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うちの隊長は隣が少し寒く思います
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「ハイラ殿、そろそろ風が出て来たから迎えに行きましょう」
ワイズの呼びかけにアヴェリオを背後に控えさせてワインの給仕を手伝うハイラは林の木々を見て西の空を見上げる。
この時間に雲一つない空を珍しいと思いながらも
「そうですね。
冷える前にお迎えに参りましょう」
「リオネルもついてきなさい」
「はい。旦那様と奥様の上着をお持ちしましょう」
「ああ、私達の事はいいからお迎えに行ってあげてください」
とそう言ってクラウゼ伯と妻は息子夫妻を呼び
「何かあったら割って入ってあげてね」
「よ、ラグナー使い。ここはひとつ腕の見せ所だ!」
ラビの掛け声に渋面を作るアレクに誰もが笑う。
「隊長!でしたら私達もご一緒します!」
「同じくいろいろ不安なので俺達もついて行きます!!」
「シルもトゥーレもヴォーグ弟も行くぞ!諦めろ!」
「俺も?!」
手を上げたのは旧シーヴォラ隊の現クラウゼ隊メンバーと巻き込まれたイザム。
ランダーとイリスティーナが走りだそうとするのをレドフォードとルーツが引きとめ、レーンとマリンは仕方がない奴だと笑いながら付き合うと言えば
「だったら私達も行こうテレサ?」
「当然!侵入できなかった城の中を探索できる期会なのに美味しいご飯とワインで足止めされる罠何てテレサ認めないんだから!」
「思いっきり罠に引っかかってるけどな」
「と言うかテーブルからぜんぜん離れてないよな?」
「俺達もビックリな食べっぷりだったな」
くうっ!
見事な男泣きに騎士もギルドも王様も関係なく笑う。
「エリオット!ブルフォードも共に行って来い!
エーヴェルト達は父と遊ぼうのう」
いや~!!と悲鳴を上げても掴まったエーヴェルトとアスタは国王のヒゲジョリの刑にあいながら逃げ出そうとするも楽しそうに酔っぱらう国王陛下のご指名に二人の顔は歪む。
何で呼んでないのに来たと絶対八つ当たりされると想像しなくても判る未来に顔をゆがめるもゴルディーニも楽しそうに二人の肩を叩く。
「上司の命令は絶対だ」
最高位の国王の命令にその息子は涙を流し、その友人は拒否できない身分に溜息を落した。
そんな大所帯では木々を抜ける間も大騒ぎとなり随分と賑やかな道のりと林で遮られた視界とは言え意外に近い所にあるんだなと遠目に見えたガゼボに「ここが愛の巣なのね」などと言うマイヤの含み笑いに誰もがひょっとしてと言う想像に辿り着くも、二人が服を着ている様子が見えて全員がほっとするのだった。
「たいちょー!お迎えに上がりましたー!」
何故か気配を隠して近寄ろうとするランダーとイリス、そしてテレサとユハの四人が近づく前にレドフォードは声を上げる。
こう言う事が出来ないアヴェリオは正直助かったと胸をなでおろす傍らでアレクはあの二人ともう一人の存在に申し訳ないと視線を逸らす。
だけどガゼボでラグナーに声をかけた四人はそのまま動かずに何やら立ち尽くすようにして俺達に視線を向ける。
何か言いたげに、だけど声を出せれないような四人の異変に誰もの足が駆け足になって
「いかがなされました?」
このアルホルンの中で絶対の信頼を得たハイラはそっと、傾きだした陽光を反射する色とりどりのヴォーグが口にしていた飴玉が散らばるガゼボの中に足を運べば
「ああ、ハイラ。迎えに来てくれてありがとう……」
顔を上げたラグナーの双眸からはらりと零れ落ちた物に息をのむ。
ワイズもガゼボの中に入って膝をつき、ラグナーが抱きしめて離さないヴォーグの顔を覗き込んで瞠目。
なぜこの日に……
音にできなかったこの言葉に何と繋げればいいのか判らなく、そして問う事が出来なくてそっと立ち上がって一歩下がり指示が出るのを待つ。
このアルホルンでの家令の席はハイラが一番だ。
ワイズはたとえ父と呼んでくれた主であろうが分はわきまえている。
何か指示があれば、それはハイラへと下された物。
ハイラもじっと命を待つ体勢でラグナーとヴォーグを見守る。
それだけでもう何が起きたか否定できないくらいに理解は出来た。
なぜ二人きりにしてしまったのか、いつから一人にしてしまったのか、残された者達の溢れる後悔は止まることを知らない。
すすり泣く声が次第に広がって行く中ラグナーは既に涙で濡れた袖で目元をぬぐい
