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うちの隊長は実は風呂が苦手です
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目を覚ました時ヴォーグの顔が目の前にあってほっとした。
ヴォーグが森に閉じこもりなかなか戻ってこなくて心配していればシルビオが子供じゃないんだからすぐに帰ってきますよと馬が逃げ出したかのように気楽に言ってくれたが、俺が心配するのは体の方だと言うのにとトゥーレに視線を送ればすぐに何処かへと引きずって部屋を出て行ってくれたのがありがたかった。
「ラグナー隊は相変わらず涙そそる光景だな」
ヒトをモノのように扱うなんてと室内にいた宮廷騎士が怯えていたがそんなのは躾の問題だ。
「今日はもう休め」
アヴェリオにそう言われて部屋に戻ってヴォーグの帰りを寝ずに待っていれば気が付けば朝を迎えていた。
徹夜をしてしまった事はすぐにハイラに気づかれて速やかにアヴェリオに報告されて再度寝るようにと言われた物のヴォーグが心配で寝る事が出来ず、そのまま一日を部屋の中で帰りを待っていれば気が付けばまた朝を迎えていた。ベットに座る俺を見下ろすアヴェリオはとりあえずと言う様に食事を近くに引き寄せた机に置いて食べ終えるまで監視された。
パンを食べる気にはなれずスープとヨーグルトだけはなんとか流し込むようにして食べた所で
「エーヴェルト殿下もかなり落ち込んでいらっしゃる。
お前が落ち込んでいる場合ではないぞ。
お前は宮廷騎士なのだから王家に忠誠を尽くす以上ここではエーヴェルト殿下を第一に考えろ。違わないか?」
そうだがと言いかけるが言葉が形にならなかった。
アヴェリオは溜息を吐いて
「お前からしたら王家への忠誠ではなくルードに会うための手段だからエーヴェルトの存在は二の次かも知れない。
我々もお前に望んだのは王家の忠誠ではなくルードの心を開いてもらう為の下心だ。
だがな、あいつは一人でも食っていける腕がある。そして金もある。
それにくらべてエーヴェルト殿下はどうだ?
親元から引き離されたばかりに遥か先の約束をしたつもりがその日の出来事になってしまうのではと怯えて泣き暮している。
一番頼りたい母親とはすぐに連絡が取れず、幸い同じ年位の子供が居てくれたから気を紛らわせてくれているが。
不安なのは誰もが抱えていのだから、せめてルードが帰って来た時にそんな心配し過ぎて死にそうな顔はやめろ」
言いながら隣に居たハイラが鏡で今の俺の顔を見せてくれて……
おふ……
さすがにこれはない……
斜め横に出来た旋毛に目の下の酷い隈、血流と水分不足からのガサガサの肌とひび割れた唇に酷い顔色……
一つ気付けばさすがに体臭も気になるのはお年頃と言うのもある。
最も任務になれば十日ぐらい普通に風呂に入らないからもっとひどいが、それでも濡れたタオルで身体を拭う事ぐらいはしている。
それすらしてない身体はまるでかつての様で……
さすがにこんな姿は見られたくない。
愛しているのだから、何時も愛されるにふさわしい姿でありたい。
「風呂に入ってくる」
とは言ってもいつ戻って来るかと気になって水を浴びる程度にしようかと思えばアヴェリオに腕を掴まれてそのまま風呂場に連行された。
その後ろをバスタオルを持ってハイラが付いて来ればそこには見るからに温かさそうな風呂が用意されていた。
「一人で入れるって……」
俺から服を引っぺがしている間にハイラはそれはそれは楽しそうに山のような石鹸の泡を泡立てていた。
風呂に入るだけだろ?と逃げ場がないかと見渡すも窓の外はまだ雪深い銀世界。
さすがにまっぱで飛び出す度胸はない。
唯一のドアの前に立つハイラをどうすればどけて脱出できるか悩んでいる間にアヴェリオに掴まりバスタブへと強制的に入れられてしまった。
「だから一人で入れるって!!!」
叫びながら出ようとするも力ずくで抑え込まれて足元の悪さも合わさり直ぐに口元まで沈められてしまった……
