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異世界、異文化、同性結婚

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 そうなると怖いものほど覗きたくなる。
 奴隷商店をポチして、お品一覧を眺める。
 老若男女、身なりの良さそうな老人は働いていたお家が没落して借金取りに売られたと言うびっくりする理由から、幼い子供は食い扶持減らしに売られて行ったと言う物。身体欠損している物は戦争捕虜だったり、犯罪を起こして奴隷の身分に落ちた者もいた。

「うわー、小説の世界がこの世界じゃリアルなのか……」

 明日はわが身だった聖女召喚のおまけとしてはグランデルさんに結婚前提だけど引き受けられたと言うのは幸運なのだろう。
 グランデルさんのキラキラ成分はちょっと勘弁だけどありがたく思いながら、この後は移動してからじっくり見せてもらう事にしようとバスルームを出れば扉のすぐ側でグランデルさんがなんだか泣き出しそうな顔で待っててくれた。
 え?なに?なんてハウゼンさんに視線を向ければ少し申し訳ない顔をして顔をそっとそむけたまま侍女さん達の側で立っていた。

「ええと、お待たせしてすみません?」
「いえ、準備には時間がかかる物、いくらでも待ちます」
 
 目が合えばシャキンと背を伸ばして俺へと手を伸ばす。

「かばん持ちます」
「ええと、大切なものなので……」

 何て断ろうとすればあからさまに落ち込む様子に騎士団の団長さんがこんなのでいいの?!と護衛さんたちに視線を向けるも立派な騎士団長の護衛に選ばれた人たちは決して見ていませんと言う顔で視線すら合わせてくれなくなった。
 なんとなく鞄を抱きしめて……

「では行きましょうか」
 
 このカオスから逃れる為に先を促せばグランデルさんは手を俺に差し出して

「馬車を用意させてます。こちらにどうぞ」

 そうやって俺はグランデル邸へと案内されるのだった。
 ハウゼンさん侍女一行に見送られて部屋を後にするのだった。

 


 馬車に揺られる事数十分。
 ゆっくりと見知らぬ景色を家紋入りの豪奢な馬車に乗りながら眺める。
 うわー、うわーと感嘆の声を上げる俺にグランデルさんはそんな俺を微笑ましそうに眺め、景色を堪能する俺の邪魔をしないように話しもかけてこなかった。
 街の喧騒を抜けて住宅街に景色は変り、次第に一軒一軒が大きくなり、邸も庭もひろく豪華になっていく。そこから先はどこまで続くだろう柵に囲まれたお城のような屋敷がポツン、ポツンとあって、その中の一つの前で馬車は止まった。
 馬車の紋章の確認が取れたのか門の前に立つ門兵がすかさず扉を開けてくれて、両脇で頭を置下げる中を馬車はしずしずと抜けて、すぐに門は又閉ざされてしまった。
 どんな宮殿にやって来てしまったのだろうか。
 広い庭には一面のバラが咲き乱れ、アーチは噴水と言った設備もあり、ここは何所のバラ園だろうかと考えながらもやがて邸の前に馬車は到着した。
 先触れでもあったのかと言う様に既に扉は開かれて、両脇には使用人だろうか、黒色のワンピースに白いエプロンをつけた女性の使用人達がずらりと並び、その一部は黒いスーツに似た服を纏う人達が並んでいた。
 うわぁ……
 なじみのない貴族とは言え、ある程度の使用人はいるのは覚悟していたが、こんなにもいるのか、ひょっとしてここに出る事が許されるまだ一部だけじゃなかろうかと引き攣ってしまう顔の俺は

「グランデルさん、あの人達ひょっとして使用人の方々ですか?

聞けば

「ナナセ」
 
 そっと手を握られた。
 ええと……

「今はまだ書類を交わしてないがこれから結婚すると言う相手にグランデルとではなくクラエスと呼んでほしい」

 なんて手を持ち上げられて甲にちゅっとキスをされてしまい、顔は一瞬無になってしまった。

「ナナセ、名を呼んでもらえるか?」

 別になまえがどうこうで照れる訳でもないし、会社でも同僚の中のいい奴は大体名前呼びだったからそう言う意味ではハードルは低い。

「別に構いませんよクラエス」

 そして敬称を付けるのは仕事相手と上司ぐらいだから全く持って問題ない。そう言ったハードルが低い国から来た人間なのでなれなれしく思われるだろうなと思いながらもよろしくーなんて言う前に俺も忘れてはいけない。

「だったら俺も『ナナセ』ではなく『アトリ』ですね」

 言えばキョトンと瞬きをし

「聖女様が仰るにはあちらの世界では家名が先に来ると聞きましたが?」
「すみません。あちらの世界でも外国では名前が先に着たりする国もありまして、俺の判断でファーストネームとラストネームの順番にしました」

 混乱させて申し訳ないと謝ろうとすればきゅっと手を握りしめて

「アトリ、素敵な名前だ。では私の邸の者達にその美しい名前を紹介させてたい」
「お、お手柔らかに」

 頼むから鳥肌が立つような耳が逃げ出す紹介だけは勘弁してくれと願うのだった。



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