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うちの隊長は話題の人に会えると楽しみにしていたけどどうやら雲行きが怪しいようです
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「……知り合いと言えば知り合いだな」
とても気まずそうな返答に嫌な予感が更に濃くなる。
先日勇者一行が魔王を倒したと世間をにぎわせたばかりだし、その新聞記事を見てヴォーグは遠く離れた国に一人で出向くと言う事をしたばかりなのだ。
まるで彼が来るのを予想しての行動だと言うようなタイミングに俺は思わずヴォーグを見上げてしまう。
「家出中に彼に出会って剣や魔法を教えたり、一年ほど前、そうだな。トゥーレは会っていたな。
隣国で俺がオークションに参加した時に一緒に居た奴だ」
「覚えています。
隣国に来てまで隊長以外の男を侍らせていたのかと飽きれたのですから……」
「シルビオと言いお前ら俺を節操なしにしてないか?」
「そりゃ……奥さんとお妾さんと恋人を一部屋に詰め込むだけの根性があるんだし……」
いらんことを言うシルビオの言葉にエリオット殿下は「あの可愛かったルードはもういないんだな」と寂しげにつぶやいた声が妙に虚しく室内に響き渡った。
「ああ、ええと、あの方がこちらにいらっしゃった理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
本来なら口を聞くのも許されない身分になってしまったトゥーレだが誰もがシルビオのバカな発言に思考がおそろかになっているのを見てかその発想に導いてしまった反省に無理やり話を戻せば
「勇者殿が言うにはお前から援助をしてもらったポーションやエリクサーなどにものすごく助けられたと言っていた。
さらに終盤では六魔将軍を共に倒してくれた礼も改めてさせて欲しいと、魔王討伐を国に報告して真っ先にこのバックストロムまで足を運んでくれたそうだ。
何でもこれから聖女を始めとする仲間と援助をしてくれた各国にお礼に足を運ぶ事になっているらしく、まずは勇者同盟に加盟してない我が国からの大量の食糧支援と言う人道的支援と聖剣の手掛かりを渡してくれた我が国をスタートにしてくれたそうだ」
「お前、聖剣なんて持ってたのか?」
思わず聞いてしまうも苦笑して
「持ってるわけありませんよ。
ただ聖剣とするべく核を持っていただけです。
それを鍛冶師の所に持って行き剣を作って貰えってそう言っただけですよ」
ちらりと見たのは無造作に床に広げられた剣の山。
エリオット殿下も一体それは何だとさっきからチラ見しているがまるで渡さないぞと言わんばかりにその前に宮廷騎士が立っているのが妙におかしく見えた。
「精霊が亡くなった後、その存在を残すように彼らは石化します。
一見魔石のような姿ですがこれらを正しくは精霊石と呼び魔石とはけた違いの魔力を内包していますが時にはその意志まで残します。
聖剣たる剣にはそのような希少な精霊石を使用するので精霊の居ないこの大陸ではまず見つける事が出来なく、東にいた俺はたまたまそれを持っていたので渡しただけです」
言いながらも俺が持ってた中で一番良い石で一番危険な石なんですよーとの説明を付け加える。
危険って言う言葉に聞き捨てならない物のすぐそばにいたリオネルが妙に神妙な顔をして頷いていた辺り何か知ってるなと後で聞きだそうと今は思う事にして置いた。
「殿下、それでなぜそのような難しいお顔をなされているのですか?」
元団が一度も勇者相手に興奮したような気配もなく眉間に皺を寄せている事に気づいてヴォーグを見れば
「まぁ、その事もあって話しを聞きに出かけたのだが……
詳しい事は直接彼らと会って向こうの出方を見てから説明する。
ただあまり愉快な話にはならないから、シルビオ、トゥーレ」
二人の名前を呼べば突然の指名にいぶかしげな視線でヴォーグを見る。この流れではめんどくさい事は判ってるとは言えどもそれよりも不安の方が大きいのだろう。
「多分、あいつ暴れるとおもうから武装解除してこの部屋に放り込む。
暴れないように俺がここに戻るまで押さえつけておいてほしい」
「おいおい、穏やかじゃないな」
宮廷騎士達も急に気配が代わりハイラ達もにこやかな顔は少しだけなりを潜めていた。
「それだけのショックがあいつにあって、この国にわざわざ足を運んだのはそれを確かめに来たと言う事なんだろうね。
だけどあいつはまだ勇者の仕事をすべて終わらせてないから……」
そこまで呟いたヴォーグは俯いて何かの言葉を呑み込んでいた。
「そうだ。連れの子達は一緒にいるのかな?
聖女と魔道士、あと剣士と格闘家だったかな?
