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うちの隊長は春の使者から花冠を頂きました
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下の階に降りればロビーも人が溢れていて主役でもある俺の登場にわっと祝福の声が上がるもその後ろに続く国王陛下のお出ましに浮き立った空気は消え去ってしまった。
全員の顔に何であんたここにいるの?!とありありと書いてあり、甚くその顔にご満悦なのは当の本人だけだ。
だけどその中を駆け足でやってきたのは
「父上!
見てください!早咲きのアルフォニアの花を見付けました!」
「おお、エーヴェルトは春の使者だな」
少し遅れてやってきたアスタが父上と聞いて思わず周囲の人同様頭を下げて畏まってしまうも、その手をエーヴが引いて自慢げに彼の手に持つ物を掲げる。
「アスタに教えてもらってアルフォニアの花冠を作りました!」
「上手に作れたではないか」
にこにこと一人は顔を引き攣らせて笑う子供達の手には一つずつ花冠がある。
「はい。大公にプレゼントをしたく思いまして。
失礼にはなりませんか?」
「大丈夫。これ以上とない贈り物だよ」
「はい!」
満面の笑顔と何処か腹黒い笑顔が笑いあう。
国王の予想外の出現を目にした者達はお近づきになれるチャンスと喜ぶ者と何でここにと言う両極端の反応で別れる中
「陛下、そのような所で立ち話もなんでしょう。
あちらのサロンに移動なさってお話なされればよろしいのに」
混沌のロビーに現れたのは王妃とラウナ妃だった。
傍らにはソフィア様と護衛ではないだろうカレヴァの妻のホーリーが娘を抱えて立っていた。
当然エーンルートの妻やブルフォードの母やシュグネウス伯の妻も居る。
ここで魔女の宴が広げられていたかと口には出せないがこの面子の主役はやはりまだ幼いアイーダのようだ。
なぜか大粒の宝石を付けた首飾りを付けていて、王妃の首元にあるはずの首飾りがどうしても見当たらない。
これも淑女教育なのかとしゃぶしゃぶとしゃぶられるのは国宝の首飾りじゃないよね?見間違いだったらいいなとヴォーグは何度も瞬きを繰り返す背後のエーンルートも俺の心情を表すように呻いていた。
「王妃様、母上見てください。
初めてアルフォニアの花冠を作ったのです!」
この国の子供なら一度は体験している事をエーヴはこの年になって初めて体験したのだ。
周囲から花冠の話を心が苦しくなるほど聞かされてきた事をやっと体験して全身で喜びを表現する息子の良き変わり様にラウナ妃は喜びの為に目尻に涙を浮かべていた。
王妃に促され狭いロビーからサロンに移ればそこには既にラグナーが真っ白の宮廷騎士の飾りなどがこれでもかとジャラジャラついた式典用の正装に身を包んで待っていた。
沢山の衣装を用意したがあまりの多さに最後はラグナー自身がブチギレて俺は宮廷騎士だからこれでいいと周囲の笑いを買い、めったに見る事の出来ないその姿にヴォーグが美味しく頂くのは時間の問題だったのはほんの数日前の出来事。
本日も今日はこれと決めたのにすぐ横に着る予定のない衣装が並べられて不機嫌な顔を隠せずにいるのを誰もが顔を背けて笑っていた。
「アルホルンはやっとアルフォニアの季節になりましたのにとても上手に出来ましたね」
王都ではとっくに散っている季節だが遅れてやってきた春の様子が手に取るようにわかる指針の一つがアルフォニアの花なのだ。
最近でこそホームシックはなりを潜めたのに大好きな母親の笑顔にまたホームシックになるのではと心配するも
「父上にお聞きしてお許しを頂きましたが、これは本日大公にプレゼントしたく思います」
「ふふふ、何て可愛らしい花婿と花嫁さんでしょう」
そんな話をしている所でヴォーグとラグナーが並び立てば
「大公、しゃがんでください。ラグナーもです。
手が届かないのでお願いします!」
そんな必死の可愛い要求にヴォーグがしゃがめばラグナーが俺もか?!と驚きの表情と共に腰を落せばエーブはヴォーグに、アスタはラグナーにそれぞれ花冠を頭に乗せるのだった。
満足げにほほ笑みあう子供達のあまりに可愛らしい様子にどこからともなく拍手が沸き上がりその拍手が広がる道に導かれるように芝生の庭に出て本日の主役の座へと案内されるのだった。
一段高くなったその席から見渡せばそこにはよくぞこんな何もない所まで足を運んでくれたと言わんばかりの人が溢れ返っていた。
全員の顔に何であんたここにいるの?!とありありと書いてあり、甚くその顔にご満悦なのは当の本人だけだ。
だけどその中を駆け足でやってきたのは
「父上!
