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うちの隊長はその魔法の攻略法を思いつきませんでした
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なんて美しい魔法なのだろうと思うも同時にどうすれば対処出来るのか想像が追いつかない恐ろしささえ覚えずにはいられないヴォーグの魔法は正直あまり見た事がない種類の物だ。
「ミシェレ駄目よ!こんな魔法に対抗何て出来ない!
お願い落ち着いて!私達は勇者よりもあなたの安全を優先しなくてはいけないのだから!」
女魔道士の悲鳴に既に役目を終えた勇者の価値は王女よりも低い事がうかがい知れた。
「放して!
国の為に戦士でもなかったのに私達の為に戦ってくれたオウラを助けなくては私達の正義はどこにあると言うのです!」
悲痛なまでの涙ながらの王女の叫びにヴォーグは確かにと言う様に頷くも
「でもその正義はもう終わってしまったのですよ。
そして彼は勇者の剣を人に向けたただの罪人になってしまった」
悲しげな眼差しでオウラを見る目に尚も戦いを挑まんとする強い視線にヴォーグは心臓に向かって真っすぐに剣の先を突きつけて
「その状態でも魔法で攻撃しようとする強い精神、勇者よ見事。
だけど覚えているね?
お前には魔王に対抗できるだけの魔力を育て、魔王と対峙する為の強い魔法を教えてきた。理性を放棄して感情で使う時が来たらお前を育てた俺が責任もってお前に止めを刺すと約束したはずだ」
まさかの言葉に王女の悲鳴が城内に響き渡る。
ヴォーグの宣言に対してもまだ強い意志を持って睨みつける勇者にヴォーグは心臓の上に置いた剣先を無言で埋め込んだ。
「っか、あっ!!!」
「やめてぇぇぇーーー!!!」
血反吐を吐きながらの短い悲鳴と王女の悲鳴にさすがの宮廷騎士も少し隙を見せるもヴォーグの光の剣の輪の中から抜け出す事が出来ないまま手を伸ばして慈悲を乞い続け、今なら間に合うはずだと涙を流して祈りの言葉を捧げる聖女の白魔法だろうか。
城内を埋め尽くさんとばかりの奇跡の輝きは途端に途切れる様にかき消えた。
王女に冷たい視線を向けるヴォーグは
「王女よ、オウラの魔力回路は断ち切った。
剣を操る両手を失い魔力を喪失した勇者に回復魔法を与えても失われた物はもう戻らない」
言いながらヴォーグは手を真っ直ぐ天井へと上げればその先で無数の光の剣が形成された。
その数に勇者の瞳から抵抗の強い意志の色は失せ、そして王女達も言葉を失う。
「魔王の血を浴び理性をなくした勇者オウラよ、このバックストロムの剣の目の前で我らが王に剣を向けた報いその身を持って受け入れろ」
何か言いたげに口を開いた勇者から離れれば作られた光の剣が一斉に勇者へと剣先を向ける。
ひょっとしてあの剣一本一本をコントロールしているのかと、ヴォーグのすさまじい魔法とコントロールに勇者一行だけではなくSクラスの冒険者となったマイヤでさえ顔を青ざめて「こんな事出来るわけないわ」と呟いてただ見ていた。
そして命令を下したと言うように振り下ろされた腕の動きと同時に剣は勇者に向かって一斉に襲い掛かり、勇者を貫いたと同時に剣の一つ一つが光り輝くように爆ぜて……
光が収まる頃には粉々になった瓦礫と化した床と飛び散った血のり。
ほんの少し緑の匂いが漂っていた……
ヴォーグはその状況を魔法でまるで何も起きていなかったと言うように綺麗に元通りにして残された両腕と勇者が持つ聖剣を手に取った。
「王女よ、この聖剣に埋め込まれた精霊石はもともと私の私物だ。
勇者に躾一つできない貴女方にこの精霊石を預ける事は出来ない」
言いながら聖剣から精霊石を取り外して空間に片づけてしまった。
そしてそのまま節くれだった血の気のない腕を抱きしめて指先には消えない幾つもの傷跡を付けた手を少し寂しそうに頬を寄せて目を瞑り、そこから一筋の涙があふれ、流れた。
あそこまでの無慈悲な攻撃をしたとは思えないほどの静かな別れに彼がいかに心を殺してまで彼を諌めようとしたのか、もう少し対話が出来なかったのかと今更ながら考えてしまうももうそんな時は過ぎ去ってしまったのだ。
ヴォーグはその腕を持って王女の前に立つ。
光の剣は何かあっても良い様に王女とヴォーグの脇に立つと言う様に移動する中で
「この出来事を国に帰って王に報告を。
オウラの腕は貴女方に返そう。
この一件があれども貴女方は勇者となって国を救ったオウラに健やかに眠れる場所を与えてください」
最後にオウラの手の甲に唇を落して別れを告げるヴォーグから腕を受け取った王女はその腕を抱きしめて泣き崩れてしまった。
ひょっとして彼を思っていたのではと見ればわかる様子に誰もが静かに見守る中
「ゴルディーニ、彼女達を国境まで丁重に送ってください」
その指示にようやく時が動き出した。
ゴルディーニは彼女達全員を王女に対する様に手を差し伸べ、勇者が残した腕を包む様にどこからかもってきた布でくるんでいた。
仲間の死に涙の止め方が判らないと言わんばかりに泣きながら退場して行った一行を見送った後に
「陛下、私も少し疲れたので早々ですが失礼します」
美しい姿勢で一礼をした後この場を去るヴォーグを呆然と見送ってしまえば
「ラグナー」
エリオット殿下につつかれて我に返った俺は背後の専用の通路からこの場を二人して抜け出した。
「ミシェレ駄目よ!こんな魔法に対抗何て出来ない!
