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うちの隊長は年の離れた弟が出来た気分です
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謁見の間に集まる前に朝食を済まそうと食堂へと向かえば既にそこは珍しく人でごった返していた。
まるで城で働く者全員が集まっているのではないかと言う光景を見てこんなにも人がいたのかと感心をしていれば
「隊長ー!」
どこからか聞こえる聞き覚えのある声に視線を向ければ
「お前ら、その顔徹夜か?」
「そりゃ隊長の人生最大の見せ場なのですから。ヴォーグさんが脱がすのを勿体ない位美人に仕立てて見せますね」
「シルビオは朝からスープで顔を洗いたいようだな」
「あ、本気でごめんなさい。食べ物は粗末にしたらいけません!」
その悲鳴に誰ともなくスープを掻きこむ音に溜息を零しつつ
「それより隊長はお一人ですか?」
既に食べ終わったのかトゥーレがデザートのフルーツを隣の皿からつまみ食いをしていればエーヴェルト殿下を連れたアヴェリオがやってきた。どうやら俺の姿が目立ったらしくアヴェリオは殿下を連れて俺が座ろうとした場所へと来ればシルビオ隊の既に食べ終わった奴らはすぐに皿を下げてテーブルを綺麗にしてくれた。
「エーヴェルト殿下おはようございます。
昨日の旅の疲れは大丈夫でしょうか?」
丁寧な騎士の礼をすれば周囲の者達まで立ち上がり背筋を伸ばして待機の態勢に入るものの
「おはようございます。
皆さん楽にしてお食事を続けてください」
その言葉に誰ともなく席について食事を始める物のさっきまでの賑わいは緊張からか失せてしまっていた。
それを何処か寂しそうな顔で周囲を伺う殿下の隣に立つ男に向かって
「殿下のお食事は?」
「これからです。
お部屋にご用意しようとしたのですがこちらに食堂があり、大公はこちらで召し上がっている事をお話しした所食堂で食べたいとなりまして」
予定外なのか困惑気な色を向けられれば俺は蝋ですす汚れた天井を見上げ
「でしたら私もこれから食事を取りに行きます。
アヴェリオと共に食堂の使い方を覚えましょう」
「は、はい!よろしくお願いします」
招かざる客とでも思われたと言う様に緊張を孕んだ顔は俺の言葉といっしょに消えさって、先導する俺の後ろを追いかけてくる鳥の雛のように着いて来た。勿論その後ろにアヴェリオが慌てて着いて来るのがなんだかおもしろく思って殿下の手を引いて狭い通路を案内するのだった。
ぎょっとするアヴェリオと手を引いてもらえて安心したかのようについて来た殿下にまず料理が並ぶテーブルまできてトレーを持たせた。
「料理はこちらにある中から好きな物を選んでください。
いろいろ目移りすると思いますが食べきれる量を給仕に伝えてください。特になければ通常の量をよそってくれます。パンは好きなだけ食べれますし、おやつに持って行っても良いのであの方のように大目に持って行かれる方もいます」
近くに座っていた男は五つのパンを積み上げているのを殿下は驚きつつも
「あちらの方はどのようなお仕事をしてる方なのでしょう?」
騎士服でもなく制服でもない姿の人を物珍しく見る殿下の様子に王城では決してあるはずのない光景に俺もアヴェリオもしまったと思うも
「彼らは厩舎の管理人をしているクルト厩舎長を始めとしたシッセ、カール、マルコです」
突然の説明だが名前を呼ばれた男は立ち上がり頭を下げる。
「このアルホルンの厩舎の管理人と動物の世話をしています。
ファガーも今頃朝食を食べ終えて放牧されている時間帯でしょう。あとで様子を見に行ってみましょうか?
彼らは厩舎の掃除を終えるこの時間帯が朝食の時間ですのでお見かけしたら声をかけてあげてください」
「アルホルン大公!
