異世界召喚に巻きこまれたらスマホがバグって騎士団団長の妻になるそうです

雪那 由多

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チョコレートの偉大さを知りました

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 そして迎えた花の日。
 聖華はエヴィリーナ・ブラフィルド侯爵令嬢とその取り巻き四名と共に王宮の一角にあるいつもの庭園で天鳥を招待しお茶とお喋りを楽しむ事になった。
 天鳥は学校の友人もお招きしてますと言う招待状にすぐさま楽しみにしてますと返事をして沢山のお菓子を持ってお茶会に参加するのだった。この頃には侍女の信頼を勝ち取ってか変なものをお茶に入れられる事もないし、コックも変わって仲も良くなったので今日のお菓子はグランデル家の料理長自ら作ったケーキを用意した。
 もちろん聖華ちゃんには砂糖の塊のようなケーキでは納得いかないだろうからととっておきのプレゼントもある。
 アプリのショップで買ったチョコレートを用意した。
 よく買ったアーモンドの入ったチョコレートとかクリームの入ったチョコレートとかも良かったけど、やっぱり貴族のお嬢さん方に食べてもらう物なのだからスーパーのお菓子コーナーではなくデパ地下のお菓子コーナーで売ってるような箱の奴を用意した。
 ただし、昔からある有名店のパッケージなので聖華ちゃんなら絶対知ってるだろうと思って中身だけを取り出してラッピングだけをした物をお出しした。
 結果だけを言えば聖華ちゃんにはすぐにばれて懐かしさに泣きだすのをなだめるのに俺では力になれず代わりのお友達の威力は絶大過ぎて感謝するのだった。
 とりあえず持ってる理由は俺がスイーツ男子だからだと言う無茶ぶりで納得してもらったと言うか納得するんだと言う方が驚きだったけど

「チョコレートは渋くって苦手でしたが、なんて甘くておいしいのでしょう!」
「ええ!わたし頂いたチョコレートはミルクにとかして砂糖をいっぱい入れて頂いてましたが、この様にナッツが入っていたりクリームが入っているチョコレート何て初めてです!」
「しかも全部形が違って、どれから頂いていいのかしら迷いますわ!」
「先ほどのキャラメルクリームの入ったチョコレートもおいしかったのですが」
「こちらの白いチョコレートもまた格別ですわ!」

 かつてチョコレートが薬だった時代、カカオの種に砂糖だけを入れていたあれは食べ物ではない。バレンタインの時ぐらいに見かける程度の遭遇率のカカオ99%なるチョコレートを一かけでも食べてみよう。口の中の水分がうばわれてばっさばっさになって涙目になる事確実。
 バターとミルクと砂糖を混ぜてお菓子に仕立て上げた人ほんと神だなと思うね。
 聖華ちゃんは少しだけ感傷に浸っていたけど、皆さんの熱いチョコレートへの情熱にいつの間にか笑顔を浮かべながらビスケットをチョコレートでくるんだお菓子を幸せそうに食べるのだった。
 ただし後でどういう事か教えてくださいねと言う俺だけに聞こえた声に冷や汗が流れてしまう。説明の仕方が分らないと言うか、どう誤魔化すべきかと悩んでしまう理由は日夜複数の相手にケツにペニスを突っ込まれて喜びまくる日常まで知られてしまうと言うおまけがあるから。これは絶対に知られたくないと言う……『天鳥さんの変態!』なんて言われたら絶対落ち込んで二度と聖華ちゃんに会えない気がする。
 とりあえず今日もスマホを預かって充電中という様になかなか離れられないだろうから、こんなビッチな俺を許してくれと願ってしまう。
 瞬く間にペロリとチョコレートを食べてしまっていた淑女たちはしれっとした顔でグランデル家の料理長が作ってくれたケーキを食べていた。
 あれだけ食べたのにまだ食べれるんだ……なんて地雷は踏まないけど結構カロリー高いから気を付けてね?特に吹き出物とか、何気に聖華ちゃんチョコレートを三個でセーブしていたけど大変な事になっても文句言わないでねと、この世界のケーキはアイシングやバタークリームで飾った重いケーキが主流なようで正直一切れ食べるのも苦労する。ほら、砂糖の味しかしないから余計にね。
 俺はまったりと紅茶で砂糖を洗い流しながらお菓子に話しを弾ませる彼女たちの様子を見守っている。
 聖華ちゃんの普段の様子を聞くつもりだったけど、一番最初にチョコレートを出したばっかりにもうそれどころではなくなってしまい、だけど聖華ちゃんは俺に紹介してくれた女の子達と目尻に涙を浮かべるくらいに笑いあう姿に大丈夫だろうと俺は自称保護者として見守るのだった。
 が、こう言う時は必ずと言うくらい邪魔が入るのがセオリーだ。
 
「エヴィリーナ・ブラフィルド侯爵令嬢、セイカには近づくなとあれほど忠告しただろう!」

 これ以上とないくらいの楽しい時間を凍りつかせる声に振り向けば、四人の……こちらもとりまきだろうかまだ何処か幼さを残す顔立ちの所謂ご学友を引き連れた見覚えのある召喚の儀の責任者様が突如現れた。
 茶器を置き、全員が立ち上がって無表情で膝を追って頭を下げるのだった。
 その中には聖華ちゃんもあり、俺も視界の端の挨拶の仕方のレクチャーに則って、右手を左胸に沿えて腰を折る。しかも許可がないと顔を上げてはいけない、それは聖華ちゃん達も同様らしく、皆さんピタリとその姿勢をキープするのを俺は足がつりそうなのをこらえながら奮闘するのだった。

「ふんっ、顔を上げろ」
 
 たっぷりと時間を置いてから許しを与えたクソガキはエヴィリーナ嬢を冷めた視線で見下し

「俺の婚約者だからと言って既に城の中で好き勝手をして……」
「私はっ!」
 
 エヴィリーナ嬢が何か言い返そうとするも二人の間に聖華ちゃんが入り

「本日のこの茶会は私がノルドシュトロム陛下に許可を頂き、さらにお招きの許可を頂いて足を運んでいただいた友人になります。
 いくらフレーデリク殿下とは言え正しく手順を踏んで開かれた茶会に招待状もなく足を運びそして私のお客様への侮辱は許される事ではありません」

 背筋を伸ばし、凛としたその姿にここで初めて再会した時の気弱な少女の姿はどこにもなかった。

「だが、エヴィリーナにされた数々忘れたと申すのか?
 とてもではないが許される事では……」
「その件については私は許しました。その上でエイヴィリーナ様から謝罪を頂き、お詫びの品も頂いております」
 
 そんな事があったのかと感心をすれば、なにやらエヴィリーナ状態一行は胸につけたお揃いのブローチを不安から誰もが握りしめて縋っていた。


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