異世界召喚に巻きこまれたらスマホがバグって騎士団団長の妻になるそうです

雪那 由多

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何かビジュアル系の人がやってきました。

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 本日は街にお買い物に繰り出しております。
 ハウゼンさんはお休みの日でセリムはクラエスが仕事に必要だからと城へと連れて行って久しぶりの一人、フリーダムでっす!
 もっとも俺が一人で買い物に行くのはこの様に……
 さわっ、さわっ、はぁ、はぁ……
 少し込み合った通りで変態に密着されて尻を触りほうだいと言う痴漢と遭遇する事100%なので逃げる様に手近な店に逃げ込む事を繰り返すミッションが待ち構えていました。
 まあ、判ってたけどね。
 どんな触られ方なら腹を立てずに済むかなんてわけのわからん余裕すら生まれて来たけど……楽しくないのでその余裕を逃げ込む店を選別する方へと集中する事にしました。
 なんせ一度ヤリ部屋がある菓子屋で大変な思いしたからね。
 まさかご休憩何て概念のあるお食事処があるなんて想定外だったからね。
 とりあえずBLルート爆心中ならどんなトラップがあるか要注意だけど、それを恐れていたら引きこもりになってしまうのはお断りだ。
 折角見知らぬファンタジーな世界に来たのだ。それなりに満喫したい物だし、この身体は痴漢にあってもレイプされても全くめげないメンタル仕様になっていたのだ。
 開き直ったと言ってくれ。 
 どうあがいても抜け出せない運命ならそうなるしかないじゃないかと意外とポジティブな自分を誉めてあげたい。
 そして分かった事だが痴漢に遭うには遭うのだがそれは不特定多数のモブで、ガッツリ突っ込んでくるヤローこそ要注意。
 いわゆる攻略対象なのだ。
 ふっ、ゲーマーではないけどある程度ゲームの質を考えれば気を配る場所は想像が着く。よくある名前のあるキャラはモブじゃないとか。
 物語のモブとその世界ん入り込んでのモブの見分け方難しいから。こちらの世界になれば皆さん名前あるから見分け方難しいんだよ。
 と言いつつも俺のチートを使えば問題解決。
 視界の端でどんどん登録されていく人物図鑑の中に何故か星マークがついた人物があった。
 クラエスとセリエは勿論アレックスを始めとした一族の方達、そしてヤリ逃げして生まれた子供そのたもろもろ。これが攻略対象と言う分けか。攻略何てしたくないけど勝手に攻略して行くこのクソゲーほんとクソ。泣きたくなる。
 とは言えそれさえ注意すれば尻や股を触られるぐらいのハプニングでそれなりに満喫できる。
 開き直った俺の実力を思い知れと、クラエスのプレゼントと本と茶葉を買い、かなり高級そうなモブが簡単に入って来れなさそうな喫茶店に入った。
 個室で薄い紗のかけられた中庭を望む居心地のいい部屋で買ったばかりの本を読んでいた。シチュエーションとしては何かありそうな場所だけど、前回も来た時には何も起こらなかったので安心して足を運んできた。
 紅茶の種類なんて判らないけど渋くもなく驚くほど香も高く、そして焼きたてのレモンカスカードパイを楽しみながら一時の時間を過ごす。その間護衛に付いて来てくれた人達も休憩と言う事で別行動。
 護衛にならないんじゃない?
 いやいや、この世界こう言った高級店には必ず店の出入り口すべてに護衛がいるのですよ。ごろつきとかではなく騎士のような身なりなのでそこそこ店の顔として変な者を雇ってはないそうだ。クラエス曰く元騎士ぐらいじゃないと雇ってもらえないから安心してああいう護衛がいる店を選ぶと良いと教えてくれた。
 まあ、いきなりつっこんできた店もあるくらいだから警戒はしてしまうけど、そういやあの菓子屋と宰相と入った昼めし屋には護衛いなかったなと、それが目印か?!と半信半疑でこの店を選んでみたらどうやら正解のようで……
 せめてご飯位安心させて食べさせてくださいと言う様にかなりお高いけど護衛の居る店を選ぶようにしている。
 紅茶を飲み終えてポットから新しい紅茶を注ぐ。
 暖かなレモンカスカードパイからスコーンへと変り、たっぷりジャムを付けて頂く。
 家でもいただけるが、こう言う所で気兼ねなしに頂くのは何て贅沢だろうと俺は社畜ではないはずだと思っている社会人時代を思えば定年を迎えたおっさん化と言うような生活を満喫させてくれるクラエスにはほんと感謝だ。
 最も毎度街に出掛けて使った費用の内容にハウゼンさんに叱られてしまうけど。
 ほら、俺が出かけて一番の高額な買い物は使用人のお土産だから。もうちょっと散々してくださいと訳の分からない事を言われて困惑する一番の理由はこれでも貴族と言う身分だからだろう。なので思い切って毎度有名店の宝石商に足を運び、クラエスとお揃いのカフスなどを買い揃えて行く。おかげでマニアかと思われるようになり、店員さんもだんだん俺好みのカフスを取り揃えてくれるようになった。時々ネクタイピンやブローチにもシフト変更するけど、対応してくれる店員マジ有能と感心するしかない俺だった。
 でもよくよく考えればカフスもピンもブローチも女性のお飾りと比べたら格段にリーズナブル。ショーケースに飾られる装備品レベルの首飾りに比べて丸の数の少ない事少ない事……

