うちの隊長は補佐官殿が気になるようですが

雪那 由多

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うちの伴侶は子供には優しい大人のようです

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 周囲は大丈夫なのかと心配気に目配せされるようにエーヴェルトもまた俯き加減となり、何やら震えてる手を見る限り泣くのを堪えているのだろうと推測する。
 初めて自分から一人でまだ親しくもない大人に物を頼んだのだろう恐怖に負けてしまったのはこの後も考えれば内向的になってしまうとこれだけの注目を集めた場では辞めさせるべきだと口を挟もうとするも

「この皿は先ほど全部私の不手際で割ってしまったと説明したのですが、本当は兄上のお土産が何でこんな皿なのかと頂いて包みを開けた側から目の前で割ってしまった物です」

 誰もが息を飲んでその言葉を疑った。
 当然エーヴェルトも泣きそうな顔が固まり、そのまま疑う様にイザムとヴォーグへと視線を何度も往復させていた。

「総ての欠片を執事達が拾い集めてくれましたが、修復したからとは言えども許される事とは思っていません。
 ですのでこれの修復は私の一つのけじめなのです。
 これに限っては誰の手も借りずに一人で直さなくてはいけない物なので欠片一つとは言えエーヴェルト殿下に手伝っていただくわけにはなりません」

 美しい絵が描かれた破片をその小さな手からそっと取り戻し、蓋をしめて収納空間に片づけたイザムこそ自分のしでかした愚かな真似に泣きだしそうだった。

「それまだとっておいたんだね」

 ヴォーグの優しい声にただ声もなく頷くイザムは本当に悪かったと今は思っているようで頷いた拍子に机に小さな水たまりを作っていた。

「反省もしてるようだし、もう気にするなといいたいのだが一つだけ覚えてほしいんだ」

 ヴォーグはいつの間にか食事を終えていてカップに手を伸ばして紅茶を一口飲んだ後

「もすごい下世話な話で申し訳ないんだけど、絵付けしてない真っ白な状態の皿でも一枚金貨十枚ちょっとはするとても高価な物だったんだ。
 俺の絵付けとか土産どうこうというよりバイトして貯めた金貨百五十枚分を一瞬で砕かれたショックの方が大きかったんだ」
「えっと、つまりその皿二枚で騎士団時代の俺の給料約一ヶ月分……」

 シルビオの判りやすい価値観への換算にその皿がどれだけの代物なのかが誰もが理解してイザムに白い目を向けていた。既に同情も何もなかった。

「か、必ず全部修復させていただきます」
「まぁ、幸い時間だけはあるからな。しっかり直せよ」
「それはもう、はい……」

 と泣き出した所でイザムは朝食を食べていたテーブルに戻り狩りなんてしてないで早く直そうなと言われていたが、まあ当然だろうと生暖かい目で見守りながらも食事を再開する。
 すっかりと意気消沈と言う様に力なく座っているエーヴェルトに
 
「でしたらこちらの修復をエーヴにお願いしましょう」

 取り出したのは同じようにな植物の葉を精密に描いた

「カップが……」
「先ほど温室でうとうとしてた時に落としてしまってね。
 イザム、悪いがこれを使って修復を教えて上げれるかな?」
「兄上……
 それって、昨夜温室で使ってた奴……」
「花が咲くのを待ってるうちに本を読み始めたら気付いたら朝だった。
 その時にやってしまってね」
「ラグナーさん部屋に戻って貰ったって言うのに……」
「ええ?!そうだったの!
 ごめんラグナー、部屋に戻る前に温室寄ったのが間違いだった……」

 てっきり会議で帰ってこないと思ってたと言う言葉に苦笑して

「まあ、俺もうまく連絡鳥をマスターできるように頑張るさ」

 目に見える相手になら出来るようになった物のまだ人が常時放出している魔力の波動で区別する為にはできない魔法を頑張ると笑って言えば先ほどまでの重い空気はどこにもない。
 ヴォーグはエーヴェルトに大きく割れたカップをそっと小さな手の平に乗せれば今度こそ笑顔が花開いて

「イザム、どうか私にこのカップの修復の仕方を教えてください」
「それは勿論喜んで」
「エーヴ、無事修復できたらそれはあげよう。
 頑張って直すと良い」
「はい!頑張ります!」

 子供の弾む声が食堂に響き渡り、誰もがどうなるかと思っていた幼い次の主のあかるい声にいつの間にか冷め切ってしまった料理を口へと運ぶのだった。
 



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