見てください!早咲きのアルフォニアの花を見付けました!」
「おお、エーヴェルトは春の使者だな」
少し遅れてやってきたアスタが父上と聞いて思わず周囲の人同様頭を下げて畏まってしまうも、その手をエーヴが引いて自慢げに彼の手に持つ物を掲げる。
「アスタに教えてもらってアルフォニアの花冠を作りました!」
「上手に作れたではないか」
にこにこと一人は顔を引き攣らせて笑う子供達の手には一つずつ花冠がある。
「はい。大公にプレゼントをしたく思いまして。
失礼にはなりませんか?」
「大丈夫。これ以上とない贈り物だよ」
「はい!」
満面の笑顔と何処か腹黒い笑顔が笑いあう。
国王の予想外の出現を目にした者達はお近づきになれるチャンスと喜ぶ者と何でここにと言う両極端の反応で別れる中
「陛下、そのような所で立ち話もなんでしょう。
あちらのサロンに移動なさってお話なされればよろしいのに」
混沌のロビーに現れたのは王妃とラウナ妃だった。
傍らにはソフィア様と護衛ではないだろうカレヴァの妻のホーリーが娘を抱えて立っていた。
当然エーンルートの妻やブルフォードの母やシュグネウス伯の妻も居る。
ここで魔女の宴が広げられていたかと口には出せないがこの面子の主役はやはりまだ幼いアイーダのようだ。
なぜか大粒の宝石を付けた首飾りを付けていて、王妃の首元にあるはずの首飾りがどうしても見当たらない。
これも淑女教育なのかとしゃぶしゃぶとしゃぶられるのは国宝の首飾りじゃないよね?見間違いだったらいいなとヴォーグは何度も瞬きを繰り返す背後のエーンルートも俺の心情を表すように呻いていた。
「王妃様、母上見てください。
初めてアルフォニアの花冠を作ったのです!」
この国の子供なら一度は体験している事をエーヴはこの年になって初めて体験したのだ。
周囲から花冠の話を心が苦しくなるほど聞かされてきた事をやっと体験して全身で喜びを表現する息子の良き変わり様にラウナ妃は喜びの為に目尻に涙を浮かべていた。
王妃に促され狭いロビーからサロンに移ればそこには既にラグナーが真っ白の宮廷騎士の飾りなどがこれでもかとジャラジャラついた式典用の正装に身を包んで待っていた。
沢山の衣装を用意したがあまりの多さに最後はラグナー自身がブチギレて俺は宮廷騎士だからこれでいいと周囲の笑いを買い、めったに見る事の出来ないその姿にヴォーグが美味しく頂くのは時間の問題だったのはほんの数日前の出来事。
本日も今日はこれと決めたのにすぐ横に着る予定のない衣装が並べられて不機嫌な顔を隠せずにいるのを誰もが顔を背けて笑っていた。
「アルホルンはやっとアルフォニアの季節になりましたのにとても上手に出来ましたね」
王都ではとっくに散っている季節だが遅れてやってきた春の様子が手に取るようにわかる指針の一つがアルフォニアの花なのだ。
最近でこそホームシックはなりを潜めたのに大好きな母親の笑顔にまたホームシックになるのではと心配するも
「父上にお聞きしてお許しを頂きましたが、これは本日大公にプレゼントしたく思います」
「ふふふ、何て可愛らしい花婿と花嫁さんでしょう」
そんな話をしている所でヴォーグとラグナーが並び立てば
「大公、しゃがんでください。ラグナーもです。
手が届かないのでお願いします!」
そんな必死の可愛い要求にヴォーグがしゃがめばラグナーが俺もか?!と驚きの表情と共に腰を落せばエーブはヴォーグに、アスタはラグナーにそれぞれ花冠を頭に乗せるのだった。
満足げにほほ笑みあう子供達のあまりに可愛らしい様子にどこからともなく拍手が沸き上がりその拍手が広がる道に導かれるように芝生の庭に出て本日の主役の座へと案内されるのだった。
一段高くなったその席から見渡せばそこにはよくぞこんな何もない所まで足を運んでくれたと言わんばかりの人が溢れ返っていた。
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