「店主、俺もっと金使えって言われてるのだが、どこに使えばいいのか判りません」
「男性ようでもある事にはあるのですが、アトリ様のお好みではないと思いますので」

 そうやって見せてくれた物は金のブレスレットに色とりどりの宝石を付けたいかにも成金趣味の物だった。
 俺は盛大に顔を歪めれば店主も苦笑する始末。

「好きな方には垂涎の作ですが」
「俺は宝石の希少さと最大限美しく見せるカッティングを所望する」
「職人の腕の見せ所ですね」

 そう言ったやり取りをして以来店主は貴重な品を探しては俺に披露してくれることになった。勿論そう言った手前お買い上げさせていただいているけど、それでも丸の数は一つ二つ増えただけにとどまっているので、そこは許して貰おうと思うのだった。
 今日も素敵な戦利品を手に入れたのでそれでクラエスを着飾らせて遊ぼうとご機嫌に俺の戦利品の本をご機嫌に読んでいた。
 
 カタン……

 静かな物音。だけど窓のすぐ外での音に外を覗けば

「うっ、くっ……」
 
 肩を貫かれたような傷に苦悶する男がいた。
 既に血を流し過ぎたのか顔色は悪く真っ白で、苦痛をこらえる顔は不覚にもセクシーだと思ってしまった。
 とりあえず窓を開けて

「大丈夫か、今店員を呼ぶ……」

 と言った所で部屋へと潜り込み、俺の口を塞がれてしまった。

「すまない、驚かせたようだが少し治療する間匿って欲しい。すぐに済ます」

 薄い唇から零れ落ちた少しかすれた声。紫紺のストレートの長い髪はこう言う時でも乱れる事のない。すらっとした切れ長の深い紫の瞳の男は俺の胸元にしがみつきながらも傷口を手で押さえていた。

「良ければ水を」
 
 傷口を洗い流せと言うように渡したが

「すまないが飲ませてもらえないだろうか。実は喉が渇いていた」

 謎の余裕。だけど口の端から血を流していた事から口をゆすぎたいのだろうとコップを口元に持って行けば

「色気がないな」
 
 けが人からのそんなダメ出し。
 いくらイケメンだからって何でも許されると思うなよ。
 まあ、許す俺だけどさと体は勝手に動くので俺の意志なんてどこにもない事を覚えておけと心の中で罵って行く。


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