ
「ちょっと、もう少し静かに歩いてよ!」
「ああメンゴォ」
ったく、この脳天気な感じが今日は妙に癪に触った。つい聞こえよがしに舌打ちし、睨みつけてやった。
「ん、何だよご機嫌スラッシュだな」
ああ腹立つ!もう喋るな!
「あ、すまんすまん、アレか?」
「何よ!」
「女の子の日ってヤツだろ?」
「黙って!」
ナーバスな時には絶対会話しちゃいけない相手かも知れない。
私は思い切りドアを閉めてやった。
お兄ちゃんは二つ歳上。
N大はこの地方ではそこそこの大学だけど、割とチャラい雰囲気。ウチのお兄ちゃんもナンパなキャンパスライフを楽しんでる。
あのカッコからすると、今日も学校じゃなくてバイトから帰って来たみたい。
マジでホントにちゃんと学校行ってんの?
壁の向こうでは何やら話し声が。
スマホで誰かと電話してるみたい。
どうせまた女の子でしょ。
お兄ちゃんはなぜか昔から女の子にモテる。まぁ確かに見た目は悪くない。中学時代の私の同級生は、お兄ちゃんを紹介すると必ずカッコいいって言う。
本人もそれを分かっていて、すぐに調子に乗るから、もう友達にはあんまり会わせないことにした。
そんな風だから、お兄ちゃんの周りには可愛いかどうかは別にして、たいてい女の子がいる。取り立てて目立つほどのイケメンとは思わないし、カースト上位のキャラでもない。でもそうなの。
一体何がいいんだろ・・
あああ、そんなことより・・
またため息。
「おぉい、美希」
「なに?」
「耳かき持ってない?」
耳をホジホジしなからお兄ちゃんがドアの縁に立ってる。
「ヤダよ。人に耳かき貸すの。」
「お前ね、悲しいこと言うんじゃないよ。いいだろ?赤の他人じゃない、家族なんだから。」
「ダメ、颯太菌がうつるから。」
お兄ちゃんはチッと舌打ちして階段を降りてった。
そして少ししてから耳かきしながらまたドアにすがって私を見てる。
「何?」
「なんかあったか?」
「何もないよ。」
「ふうん・・」
一体なんなのよ!
「お、大物がとれた!」
それ・・耳垢のことらしい。
「きしょ!やめてよ、そこらに落とさないでよ?」
「見て見て、すごいよコレ!」
「んんもぉ、アッチ行って!バカ!」
怒れば怒るほど面白いらしい。イッヒッヒと、下衆な笑いで私の神経を逆撫でする。イライラして机をバンと叩いた。
「おいおい美希ちゃあん、どうしたの。マジで今日は変だぞ?」
まぁ確かに・・ちょっと尖り過ぎてるかも・・
「痴漢?」
お兄ちゃんは目を丸くして私を眺めた。
「物好きもいるもんだな。へぇ~」
「真面目に聞いてくれないならいいよ」
「あ、ああゴメンゴメン。で、いつ?今日?」
お兄ちゃんはいつのまにか私のベッドに座り、腕を組んで眉間に皺を寄せた。その大げさなリアクション、ギャグなのか真面目なのか分かんないよ。
「で?明日も電車に乗らなきゃならないし?痴漢に遭うんじゃないかと?」
「いや、大丈夫とは思うけど、やっぱ怖くてね。」
「車で送ってやろうか。同じ方面だし。」
「それはいいよ。友達に見られたくないし。」
そんなの見られたら、どんな噂が立つかわかったもんじゃない。面倒くさいのは嫌。
「お兄ちゃんさ、ちゃんと学校行ってる?」
「へ?・・何で?」
「なんかバイトばっかしてるってお母さん嘆いてたよ?」
「行ってる行ってる。バカ言うんじゃないよ。」
「へぇ、だけど、最近電車で行かないんだね?どうして?」
「そりゃお前、時間が自由になるからだよ。」
「定期もったいない。」
「ああ、まあ・・って、関係ないだろ?今お前の痴漢の話してんじゃないのか?」
私には、突然妙案が浮かんだの。
「嫌だよぉ」
「可愛い妹が痴漢の毒牙にかかるかも知れないんだよ?見て見ぬフリするの?」
「いや、見てねえし。」
「いや、そうじゃなくて、知ってしまった以上、放って置けないでしょう?」
お兄ちゃん冷めた目で見てる。放っておけるって目だ。
「マジで・・ちょっとお願いできないかなぁ。」
「いやマジで・・んん~、お前の電車で行くなら早起きしなきゃいけないしゃん・・え~・・ん~・・」
「じゃお母さんに相談するよ。」
お兄ちゃんはチッと舌打ちした。お母さんに相談したら、絶対一緒に行ってやれ、って言われる。それに、電車ならお兄ちゃん絶対学校行くでしょ。車なんか乗って行くから寄り道ばっかしてるってお母さんボヤいてた。
お兄ちゃんは頭を掻き掻き、ホントに気が進まないようで、何度もため息をついてた。
「はあ~・・痴漢対策のボディーガードか・・面倒くさいなぁ・・」
「頼むよぉ~・・」
「見返りは?」
見返り?そんなもん・・
「そのうち・・そのうち、考えとくよ。」
「絶対だぞ?」
「う、うん」
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