お願い落ち着いて!私達は勇者よりもあなたの安全を優先しなくてはいけないのだから!」
女魔道士の悲鳴に既に役目を終えた勇者の価値は王女よりも低い事がうかがい知れた。
「放して!
国の為に戦士でもなかったのに私達の為に戦ってくれたオウラを助けなくては私達の正義はどこにあると言うのです!」
悲痛なまでの涙ながらの王女の叫びにヴォーグは確かにと言う様に頷くも
「でもその正義はもう終わってしまったのですよ。
そして彼は勇者の剣を人に向けたただの罪人になってしまった」
悲しげな眼差しでオウラを見る目に尚も戦いを挑まんとする強い視線にヴォーグは心臓に向かって真っすぐに剣の先を突きつけて
「その状態でも魔法で攻撃しようとする強い精神、勇者よ見事。
だけど覚えているね?
お前には魔王に対抗できるだけの魔力を育て、魔王と対峙する為の強い魔法を教えてきた。理性を放棄して感情で使う時が来たらお前を育てた俺が責任もってお前に止めを刺すと約束したはずだ」
まさかの言葉に王女の悲鳴が城内に響き渡る。
ヴォーグの宣言に対してもまだ強い意志を持って睨みつける勇者にヴォーグは心臓の上に置いた剣先を無言で埋め込んだ。
「っか、あっ!!!」
「やめてぇぇぇーーー!!!」
血反吐を吐きながらの短い悲鳴と王女の悲鳴にさすがの宮廷騎士も少し隙を見せるもヴォーグの光の剣の輪の中から抜け出す事が出来ないまま手を伸ばして慈悲を乞い続け、今なら間に合うはずだと涙を流して祈りの言葉を捧げる聖女の白魔法だろうか。
城内を埋め尽くさんとばかりの奇跡の輝きは途端に途切れる様にかき消えた。
王女に冷たい視線を向けるヴォーグは
「王女よ、オウラの魔力回路は断ち切った。
剣を操る両手を失い魔力を喪失した勇者に回復魔法を与えても失われた物はもう戻らない」
言いながらヴォーグは手を真っ直ぐ天井へと上げればその先で無数の光の剣が形成された。
その数に勇者の瞳から抵抗の強い意志の色は失せ、そして王女達も言葉を失う。
「魔王の血を浴び理性をなくした勇者オウラよ、このバックストロムの剣の目の前で我らが王に剣を向けた報いその身を持って受け入れろ」
何か言いたげに口を開いた勇者から離れれば作られた光の剣が一斉に勇者へと剣先を向ける。
ひょっとしてあの剣一本一本をコントロールしているのかと、ヴォーグのすさまじい魔法とコントロールに勇者一行だけではなくSクラスの冒険者となったマイヤでさえ顔を青ざめて「こんな事出来るわけないわ」と呟いてただ見ていた。
そして命令を下したと言うように振り下ろされた腕の動きと同時に剣は勇者に向かって一斉に襲い掛かり、勇者を貫いたと同時に剣の一つ一つが光り輝くように爆ぜて……
光が収まる頃には粉々になった瓦礫と化した床と飛び散った血のり。
ほんの少し緑の匂いが漂っていた……
ヴォーグはその状況を魔法でまるで何も起きていなかったと言うように綺麗に元通りにして残された両腕と勇者が持つ聖剣を手に取った。
「王女よ、この聖剣に埋め込まれた精霊石はもともと私の私物だ。
勇者に躾一つできない貴女方にこの精霊石を預ける事は出来ない」
言いながら聖剣から精霊石を取り外して空間に片づけてしまった。
そしてそのまま節くれだった血の気のない腕を抱きしめて指先には消えない幾つもの傷跡を付けた手を少し寂しそうに頬を寄せて目を瞑り、そこから一筋の涙があふれ、流れた。
あそこまでの無慈悲な攻撃をしたとは思えないほどの静かな別れに彼がいかに心を殺してまで彼を諌めようとしたのか、もう少し対話が出来なかったのかと今更ながら考えてしまうももうそんな時は過ぎ去ってしまったのだ。
ヴォーグはその腕を持って王女の前に立つ。
光の剣は何かあっても良い様に王女とヴォーグの脇に立つと言う様に移動する中で
「この出来事を国に帰って王に報告を。
オウラの腕は貴女方に返そう。
この一件があれども貴女方は勇者となって国を救ったオウラに健やかに眠れる場所を与えてください」
最後にオウラの手の甲に唇を落して別れを告げるヴォーグから腕を受け取った王女はその腕を抱きしめて泣き崩れてしまった。
ひょっとして彼を思っていたのではと見ればわかる様子に誰もが静かに見守る中
「ゴルディーニ、彼女達を国境まで丁重に送ってください」
その指示にようやく時が動き出した。
ゴルディーニは彼女達全員を王女に対する様に手を差し伸べ、勇者が残した腕を包む様にどこからかもってきた布でくるんでいた。
仲間の死に涙の止め方が判らないと言わんばかりに泣きながら退場して行った一行を見送った後に
「陛下、私も少し疲れたので早々ですが失礼します」
美しい姿勢で一礼をした後この場を去るヴォーグを呆然と見送ってしまえば
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