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パンツは重要な問題だと思います

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 朝着替えたシャツを脱いで温かいお湯は諦めて冷たい水を頭からかぶる。同時に顔を洗ってタオルを頭からかぶってしたらふるりと体を震わせてしまい、風邪をひかないようにと急いで水気を拭い去る。ガシガシと頭を拭ってシャツを着る。下着まで新しい物を用意してくれたと言う事は着替えろって事かとげんなりしながらかぼちゃパンツみたいな股引のような下着を履きかえる。
 愛用していたボクサータイプとまでは言わないがトランクスだとありがたいのに。何で裾を紐で縛るのかなあと切り落とした方が布面積節約できるじゃんと言いたいが実際はズボンの裏生地がないのでそのかわりではないかと俺は思ったりしている。
 パンツ問題、重要。
 知り合いの居ない世界だから見られても構わないが……
 あのイケメンさんもこんなパンツをはいているのかと思うと少し色んな意味でドキドキしてしまう。
 とりあえず初日に縛ってみた時に動きが悪くなる気がしたので紐を縛らなくなったが、それはそれで紐がふくらはぎをくすぐって変な気分だ。
 是非働いてその収入でマイパンツを買ってこんな紐からおさらばしたいと当面の目標とするのだった。
 パンツの事を考えている間に無事着替え終えて首元もちゃんとボタンを閉めてリボンではなくタイを結ぶ。何だかふんわりとした布だったが俺の知るビジネス的な縛り方しか知らないので一切無視して結んだところで適当に手櫛で朝仕事に向かう時の髪型にざっと決める。ワックスもスプレーもないのが痛いが何もしないよりましだろうと鏡の前にたって出来上がった姿をみてこんなもんかと言った所でバスルームからでればグランデルさんとその部下さん。ハウゼンさん、そして二人の侍女達も部屋に残っていた。
 さっきのメンツのまんまかいとつっこまずに

「お待たせしました」
 
 さっぱりしたと言えばグランデルさんは少し目を見開いたので

「ええと、着方が違いました?」

 やっぱりネクタイか?と思えば視界の先で何故かネクタイの結び方一覧が映し出された。ちょっと、そう言うのは先に教えてよと自分に突っ込んでいる間にグランデルさんが俺の目の前に立ち、その長い指が俺の喉元をかすめる。

「そうですね。
 ネクタイの結び方をご存知でしたか。
 ですが、このネクタイではこの結び方をしなくて……」

 シュルリとネクタイを取り上げられてふわりと正しく結び直されてから襟を正される。そして自分の耳を飾るピアスを外して

「ネクタイピンでとめるのですが、お持ちではなので代わりにお使いください」
「おお、ブラインドフォールドノット。お気づかいありがとうございます」
「はい。
 それよりブライ…… とは一体?」

 小粒の、グランデルさんと同じ澄んだアイスブルーの石が付いた美しい金細工のピアスで止めてくれて胸元を正してくれた繊細な指先でも確かに剣だこがあると感心しながら

「俺達の世界でのこの結び方の呼び方ですね。
 特に畏まった場所ではない公式の場所、例えば友人の結婚式とかでよく見かける結び方です。こちらの世界でもあるなんてと少し感動しました」
「ふふっ、こんな事で共通点が見つかって安心したようならそれは良かった」
「いやいや、この年になってこの結び方を思い出せなかったので大変ありがたいです」
 
 危うく恥をかく所だったとは直接言わずに、でも妙に近い距離に居るイケメンさんに照れながらもハウゼンさんにどうです?なんて聞けば壁際の侍女さんに椅子を持ってこさせて鏡の前に座らされる。

「髪型も少し整えましょう。何もつけてないので崩れないように少し手を加えさせていただきます」

 言えば俺の首回りにケープを広げて手の平に何かの液体を乗せた後、俺の髪に塗りつけて行く。
 なにかの油的な、でも香水とまでは言わないが、あえて言うなら親父達が付ける整髪料的な物を髪に揉み込んで、それから櫛で俺が決めた分け方とか後ろへの流し方や前髪を再現してみせてくれた。さすがの仕事です。
 その後は次女に鏡を持たせて

「このような仕上がりで宜しいでしょうか?」

 これは見事な再現と左右を確認しながら

「ありがとうございます。整髪料がないからどうしようかと思ってました」

 素直に感謝をすればハウゼンさんは少し満足げな笑みを浮かべた物のすぐに仕事の時の顔に戻して

「ご満足頂けて何よりです。
 こちらの整髪料をお気に召していただけたようなので今後はバスルームの方にご用意させていただきます」

 親父臭い匂いだけどないよりはましだと思えばありがたくお願いしますと言うしかない。

「ありがとうございます」

 なんて言ってみたけど、それってこれからも俺はここに監禁されるの?なんて疑問を浮かべる合間にも伸ばされた手に俺はその手と持ち主を何度か見比べる。

「ではご案内します」

 無駄にイケメンの男性にご案内と言われるも

「ええと?」

 これはどうした物か。まさか子供が大人に手を繋いで…… なんて?と考えれば何やらはっとしたように目を見開いたグランデルさんは少しだけ顔を赤くして

「失礼しました。
 では改めてご案内します」

 おーねーがーいー。
 恥ずかしくて顔を真っ赤にするのはいいけど照れるのはやーめーてー。
 ほら、ハウゼンさんが「まぁ」なんて言う様に口元を押さえてるし、壁際の侍女さんの殺人的視線とか、グランデルさんの部下さんの彷徨う視線とか、俺マジ居た堪れなさすぎなんだけど!なんて全力で視線で訴えるも照れて顔を合わせないグランデルさんは気にせずに先頭に立って昼食会場へと案内してくれるのだった。
 逃げれる物なら逃げたい。
 そんな居た堪れなさを感じながら両開きの大きな扉の前に立つ事になった。


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