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うちの隊長はヴォーグ効果にどんびきになるのは当然だからと容赦なくお前達も逝けと言っております

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「それよりも今の森の状況はどうなってる」
 
 咳払いを一つして寝ている間の状況の変化を聞けば

「そうですね。キリングベアーとジェノサイドベアーは粗方数を減らしたので早々に遭遇する事はないでしょう。
 あとは雑魚ですね。無駄に硬いだけのミスリルなので蹴散らして素材を拾いながらから森を出ましょう。そして新しいナイスでも作りたいですね」
「ああ、あれか。前にもやった奴だなって、お前ナイフ作るための素材集めに来ていたのか」
「はい。なのでラグナー、見本で手前の三体やっちゃいましょう?ついでに素材ゲットしてカトラリーも特注で作っちゃいましょう?」

 やっちゃいましょう?作っちゃいましょ?じゃねえだろ!基準がおかしいだろ!
 心の中で絶叫するも既にバフをかけられた身体は軽くなり、期待して見守られる隊の仲間の視線に俺は項垂れた。

「行ってくる」
「そばに居るので安心してください」

 途中まで一緒にとことこと歩きながら、殺気立つミスリルベアーの視界に入れば現れた餌にミスリルベアーの殺気を全身に浴びる事になった。
 このバフが無ければ死ねるな。
 剣を抜いて足を一歩前に出す。
 その瞬間ミスリルベアー達の背後へと移動していて背後から一気に剣を振りきれば剣の軌道に真空刃が飛んで一緒に首を切ると言う……
 そんなヴォーグの解説。そんなことやってるんだと足を止めれば

 ゴトリ
 
 転がる首を俺は振り返って確認。
 三体の魔物の首が転がってるのを確認して相変わらずバフのかかった体の身体能力の高さと切れ味が触るな危険レベルの剣の鋭さに俺そこまで剣の道を究めてないんだけどヴォーグのバフの効果がいかに異常なだけがよくわかる実演を披露するのだった。
 案の定アレクを始めとした部下達はぽかーんと俺の必殺の一撃を、多分見て居たと思う。
「今何が……」
「これがヴォーグの美味い飯の正体だ」
「皆さんラグナーの見本見ましたか?
 同じように真似してもらえればいいので、では早速ですがランダーさん逝きましょうか?」
 にっこりと笑った時には複数のバフをかけていた。なんか「行きましょうか?」が別の意味に変ったんだと気もしたが別に構わないのでそのままスルー。アレクの何か言いたげな視線を受けるもそれもスルーしてやった。
 普通なら複数のバフ何てかける事が出来なく、時々二つ出来る奴はギルドでも騎士団でも高待遇で迎え入れられるというのに、こいつと来たら三つ四つは当たり前のようにかけてくる。それはもう容赦なくかけて来ていつの間にか体が別人で、多少慣れたからいいけどそのコツをつかむまでどれだけ気にぶち当たったか……あ、ランダーがさっそく木にぶつかっていた。うん。あれ痛いと言うよりショックがでかいんだよなと、痛みはほぼ気にならない事は知っているので歩いたら躓いて転ぶと言うようなショックはこの年ではキツイ。気を抱きしめて固まっているランダーに

「イリスティーナ小隊長、逝きましょうか」
「止めてヴォーグ!私は今忙しいからノラとシルを先に逝かせて!」

 なぜか呼吸荒く今にも倒れそうなイリスティーナは何やらブツブツ言いながら興奮したかのように顔は真っ赤で今は声をかけない方が良いと察したヴォーグはそのままノラとシルを向いて

「逝きましょう」
「お前パンを取った事恨んでいるのか?!」
「いえ」
「書類ほぼ全部書き直させたこと恨んでるんだろ!!」
「はい。ちなみにほぼではなく全部です」
「シルビオお前のせいか!!!」
 ごつっとノラスに殴られている合間にバフをかけられたところでタイミングよく蹴りだされた先は今にもランダーを襲わんとするミスリルベアー五体。
 美女が野獣に襲われている。
 誰が美女で野獣じゃなくて魔獣だろうとつっこみたかったがその一頭にシルビオは頭から突っ込んで、背骨を折って一体を仕留めると言う大勲等。

「シルビオが出来たんだ。ノラスも出来るな?」
「できるなじゃなくってやれって言う事でしょう!」

 半泣きの状態でヴォーグに良いのを頼むと言った後にバフを貰って適当に剣を振り回して残りの四体を倒した奇跡に、俺もう満足ですとぱたりと倒れ込んだノラスに俺は冷静に拍手をしてしまった。

「そろそろイリスも逝けるか?」
「ええ!逝きましょう!
 サンプルは十分です!後は体験のみっ!!!」
「よしっ!逝け!」
「逝きますっ!!!」
 
 そう言って駆け出した背中に

「あいつはバフなしでいいぞ」
「良いんですか?」
「死なない程度で頼む」
「……」
 
 流石のラグナーの言葉にヴォーグは引いたが目は真剣なので別の群れに飛び込んだイリスを死なないように体だけは頑丈にして置けばもろ一撃をくらって吹っ飛んで戻ってきた顔は至極幸せそうだったからそっと目を反らしてみないふりをして置いた。

 

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