「ヴォーグ、こんなにも沢山の、みんなが迎えにきてくれたんだ。
一緒に城に戻ろう」
そう一言、ヴォーグを抱え上げた。
ワイズの呼びかけにアヴェリオを背後に控えさせてワインの給仕を手伝うハイラは林の木々を見て西の空を見上げる。
この時間に雲一つない空を珍しいと思いながらも
「そうですね。
冷える前にお迎えに参りましょう」
「リオネルもついてきなさい」
「はい。旦那様と奥様の上着をお持ちしましょう」
「ああ、私達の事はいいからお迎えに行ってあげてください」
とそう言ってクラウゼ伯と妻は息子夫妻を呼び
「何かあったら割って入ってあげてね」
「よ、ラグナー使い。ここはひとつ腕の見せ所だ!」
ラビの掛け声に渋面を作るアレクに誰もが笑う。
「隊長!でしたら私達もご一緒します!」
「同じくいろいろ不安なので俺達もついて行きます!!」
「シルもトゥーレもヴォーグ弟も行くぞ!諦めろ!」
「俺も?!」
手を上げたのは旧シーヴォラ隊の現クラウゼ隊メンバーと巻き込まれたイザム。
ランダーとイリスティーナが走りだそうとするのをレドフォードとルーツが引きとめ、レーンとマリンは仕方がない奴だと笑いながら付き合うと言えば
「だったら私達も行こうテレサ?」
「当然!侵入できなかった城の中を探索できる期会なのに美味しいご飯とワインで足止めされる罠何てテレサ認めないんだから!」
「思いっきり罠に引っかかってるけどな」
「と言うかテーブルからぜんぜん離れてないよな?」
「俺達もビックリな食べっぷりだったな」
くうっ!
見事な男泣きに騎士もギルドも王様も関係なく笑う。
「エリオット!ブルフォードも共に行って来い!
エーヴェルト達は父と遊ぼうのう」
いや~!!と悲鳴を上げても掴まったエーヴェルトとアスタは国王のヒゲジョリの刑にあいながら逃げ出そうとするも楽しそうに酔っぱらう国王陛下のご指名に二人の顔は歪む。
何で呼んでないのに来たと絶対八つ当たりされると想像しなくても判る未来に顔をゆがめるもゴルディーニも楽しそうに二人の肩を叩く。
「上司の命令は絶対だ」
最高位の国王の命令にその息子は涙を流し、その友人は拒否できない身分に溜息を落した。
そんな大所帯では木々を抜ける間も大騒ぎとなり随分と賑やかな道のりと林で遮られた視界とは言え意外に近い所にあるんだなと遠目に見えたガゼボに「ここが愛の巣なのね」などと言うマイヤの含み笑いに誰もがひょっとしてと言う想像に辿り着くも、二人が服を着ている様子が見えて全員がほっとするのだった。
「たいちょー!お迎えに上がりましたー!」
何故か気配を隠して近寄ろうとするランダーとイリス、そしてテレサとユハの四人が近づく前にレドフォードは声を上げる。
こう言う事が出来ないアヴェリオは正直助かったと胸をなでおろす傍らでアレクはあの二人ともう一人の存在に申し訳ないと視線を逸らす。
だけどガゼボでラグナーに声をかけた四人はそのまま動かずに何やら立ち尽くすようにして俺達に視線を向ける。
何か言いたげに、だけど声を出せれないような四人の異変に誰もの足が駆け足になって
「いかがなされました?」
このアルホルンの中で絶対の信頼を得たハイラはそっと、傾きだした陽光を反射する色とりどりのヴォーグが口にしていた飴玉が散らばるガゼボの中に足を運べば
「ああ、ハイラ。迎えに来てくれてありがとう……」
顔を上げたラグナーの双眸からはらりと零れ落ちた物に息をのむ。
ワイズもガゼボの中に入って膝をつき、ラグナーが抱きしめて離さないヴォーグの顔を覗き込んで瞠目。
なぜこの日に……
音にできなかったこの言葉に何と繋げればいいのか判らなく、そして問う事が出来なくてそっと立ち上がって一歩下がり指示が出るのを待つ。
このアルホルンでの家令の席はハイラが一番だ。
ワイズはたとえ父と呼んでくれた主であろうが分はわきまえている。
何か指示があれば、それはハイラへと下された物。
ハイラもじっと命を待つ体勢でラグナーとヴォーグを見守る。
それだけでもう何が起きたか否定できないくらいに理解は出来た。
なぜ二人きりにしてしまったのか、いつから一人にしてしまったのか、残された者達の溢れる後悔は止まることを知らない。
すすり泣く声が次第に広がって行く中ラグナーは既に涙で濡れた袖で目元をぬぐい
「ヴォーグ、こんなにも沢山の、みんなが迎えにきてくれたんだ。
一緒に城に戻ろう」
そう一言、ヴォーグを抱え上げた。
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