おはようございます」
「エーヴもおはようございます」
エーヴェルトは満面の笑顔で姿勢を正して丁寧なあいさつをしていた。すっかり昨日の乗馬でヴォーグに懐いてしまっていたようだった。
おかしいな、最初馬に乗せたのは俺の方なのにとラグナーは納得いかない顔をしていたものの
「私の采配でこの城で働く者は皆同じこの食堂を使って食事をします。
人の少ないこの城で、ましてや昼時にこちらで食事をする時間が厳しい彼らなので孤立しない様に朝と夜の食事はこちらで取る事を義務付けています。
こうでもしないと私を始め中々顔を合わす機会に恵まれないので、同じ城に務める者同士知らないではゆるさないとこのような場を設けております」
「それは素敵な提案ですね」
「よろしければこの取り組みは続けていただけると幸いです」
「もちろんです!
あの、所で私もこちらで食事を頂いてもよろしいのでしょうか?」
まだ何も乗ってないトレーを抱きしめて不安げにたずねる様子にヴォーグは満面の笑みをみせて
「当然です。ですがお風邪をひいてしまった時はお部屋でお召し上がりになりましょう」
「はい……」
大切に育てられる王族は良く風邪をひくと聞くが、殿下もその一人なのだろう。
「なので当面のエーヴのお勉強は良く食べて良く体を動かし、そして勉強をするです。
本日の予定はご飯を食べながらお話ししましょう。
さて、何を食べます?
私はパンとスープ、サラダに卵とソーセージを頂く予定です」
「でしたら、私もパンとスープ、卵と……」
「デザートはいかがです?こちらのプディングは中々お勧めですよ?」
「ではそちらを頂きます。
ああ、ラグナーは何に致しますか?」
アヴェリオに手伝ってもらいながらトレーに量は少なめにしてもらって乗せればそれでも意外と重いのでそろりそろりと歩く様子に言葉ほど周囲を気遣ってあげれる余裕はない。
当面はこのテーブルの側が殿下の食事の時の席だなと考えてながらも何とかテーブルに無事運びきった殿下はほっとした顔を隠せずにどこか誇らしくもしていた様子を誰もが微笑ましく見守るのだった。
まるで城で働く者全員が集まっているのではないかと言う光景を見てこんなにも人がいたのかと感心をしていれば
「隊長ー!」
どこからか聞こえる聞き覚えのある声に視線を向ければ
「お前ら、その顔徹夜か?」
「そりゃ隊長の人生最大の見せ場なのですから。ヴォーグさんが脱がすのを勿体ない位美人に仕立てて見せますね」
「シルビオは朝からスープで顔を洗いたいようだな」
「あ、本気でごめんなさい。食べ物は粗末にしたらいけません!」
その悲鳴に誰ともなくスープを掻きこむ音に溜息を零しつつ
「それより隊長はお一人ですか?」
既に食べ終わったのかトゥーレがデザートのフルーツを隣の皿からつまみ食いをしていればエーヴェルト殿下を連れたアヴェリオがやってきた。どうやら俺の姿が目立ったらしくアヴェリオは殿下を連れて俺が座ろうとした場所へと来ればシルビオ隊の既に食べ終わった奴らはすぐに皿を下げてテーブルを綺麗にしてくれた。
「エーヴェルト殿下おはようございます。
昨日の旅の疲れは大丈夫でしょうか?」
丁寧な騎士の礼をすれば周囲の者達まで立ち上がり背筋を伸ばして待機の態勢に入るものの
「おはようございます。
皆さん楽にしてお食事を続けてください」
その言葉に誰ともなく席について食事を始める物のさっきまでの賑わいは緊張からか失せてしまっていた。
それを何処か寂しそうな顔で周囲を伺う殿下の隣に立つ男に向かって
「殿下のお食事は?」
「これからです。
お部屋にご用意しようとしたのですがこちらに食堂があり、大公はこちらで召し上がっている事をお話しした所食堂で食べたいとなりまして」
予定外なのか困惑気な色を向けられれば俺は蝋ですす汚れた天井を見上げ
「でしたら私もこれから食事を取りに行きます。
