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うちの隊長はクラウゼ家に実家のような温かさを感じています
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「なるほど、ラグナーらしい行動力だ」
「あらあら、お出かけしてご機嫌なのね」
疲れ切ったアレクと合流してクラウゼ邸に向えば伯爵もソフィア様も揃って出迎えてくれた。
ソフィア様は挨拶もほどほどにミューラを早速と言う様に抱っこをして暖かなサロンへと向かうのだった。
馬車に揺られている間はぐっすりと寝ていた為に馬車が止まって降りた所で目を覚まし、ぐずる事なくソフィア様に抱かれて薄めた果汁を飲んでいる。ほんのりと果実の味がするかどうか美味しくも不味くもないそんな果実水を一生懸命哺乳瓶に吸い付いていた。
「馬車で寝ていたとはいえやはり喉が渇いていたようですね」
「もちろんよ」
「それにしても一生懸命で可愛いですね」
「ふふふ、アレクの小さい頃を思い出すわ」
きゃー!なんて一瞬でソフィア様をメロメロにしたミューラは小さな手を哺乳瓶に伸ばして懸命に果実水を飲み続け、あっという間に飲み干してソフィア様に背中をトントンとしてもらい豪快なげっぷをして周囲を喜ばせるのだった。
今から罪作りだなと思う間もなくアルヴェロが用意させたぬいぐるみの並ぶベビーベットに寝かされる準備の良さにさすがハイラが支配するクラウゼ家だと納得すると言うか気が早いと言うか運よくネコのぬいぐるみのしっぽを掴んで口へと運ぶのを悲鳴を上げて女性陣は笑うのだった。
「それにしても随分と思い切った事をした」
「やるからには徹底しますよ。
最初に計画を言えば真っ先に邪魔するでしょうし」
そう言ってアレクを見ればきっと一晩中余計な事を考えて疲れたのだろう、いつもより疲労の濃い顔は今も寝付けそうもない顔をしていた。
「まぁ、最初こそ驚きこそするかもしれないが、ヴォーグ君も居ればきっと誰よりもかわいがると思うよ」
「きっと誰よりも懐かれるのは判ってるつもりですがさすがにヴォーグが居る時はそこまで実行できませんよ俺が」
亡くなった後だから行動できた事で、正直この先誰かに抱かれるのも誰かを抱くのもごめんだ。そう言う意味では早々に理想通りの子供が生まれた事にホッとするラグナーではあったが、後どれだけいると言いたげなアレクの視線に無駄打ちだけはしていない事を信じてほしいと後で言い聞かせなくてはと考えておく。
「話は変るがハイラの件は承知しました。
どうぞハイラをお連れ下さい」
「悪いな、せっかくクラウゼ家に戻してやれたのに度々誘う事になって」
本日アヴェリオの代わりにワイズが付いて来て用意してくれた紅茶をハイラの代わりに俺達に差し出してくれた。
ハイラはニコニコとした顔で
「いえ、たまには留守にする事が今のクラウゼ家の教育に繋がります」
「ラグナー聞いてくれ。ハイラはアルホルンから戻って来たらそれはそれは鬼となって再教育させ、昨年アルホルンから戻って来たらヴォーグ君が向こうに置いてきた執事よりも質が劣ると嘆いてそれはもうスパルタに磨きがかかってね」
「向こうは少数精鋭ですからね。要求される事がこちらの倍以上なのでどうしても成長の差が目に付くと言う物でしょう」
久しぶりにハイラの淹れたヴォーグの好む紅茶を淹れてもらいたかったがそうはならないかとワイズの紅茶でのどを潤していれば
ずさっ……
突如ワイズが片膝をついて家令の最敬礼と言うか寧ろそれは謝罪では?という姿勢でクラウゼ伯に頭を下げる。
「ワイズ?」
「ワイズ殿?」
どうなさいました?と言う様にソフィア様達も集まってくる中で
「クラウゼ伯に是非ともお願いがあります」
俺の僕として招かれた家の主に直接話しかけるどころか願い出るなんて以ての外の出来事をだれもが息をのんで見守れば
「ワイズ、ラグナー君も困っている。とりあえず顔を上げて……」
「いいえ、話を聞いていただけるまでどうか!このワイズ、ヴェナブルズを去る覚悟でお願い申し上げます」