「たいちょー、なんか騒がしいけど……」
ひょっこりとトゥーレが頭だけを風呂場の様子を伺う様にドアの隙間から入れて来たけど、俺とアヴェリオの様子を見て
「何か前に家に住み着いていたネコを洗っていた時と光景ですね……」
うわぁ……なんて視線を逸らすのは俺が裸だからという理由ではない。
騎士の隊舎では時間がないからと何人か纏めて風呂に入る事も普通にあった。勿論風呂なんて入らずに扉のない仕切りだけのシャワーばかりだったが、シャワーを浴びた後すぐ服を着るわけはなく裸でうろうろするのはもうお約束なので見慣れた姿だからかぬれねずみ姿の俺を憐れむ視線が嫌でも突き刺さって逆に辛かった。
「おまえんちにネコ住み着いてたんだ……」
ここ最近になってまた家族の事を口に出すようになったトゥーレにお前の家でネコは見た事ないぞと言えば
「子供の頃ですよ。いつの間にか家を通り道にして、エサをあげて時々納屋を寝床にされてたんだけどいつの間にかいなくなったんですよ」
寿命だったのかなぁと呟く声から寂しさは感じられない代わりに懐かしさに溢れていた。
その顔のまま俺の側に来てアヴェリオに強制的に頭を洗われている俺の様子を見ながら
「そうそう、こんな感じ。
濡らされるまでは必死の抵抗なのに洗われたら大人しくして。
その後は納屋に逃げ込んで籠城するまでがお約束でしたが隊長はそこまでしませんよね?」
「トゥーレ……」
思わず名前を呼べばそれが合図のようにいかにもヤバい!と言う顔で逃げようとするも時すでに遅しで俺はトゥーレをバスタブの中に引きずり込んでぬれねずみをもう一匹作り上げた。
「隊長酷いっす!」
バスタブに頭から突っ込む事になったトゥーレのズボンのベルトを掴んで靴までびっしょりとなる様に引きずり込もうとする前に二人してバスタブの中で滑れば派手に水しぶきを上げ、思わず水を飲んでむせている俺達を横目にハイラが溢れたお湯の代わりに新しいお湯を追加してくれた。ハイラ冷静すぎるぞ……
「お前達は風呂も静かに入れないのか?!」
二次被害を受けたアヴェリオも酷い濡れざまで一人壁際で微笑んでいるハイラはアヴェリオとトゥーレの分のバスローブを用意してくれていた。
ヴォーグが森に閉じこもりなかなか戻ってこなくて心配していればシルビオが子供じゃないんだからすぐに帰ってきますよと馬が逃げ出したかのように気楽に言ってくれたが、俺が心配するのは体の方だと言うのにとトゥーレに視線を送ればすぐに何処かへと引きずって部屋を出て行ってくれたのがありがたかった。
「ラグナー隊は相変わらず涙そそる光景だな」
ヒトをモノのように扱うなんてと室内にいた宮廷騎士が怯えていたがそんなのは躾の問題だ。
「今日はもう休め」
アヴェリオにそう言われて部屋に戻ってヴォーグの帰りを寝ずに待っていれば気が付けば朝を迎えていた。
徹夜をしてしまった事はすぐにハイラに気づかれて速やかにアヴェリオに報告されて再度寝るようにと言われた物のヴォーグが心配で寝る事が出来ず、そのまま一日を部屋の中で帰りを待っていれば気が付けばまた朝を迎えていた。ベットに座る俺を見下ろすアヴェリオはとりあえずと言う様に食事を近くに引き寄せた机に置いて食べ終えるまで監視された。
パンを食べる気にはなれずスープとヨーグルトだけはなんとか流し込むようにして食べた所で
「エーヴェルト殿下もかなり落ち込んでいらっしゃる。
お前が落ち込んでいる場合ではないぞ。
お前は宮廷騎士なのだから王家に忠誠を尽くす以上ここではエーヴェルト殿下を第一に考えろ。違わないか?」
そうだがと言いかけるが言葉が形にならなかった。
アヴェリオは溜息を吐いて
「お前からしたら王家への忠誠ではなくルードに会うための手段だからエーヴェルトの存在は二の次かも知れない。
我々もお前に望んだのは王家の忠誠ではなくルードの心を開いてもらう為の下心だ。
だがな、あいつは一人でも食っていける腕がある。そして金もある。
それにくらべてエーヴェルト殿下はどうだ?
