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ひょっとして旦那さんってすごい人ですか?

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 一眠りして自然に目が覚めた。
 明るかった世界は既に月明かりが支配する夜の世界。
 紗のカーテンは閉ざされたものの月明かりが忍びこんでいた。
 一瞬時間が分らず、だけど隣にはクラエスはいない。
 とりあえずスマホを取り出せば普段ならとっくに帰って来てる時間。
 いつも返って来てから一緒にご飯を取っていたのでそのつもりで侍女に起こしてと言ってたから起こしに来なかったのだろうと一人納得。自然な目覚めはすっきりした目覚めを促してくれて、体を起こして隣の共有部屋へと移動する。当然ながら寒い位に部屋は冷えていて、灯もなく……
 とりあえず寝癖と涎の付いた顔を何とかして皺が付いた服を気軽な部屋着に着替えた。気軽な部屋着とは言ってもふんだんにフリルの付いたシャツ、ピンとラインの入ったスラックスだ。
 ジャージ?なにそれ?
 ゴム?未だ出会った事ないよ?
 因みに短パンとかあれは下着の部類に入れられるのでその恰好でうろつくとかなり真剣に怒られた。
 異文化理解、難しい……
 とりあえず俺のパンツは元の世界で使っていた物だからと愛用している。
 最初はあまりの少ない布面積に驚かれたが、女性の刃半分以下だと知ったらどれだけ驚かれるだろうか。
 とは言えこちらの文化の事情も理解できる。
 要は裏地代わりの下着だ。まだ体験した事ないけど冬場は寒いらしいし、夏場は生地が薄いのでどうしても透けてしまう、そのすべての対策をしているからと聞けば納得だ。
 とりあえず着替えてベルを鳴らす。直ぐに迎えがやって来た。
 こういう時貴族って不便だよな。
 いくら自分の家とは言え一人で部屋に出るのも窘められるしと、その為にハウゼンさんを雇ってもらったのだから活用しなくてはと思うも休みとは言えハウゼンさんの住処がこの邸の敷地内のあるのなら既に通常業務と言う俺のお世話に戻って来てるかもしれないと一瞬思って、それはないな、どんなブラックだよと思うもノックの後に現れた隙のない佇まいのハウゼンさんに少し俺自重しようと反省した。
 まあ、そこは軽く笑顔でごまかし

「クラエスはまだ帰ってないの?」

 お腹すいたけど先お茶貰えるかなと言う言葉を続ければ食堂の方に向かいましょうと案内される。その途中で

「旦那様はまだご帰宅になっておられません。
 城からも本日は少し遅くなると言う手紙が届いております。ただ奥様がお休みだったのでご連絡が遅くなって申し訳ありません」
「珍しいね」
「はい、私がこちらのお邸でお世話になってから初めてかと思います」

 確かにと頷きながら食堂に向かう途中通らなくてはいけないホールが見える廊下へと差し掛かればガチャリと玄関が開いた。
 そこには王弟殿下とノルドシュトルム国魔法師団長エリエル・エルステラに支えられたクラエスが居た。

「なっ、クラエス!」

 思わず叫んでしまえばクラエスは二人が支える手を押し返して両手を広げて俺を抱きしめた。

「アトリただいま。遅くなって心配させたね」
「心配させたねって、服に血が、怪我をしてるの?服も破れたって言うより切れているし……」

 不安にその場所に手を添えれば

「それぐらいはポーションですぐ直る程度だ」

 そんなもふを頭に乗せた王弟殿下の心配するなと言う声は何所までもイケてない。

「こいつは王都に侵入した魔族を見事退けた強者だ。
 我々の不手際で仕留めそこなってしまったが、かなりの怪我を負わせた。
 まだまだ警戒は出来ないが魔族と対等に戦うクラエスを誉めたまえ」

 一瞬思いだしたあの夜の支配者のような男の怪我の理由がクラエスだなんて、と言うか魔王と言う存在に剣で追い詰めるってかなり

「クラエスって強いんだ」
「ああ、こう見えても国の騎士団の長を務めるぐらいには腕には自信があるぞ」
 
 にこりと、王宮の淑女ならイチコロの笑顔を見せるもだいぶ血を失ったのだろう。いつもより顔色の悪い様子に手を差し伸ばして受け入れる。
 すんなり、そんな感じに俺の腕の中に身体を預け、疲れたと言って首筋に顔を埋める。

「アトリが無事でよかった」

 こんな姿になってまで俺の為に戦ってくれたのに、事情を知らなかったとはいえ魔王の傷をすっかりと癒してしまった俺はまともにその言葉を受け入れる事が出来なく、ただ抱きしめてクラエスの無事に感謝をするのだった。





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