その言葉にラグナーは頭を殴られるぐらいのショックで目の前が真っ暗になった。
「あらあら、お出かけしてご機嫌なのね」
疲れ切ったアレクと合流してクラウゼ邸に向えば伯爵もソフィア様も揃って出迎えてくれた。
ソフィア様は挨拶もほどほどにミューラを早速と言う様に抱っこをして暖かなサロンへと向かうのだった。
馬車に揺られている間はぐっすりと寝ていた為に馬車が止まって降りた所で目を覚まし、ぐずる事なくソフィア様に抱かれて薄めた果汁を飲んでいる。ほんのりと果実の味がするかどうか美味しくも不味くもないそんな果実水を一生懸命哺乳瓶に吸い付いていた。
「馬車で寝ていたとはいえやはり喉が渇いていたようですね」
「もちろんよ」
「それにしても一生懸命で可愛いですね」
「ふふふ、アレクの小さい頃を思い出すわ」
きゃー!なんて一瞬でソフィア様をメロメロにしたミューラは小さな手を哺乳瓶に伸ばして懸命に果実水を飲み続け、あっという間に飲み干してソフィア様に背中をトントンとしてもらい豪快なげっぷをして周囲を喜ばせるのだった。
今から罪作りだなと思う間もなくアルヴェロが用意させたぬいぐるみの並ぶベビーベットに寝かされる準備の良さにさすがハイラが支配するクラウゼ家だと納得すると言うか気が早いと言うか運よくネコのぬいぐるみのしっぽを掴んで口へと運ぶのを悲鳴を上げて女性陣は笑うのだった。
「それにしても随分と思い切った事をした」
「やるからには徹底しますよ。
最初に計画を言えば真っ先に邪魔するでしょうし」
そう言ってアレクを見ればきっと一晩中余計な事を考えて疲れたのだろう、いつもより疲労の濃い顔は今も寝付けそうもない顔をしていた。
「まぁ、最初こそ驚きこそするかもしれないが、ヴォーグ君も居ればきっと誰よりもかわいがると思うよ」
「きっと誰よりも懐かれるのは判ってるつもりですがさすがにヴォーグが居る時はそこまで実行できませんよ俺が」
亡くなった後だから行動できた事で、正直この先誰かに抱かれるのも誰かを抱くのもごめんだ。そう言う意味では早々に理想通りの子供が生まれた事にホッとするラグナーではあったが、後どれだけいると言いたげなアレクの視線に無駄打ちだけはしていない事を信じてほしいと後で言い聞かせなくてはと考えておく。
「話は変るがハイラの件は承知しました。
どうぞハイラをお連れ下さい」
「悪いな、せっかくクラウゼ家に戻してやれたのに度々誘う事になって」
本日アヴェリオの代わりにワイズが付いて来て用意してくれた紅茶をハイラの代わりに俺達に差し出してくれた。
ハイラはニコニコとした顔で
「いえ、たまには留守にする事が今のクラウゼ家の教育に繋がります」
「ラグナー聞いてくれ。ハイラはアルホルンから戻って来たらそれはそれは鬼となって再教育させ、昨年アルホルンから戻って来たらヴォーグ君が向こうに置いてきた執事よりも質が劣ると嘆いてそれはもうスパルタに磨きがかかってね」
「向こうは少数精鋭ですからね。要求される事がこちらの倍以上なのでどうしても成長の差が目に付くと言う物でしょう」
久しぶりにハイラの淹れたヴォーグの好む紅茶を淹れてもらいたかったがそうはならないかとワイズの紅茶でのどを潤していれば
ずさっ……
突如ワイズが片膝をついて家令の最敬礼と言うか寧ろそれは謝罪では?という姿勢でクラウゼ伯に頭を下げる。
「ワイズ?」
「ワイズ殿?」
どうなさいました?と言う様にソフィア様達も集まってくる中で
「クラウゼ伯に是非ともお願いがあります」
俺の僕として招かれた家の主に直接話しかけるどころか願い出るなんて以ての外の出来事をだれもが息をのんで見守れば
「ワイズ、ラグナー君も困っている。とりあえず顔を上げて……」
「いいえ、話を聞いていただけるまでどうか!このワイズ、ヴェナブルズを去る覚悟でお願い申し上げます」
その言葉にラグナーは頭を殴られるぐらいのショックで目の前が真っ暗になった。
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