全員そろってる?」
呑み込んだ言葉を誤魔化すように尋ねるヴォーグに殿下は眉をひそめて
「勇者パーティ五人全員そろってるぞ」
言葉を選ぶように最低限の返答にヴォーグは頷く。
「新聞で知ってはいたけど、やっぱり顔を知ってる間がらだから全員が無事で安心したよ」
いつの間にかいつものにこにことした顔の穏やかな声に先ほどの不安な言葉を聞く事は憚られもう一度改めて聞くタイミングを逃してしまった。
だけど一刻後に対面するにあたってこの時意地でも聞きだしておけばよかった事をこの場に居た俺達は痛感するのだった。
とても気まずそうな返答に嫌な予感が更に濃くなる。
先日勇者一行が魔王を倒したと世間をにぎわせたばかりだし、その新聞記事を見てヴォーグは遠く離れた国に一人で出向くと言う事をしたばかりなのだ。
まるで彼が来るのを予想しての行動だと言うようなタイミングに俺は思わずヴォーグを見上げてしまう。
「家出中に彼に出会って剣や魔法を教えたり、一年ほど前、そうだな。トゥーレは会っていたな。
隣国で俺がオークションに参加した時に一緒に居た奴だ」
「覚えています。
隣国に来てまで隊長以外の男を侍らせていたのかと飽きれたのですから……」
「シルビオと言いお前ら俺を節操なしにしてないか?」
「そりゃ……奥さんとお妾さんと恋人を一部屋に詰め込むだけの根性があるんだし……」
いらんことを言うシルビオの言葉にエリオット殿下は「あの可愛かったルードはもういないんだな」と寂しげにつぶやいた声が妙に虚しく室内に響き渡った。
「ああ、ええと、あの方がこちらにいらっしゃった理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
本来なら口を聞くのも許されない身分になってしまったトゥーレだが誰もがシルビオのバカな発言に思考がおそろかになっているのを見てかその発想に導いてしまった反省に無理やり話を戻せば
「勇者殿が言うにはお前から援助をしてもらったポーションやエリクサーなどにものすごく助けられたと言っていた。
さらに終盤では六魔将軍を共に倒してくれた礼も改めてさせて欲しいと、魔王討伐を国に報告して真っ先にこのバックストロムまで足を運んでくれたそうだ。
何でもこれから聖女を始めとする仲間と援助をしてくれた各国にお礼に足を運ぶ事になっているらしく、まずは勇者同盟に加盟してない我が国からの大量の食糧支援と言う人道的支援と聖剣の手掛かりを渡してくれた我が国をスタートにしてくれたそうだ」
「お前、聖剣なんて持ってたのか?」
思わず聞いてしまうも苦笑して
「持ってるわけありませんよ。
ただ聖剣とするべく核を持っていただけです。
それを鍛冶師の所に持って行き剣を作って貰えってそう言っただけですよ」
ちらりと見たのは無造作に床に広げられた剣の山。
エリオット殿下も一体それは何だとさっきからチラ見しているがまるで渡さないぞと言わんばかりにその前に宮廷騎士が立っているのが妙におかしく見えた。
「精霊が亡くなった後、その存在を残すように彼らは石化します。
一見魔石のような姿ですがこれらを正しくは精霊石と呼び魔石とはけた違いの魔力を内包していますが時にはその意志まで残します。
聖剣たる剣にはそのような希少な精霊石を使用するので精霊の居ないこの大陸ではまず見つける事が出来なく、東にいた俺はたまたまそれを持っていたので渡しただけです」
言いながらも俺が持ってた中で一番良い石で一番危険な石なんですよーとの説明を付け加える。
危険って言う言葉に聞き捨てならない物のすぐそばにいたリオネルが妙に神妙な顔をして頷いていた辺り何か知ってるなと後で聞きだそうと今は思う事にして置いた。
「殿下、それでなぜそのような難しいお顔をなされているのですか?」
元団が一度も勇者相手に興奮したような気配もなく眉間に皺を寄せている事に気づいてヴォーグを見れば
「まぁ、その事もあって話しを聞きに出かけたのだが……
詳しい事は直接彼らと会って向こうの出方を見てから説明する。
ただあまり愉快な話にはならないから、シルビオ、トゥーレ」
二人の名前を呼べば突然の指名にいぶかしげな視線でヴォーグを見る。この流れではめんどくさい事は判ってるとは言えどもそれよりも不安の方が大きいのだろう。
「多分、あいつ暴れるとおもうから武装解除してこの部屋に放り込む。
暴れないように俺がここに戻るまで押さえつけておいてほしい」
「おいおい、穏やかじゃないな」
宮廷騎士達も急に気配が代わりハイラ達もにこやかな顔は少しだけなりを潜めていた。
「それだけのショックがあいつにあって、この国にわざわざ足を運んだのはそれを確かめに来たと言う事なんだろうね。
だけどあいつはまだ勇者の仕事をすべて終わらせてないから……」
そこまで呟いたヴォーグは俯いて何かの言葉を呑み込んでいた。
「そうだ。連れの子達は一緒にいるのかな?
聖女と魔道士、あと剣士と格闘家だったかな?
全員そろってる?」
呑み込んだ言葉を誤魔化すように尋ねるヴォーグに殿下は眉をひそめて
「勇者パーティ五人全員そろってるぞ」
言葉を選ぶように最低限の返答にヴォーグは頷く。
「新聞で知ってはいたけど、やっぱり顔を知ってる間がらだから全員が無事で安心したよ」
いつの間にかいつものにこにことした顔の穏やかな声に先ほどの不安な言葉を聞く事は憚られもう一度改めて聞くタイミングを逃してしまった。
だけど一刻後に対面するにあたってこの時意地でも聞きだしておけばよかった事をこの場に居た俺達は痛感するのだった。
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