うちの隊長は補佐官殿が気になるようですが

雪那 由多

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うちの隊長はヴォーグ亡き後二年が過ぎたようですが相変わらず隊長と呼ばれてます

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少し小話を書いてみようかと思います。
お付き合いくだされば幸いです。

*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*

「隊長!愛してますうううっっっ!!!」
「隊長!お願いです!お嫁さんにして下さああああああいっ!!!」
「断る」

 突如執務室の部屋が開け放たれたかと思えば見慣れた顔を見て条件反射で拒否。
 と言うか、なぜこのヴェナブルズのメイン執務室にランダーとイリスが侵入して来たのかと思うもすぐ後ろからアヴェリオとアレクにトゥーレ、シルビオさらにかなり遅れてワイズがやってきた。

「一体何なんだ」

 特にアレクが騎士団の隊服を纏ってまでの状況。
 ワイズに寄りそってレドフォードまでいる始末。
 とりあえずだ。

「全員座れ」

 言いながらも人数分のないソファに誰となく視線を彷徨わせば

「ワイズ以外全員床に決まってるだろう」

 言いながらも書類の仕事を淡々と続ける。
 ワイズは戸惑う物のレドによって案内されて座ったすぐ横で一同、アヴェリオを除いて膝を折って座るのだった。

「何だこれは……」
「前にヴォーグから聞いた躾の一環だ。
 アヴェリオもランダーとイリスの侵入を許したから同じように座る」

 言いながらも書類から視線を反らせずにペンを走らせていればアヴェリオも躊躇いながらも床に座った。元騎士団団長の立場をなつかしく思い出せばなかなかにして良い眺めだ。
 それを暫く眺めたのちに書類へと視線を戻す。
 ヴォーグが残してくれたペンはとても滑らかに筆を運び、今では常にこのペンで仕事をしている。
 あいつの文字が綺麗だったのはこれもあるのだろうが、やっぱり

「同じペンを使っても上手くなるわけないか」
「一昼夜では難しいかと」
「何事も訓練だな」
「はい」
「あとお茶が欲しい。そいつらは客じゃないから構わなくていいぞ」
「承りました」

 なんて会話をしながらもワイズの視線はアヴェリオ達を凝視している。ハイラなら微笑ましいと見守ってくれると言うか、やはり慣れてないアヴェリオがものの数分の後に横に倒れて悶えはじめた。しかし俺にはこれも見慣れた光景だ。何も心配する事のない寧ろ待っていたという光景だと満足したのちに早急に仕上げなくてはいけない書類を作り、最後にサインを入れる。

 とんとん……

 室内にノックの音が響いて

「ヒースです。少々よろしいでしょうか」
「入れ」

 騎士団の執務室のように名乗らせてから入室を許可する俺にとって慣れた方式をとっている。
 ドアを開けて失礼しますと一言言いきる前にぎょっとして床に蹲るいい大人を眺めて呆然とする。

「ラグナー様、これは一体……」
「気にするな。いきさつについてはワイズが知ってるから。
 所で何の用だ?」
「そろそろミューラ様のミルクの時間です」
「ああ、もうそんな時間……」
「ご準備は済ませて在ります。
 ミューラ様もナニーのウルリカ様に湯あみをしていただきさっぱりとされてご機嫌でございます」
「ウルリカには本当に助かるな。
 自分の息子だってまだ大して変わらない年齢だと言うのに」
「アヴェリオの奥方だからこその信頼が我らには一番必要かと」
「確かに。
 ああ、少しミューラの顔を見て来るからお前達はここで待ってろ」

 ペンを置いて立ち上がれば

「いやあああぁぁぁ……」
「隊長置いて行かないでぇぇぇ……」

 正座をしたまま根性で追いかけて来て俺の足にしがみつくランダーとイリスに仕方がなく足を止めてしまえば

「少しでいいのです。話しを聞いてください……」
「私達をミューラのナニーになりたいのです……」

 まだアレクにも言っていないこの屋敷の者にしか伝えてない事を何故に知っているとシルビオを睨むよりも先に

「先日貴方が孤児院から子供を引き取ったと偶然孤児院の者から聞きまして……」
「なので私もランダーも騎士団を辞めて来ましたー」
「私もイリスも婚約者に個人的理由で婚約も破棄して来たら実家から勘当させられて行く当てがないので雇ってください!」
「因みに婚約破棄の慰謝料は当然家が払ってくれるわけないので借金で金貨500枚ほど。
 そんなお金あるわけないじゃないですかー!」

 ランダーとイリスの涙ながらの説明にこめかみの血管がブチギレるかと思う前に

「ラグナー様、そのお顔ではミューラ様が怯えてしまいます」

 なんてワイズの一声に一度だけ深呼吸をして感情を抑えつけて

「とりあえず正座をして待っていたら考えてやる」
「隊長、それ、明日の朝まで放置何てこと言わないですよね……」
「さすがレド、良い感してるな。明日の朝だったらいいな?」

 思わず笑顔で言いながらワイズとヒースを引き連れて部屋を辞しようとするもだ。

「とりあえず、アレク、お前はついて来い。アヴェリオはレドと正座しながらそこのバカ四人の監視だ」
「相変わらず容赦ないな」
「そう思うならさっさと立って行くぞ」

 くいっと顎でドアを指せばアレクは立ち上がろうとするも直ぐに床の上に倒れるのだった。







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