バージョンアップLOVE

ザクロ

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幼馴染との再会

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幼馴染の彼と偶然再会したのは去年の12月。

その晩は、人気のバルでサークルの忘年会をする事になっていた。

少し早目に到着した私は、お店の前に立って仲間が来るのを待っていた。

その時ふと横を見ると、ほんの二メートルほど先に、私と同じように時計を見る人がいる。

彼はコートの襟を立て、寒そうに首を縮めては白く吐く息で両手を温めていた。
 
師走の街に行き交う車のライト。いくつもの眩しい逆光の中に、彼の横顔があった。

二度見したのは、その横顔に見過ごせない記憶をくすぐられたからだ。

どこか遠くを見つめるような表情、涼しげで少しだけ重く深い眼差し・・

人の視線というのは不思議なものだ。彼は恐らくなんらかのスピリチュアルな感覚で、自分を見つめる私の気配を悟ったのだと思う。

二メートルも離れた赤の他人。

でも、視線が合った直後、相手の目が自分とまったく同じように記憶を蘇らせていることが手に取るように分かった。


「杏里?・・山城・・山城杏里?」


私を指差しながら、彼は目を見開いた。
私の頰も急激に緩んだ。


彼は矢野弘樹。

保育園から中学二年生まで、同じ町内に住んでいた。

弘樹の家は父子家庭で、彼は母親と言うものを知らない。

彼が家によく遊びにきたのは、ウチの母が境遇に同情して、小さな頃から度々話しかけていたからだ。

「オレ、今F大の学生なんだよ。」

「F大?私T女子大よ?」

割と近くにある地元では大手の二大学だ。
他の大学と比べて交流も密で、例えば学生コンパの相手としては、恰好の組み合わせになる。

「オレはバイト先の忘年会で来たんだけど、そっちは?今日はまたどうして?」

「サークルの忘年会。」

「サークル、何やってんの?」

私は少し口ごもりつつ言った。

「手芸サークル・・」

「手芸?あの山城杏里が?」

頓狂な声は覚悟の上。

「そう言われると思ったわよぉ」

私は子供の頃はかなりのお転婆で、弘樹を連れ回しては裏山や立ち入り禁止の貯水場を探検した。

そう言えばよくケンカもした。たいていは私の方が強くて、泣かした事も度々ある。

話したいことは山ほどあった。

ほどなく二人とも仲間と合流して宴会が始まったが、私達はその間に抜け出して連絡先を交換し、再会を約束した。


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