アヴェリオと共に食堂の使い方を覚えましょう」
「は、はい!よろしくお願いします」
招かざる客とでも思われたと言う様に緊張を孕んだ顔は俺の言葉といっしょに消えさって、先導する俺の後ろを追いかけてくる鳥の雛のように着いて来た。勿論その後ろにアヴェリオが慌てて着いて来るのがなんだかおもしろく思って殿下の手を引いて狭い通路を案内するのだった。
ぎょっとするアヴェリオと手を引いてもらえて安心したかのようについて来た殿下にまず料理が並ぶテーブルまできてトレーを持たせた。
「料理はこちらにある中から好きな物を選んでください。
いろいろ目移りすると思いますが食べきれる量を給仕に伝えてください。特になければ通常の量をよそってくれます。パンは好きなだけ食べれますし、おやつに持って行っても良いのであの方のように大目に持って行かれる方もいます」
近くに座っていた男は五つのパンを積み上げているのを殿下は驚きつつも
「あちらの方はどのようなお仕事をしてる方なのでしょう?」
騎士服でもなく制服でもない姿の人を物珍しく見る殿下の様子に王城では決してあるはずのない光景に俺もアヴェリオもしまったと思うも
「彼らは厩舎の管理人をしているクルト厩舎長を始めとしたシッセ、カール、マルコです」
突然の説明だが名前を呼ばれた男は立ち上がり頭を下げる。
「このアルホルンの厩舎の管理人と動物の世話をしています。
ファガーも今頃朝食を食べ終えて放牧されている時間帯でしょう。あとで様子を見に行ってみましょうか?
彼らは厩舎の掃除を終えるこの時間帯が朝食の時間ですのでお見かけしたら声をかけてあげてください」
「アルホルン大公!
おはようございます」
「エーヴもおはようございます」
エーヴェルトは満面の笑顔で姿勢を正して丁寧なあいさつをしていた。すっかり昨日の乗馬でヴォーグに懐いてしまっていたようだった。
おかしいな、最初馬に乗せたのは俺の方なのにとラグナーは納得いかない顔をしていたものの
「私の采配でこの城で働く者は皆同じこの食堂を使って食事をします。
人の少ないこの城で、ましてや昼時にこちらで食事をする時間が厳しい彼らなので孤立しない様に朝と夜の食事はこちらで取る事を義務付けています。
こうでもしないと私を始め中々顔を合わす機会に恵まれないので、同じ城に務める者同士知らないではゆるさないとこのような場を設けております」
「それは素敵な提案ですね」
「よろしければこの取り組みは続けていただけると幸いです」
「もちろんです!
あの、所で私もこちらで食事を頂いてもよろしいのでしょうか?」
まだ何も乗ってないトレーを抱きしめて不安げにたずねる様子にヴォーグは満面の笑みをみせて
「当然です。ですがお風邪をひいてしまった時はお部屋でお召し上がりになりましょう」
「はい……」
大切に育てられる王族は良く風邪をひくと聞くが、殿下もその一人なのだろう。
「なので当面のエーヴのお勉強は良く食べて良く体を動かし、そして勉強をするです。
本日の予定はご飯を食べながらお話ししましょう。
さて、何を食べます?
私はパンとスープ、サラダに卵とソーセージを頂く予定です」
「でしたら、私もパンとスープ、卵と……」
「デザートはいかがです?こちらのプディングは中々お勧めですよ?」
「ではそちらを頂きます。
ああ、ラグナーは何に致しますか?」
アヴェリオに手伝ってもらいながらトレーに量は少なめにしてもらって乗せればそれでも意外と重いのでそろりそろりと歩く様子に言葉ほど周囲を気遣ってあげれる余裕はない。
当面はこのテーブルの側が殿下の食事の時の席だなと考えてながらも何とかテーブルに無事運びきった殿下はほっとした顔を隠せずにどこか誇らしくもしていた様子を誰もが微笑ましく見守るのだった。
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