親元から引き離されたばかりに遥か先の約束をしたつもりがその日の出来事になってしまうのではと怯えて泣き暮している。
一番頼りたい母親とはすぐに連絡が取れず、幸い同じ年位の子供が居てくれたから気を紛らわせてくれているが。
不安なのは誰もが抱えていのだから、せめてルードが帰って来た時にそんな心配し過ぎて死にそうな顔はやめろ」
言いながら隣に居たハイラが鏡で今の俺の顔を見せてくれて……
おふ……
さすがにこれはない……
斜め横に出来た旋毛に目の下の酷い隈、血流と水分不足からのガサガサの肌とひび割れた唇に酷い顔色……
一つ気付けばさすがに体臭も気になるのはお年頃と言うのもある。
最も任務になれば十日ぐらい普通に風呂に入らないからもっとひどいが、それでも濡れたタオルで身体を拭う事ぐらいはしている。
それすらしてない身体はまるでかつての様で……
さすがにこんな姿は見られたくない。
愛しているのだから、何時も愛されるにふさわしい姿でありたい。
「風呂に入ってくる」
とは言ってもいつ戻って来るかと気になって水を浴びる程度にしようかと思えばアヴェリオに腕を掴まれてそのまま風呂場に連行された。
その後ろをバスタオルを持ってハイラが付いて来ればそこには見るからに温かさそうな風呂が用意されていた。
「一人で入れるって……」
俺から服を引っぺがしている間にハイラはそれはそれは楽しそうに山のような石鹸の泡を泡立てていた。
風呂に入るだけだろ?と逃げ場がないかと見渡すも窓の外はまだ雪深い銀世界。
さすがにまっぱで飛び出す度胸はない。
唯一のドアの前に立つハイラをどうすればどけて脱出できるか悩んでいる間にアヴェリオに掴まりバスタブへと強制的に入れられてしまった。
「だから一人で入れるって!!!」
叫びながら出ようとするも力ずくで抑え込まれて足元の悪さも合わさり直ぐに口元まで沈められてしまった……
「たいちょー、なんか騒がしいけど……」
ひょっこりとトゥーレが頭だけを風呂場の様子を伺う様にドアの隙間から入れて来たけど、俺とアヴェリオの様子を見て
「何か前に家に住み着いていたネコを洗っていた時と光景ですね……」
うわぁ……なんて視線を逸らすのは俺が裸だからという理由ではない。
騎士の隊舎では時間がないからと何人か纏めて風呂に入る事も普通にあった。勿論風呂なんて入らずに扉のない仕切りだけのシャワーばかりだったが、シャワーを浴びた後すぐ服を着るわけはなく裸でうろうろするのはもうお約束なので見慣れた姿だからかぬれねずみ姿の俺を憐れむ視線が嫌でも突き刺さって逆に辛かった。
「おまえんちにネコ住み着いてたんだ……」
ここ最近になってまた家族の事を口に出すようになったトゥーレにお前の家でネコは見た事ないぞと言えば
「子供の頃ですよ。いつの間にか家を通り道にして、エサをあげて時々納屋を寝床にされてたんだけどいつの間にかいなくなったんですよ」
寿命だったのかなぁと呟く声から寂しさは感じられない代わりに懐かしさに溢れていた。
その顔のまま俺の側に来てアヴェリオに強制的に頭を洗われている俺の様子を見ながら
「そうそう、こんな感じ。
濡らされるまでは必死の抵抗なのに洗われたら大人しくして。
その後は納屋に逃げ込んで籠城するまでがお約束でしたが隊長はそこまでしませんよね?」
「トゥーレ……」
思わず名前を呼べばそれが合図のようにいかにもヤバい!と言う顔で逃げようとするも時すでに遅しで俺はトゥーレをバスタブの中に引きずり込んでぬれねずみをもう一匹作り上げた。
「隊長酷いっす!」
バスタブに頭から突っ込む事になったトゥーレのズボンのベルトを掴んで靴までびっしょりとなる様に引きずり込もうとする前に二人してバスタブの中で滑れば派手に水しぶきを上げ、思わず水を飲んでむせている俺達を横目にハイラが溢れたお湯の代わりに新しいお湯を追加してくれた。ハイラ冷静すぎるぞ……
「お前達は風呂も静かに入れないのか?!」
二次被害を受けたアヴェリオも酷い濡れざまで一人壁際で微笑んでいるハイラはアヴェリオとトゥーレの分のバスローブを用意してくれていた。
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