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うちの隊長は恥ずかしながらも賭けに負けました
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ヴォーグが出かけて二週間、当然と言うかやっぱり音沙汰もなく過ぎた国王主催の社交シーズン最後のパーティが開かれる日になった。
「どうせ直前ギリギリになってやってくるだろう」
そんな元団の言葉に俺達は前日からヴェナブルズの屋敷で待機してからのりこんで行ったのだが、ヴォーグが準備をしてくれていたように当日は天藍の間にまっすぐ案内される事になったその道のりの途中
「ラグナー様ようこそおいでになりました」
迎えに来てくれたのはゴルディーニで
「俺も偉くなった物だな」
「大公の伴侶です。
我ら宮廷騎士が出迎えるのは当然かと」
「……何か変わりはないですか?」
とは言え宮廷騎士の長が自ら迎えに来るのは何かないわけがないと半眼で問えば、ゴルディーニは苦笑して
「変わりではないですが大公が既に天藍の間にてお待ちです」
「へ、はあ?」
思わず耳を疑った。
「今朝アルホルンの方に一度向われたそうですが既に出立した後とハイラ殿よりお聞きになったようで、先ほどまでお休みになられてましたが今は食事を済ませ準備を終えた所でしょう」
「くっ、ギリギリに駆け込んでくるって賭けてたのに!」
遅くなってごめんねーなんて全く悪びれてない顔で謝って、でも少しだけ毛先を乱していて、当然と俺の腰に手を回して全く遅刻してないと言う態度でにこにことした顔であいさつ回りをするのだろう。
そんな事になるはずだと思っていたのにと拳を握りしめて負けを悔しがれば、背後ではギリギリ来るとか言っておきながらたまには早くやってきて待ち構えていると言う大穴を一人で賭けた元団は済ました顔で、でも少しだけニヤリと負けて悔しむ面々を見ていた。
「アヴェリオ殿も一体何やってるのですか。
それに伴侶ならお土産を大量に買って待ち構えている位期待してあげなさい。
何やら向こうの名物や産物、そして武器を大量に購入して来てましたよ」
新婚の癖にと呆れ果てた顔をしていたものの土産に大量の武器とは……ゴルディーニがわざわざ迎えに来るわけだと納得した。
「今度は王家はルードに何をしたのだ?」
思わずと言う様に元団は厳しい顔でゴルディーニを見るも、彼は呆れた顔で
「我ら宮廷騎士への贈り物らしいです。
先に少しですが見せて戴いたのですが、どれもこれも素晴らしい業物。
有名な鍛冶師がいるとは聞いていたのですが、満足する物を作る過程の普通の物が奥に眠っていたから貰って来たとおっしゃってましたが……」
「鍛冶師の納得いかないレベルとは言え十分親から子に受け継いでいくにも十分だし、あの鍛冶師の剣は早々刃こぼれする事もないし血のりで曇る事もない。基本的な手入れさえちゃんとしておけば一生使える名剣だよ。
最も試作品だから国宝レベルとは言い難いけど普段使いにするにはもってこいだ」
ゴルディーニの背後からひょいとその長身をいかして俺達の目の前に現れたヴォーグは笑みを浮かべて
「ラグナーだ、久しぶり!」
両手を広げて俺の首筋に顔を埋めるように抱き着いてきた。
「おい、こら……」
周りが見てるぞと注意しようとするもくんかくんかと俺の匂いを確かめるような巨大な犬のようなしぐさにくすぐったく「止めてくれ~」と情けない声が零れてしまう。
「ルード、困ってるだろう」
さすがに周囲の目もあってか元団が助けてくれた。
「いやぁ、なかなか心労の積る話をして来たからラグナーで癒されたくってね」
言いながらもまだ背後から腕を回してぎゅうぎゅうと抱きしめられる俺はもうぬいぐるみのような状態だ。
「あとイザムも連れて来てくれてありがとう。
イザムも頑張ってたんだって?ハイラが誉めてたよ」
「え?いつも注意って言うかこうすると良いって直されてばかりなのに……」
信じられないと言うか驚きに目を点にしてる様子が可愛く誰もが顔を反らして失笑する。
「ハイラはイザムが一言言えばちゃんと直すから面と向かってほめて伸ばすって事をしないだけだよ。
だけどがんばってるのはちゃんと見てるから直接言わない代わりに周囲の人に言い聞かせてるんだ。
だから、アルホルンに着た頃より居心地がいいとは思わないか?」
「そう言えば……」
俯いて考えだすイザムを見て
「これもハイラが言ってる。
セラと口げんかをしなくなったんだって?
あいつは言葉で言いくるめる口うるさい所があるけど、俺が留守の間うまくやっていたと聞いて安心したよ」
まさかラグナーのあの時の言葉で二人だけではない誰もが考え方を改めなくてはいけない事があったとはここでは言えない。
だけど、少し留守にした間にそのような報告を聞いて喜ぶヴォーグを見て俺の苦言は間違えではなかった事に喜びと自分のただヴォーグに愛されるだけではないと言う存在価値に自信を見つけた。
「だからじゃないけどイザムにもちゃんとお土産をあげるよ。
部屋に用意してあるから一番に選ぶ権利を上げるよ」
「え、でも……」
ちらりと俺を見るあたり何か可愛い義弟が出来たなとほっこりとしてしまえば
「安心して。ラグナーのは別枠で避けて在るから」
その言葉にホッとした顔を見せるイザムを見に俺でなくても誰もがほっこりと見守っていた。
アルホルンに連れて言った頃のわがまま放題の性格からたかが数か月で良くここまで変わった物だと感心しながら、周りに影響されやすいとは言っていたけど一流の騎士に囲まれた今の環境が彼には合っている事に安心をしてしまう。
このまま訓練を続け、騎士になったとしよう。
ヴォーグの弟だからという理由ではなくイザム自身の実力で誰もが宮廷騎士に推薦したくなる精神の持ち主になるだろうと予測できる未来はあかるい方へと向いている。
「じゃあそろそろ部屋に戻ろう。ワイズが退屈してるし向こうはセラに任せてハイラも連れてきたんだ。
クラウゼ伯もご家族でお待ちになられている。急ごうか」
「アレクも?」
「お土産を渡す為に来ていただいたんだ」
クラウゼ隊長も相変わらずですよと言う言葉にそれ以外の様子を全く予想できないものの、足取り軽く天藍の間での再会は久しぶりの「貴方は向こうでも変な事してないでしょうね」と黙しても語る視線に相変わらずだと納得するしかなかった。
「どうせ直前ギリギリになってやってくるだろう」
そんな元団の言葉に俺達は前日からヴェナブルズの屋敷で待機してからのりこんで行ったのだが、ヴォーグが準備をしてくれていたように当日は天藍の間にまっすぐ案内される事になったその道のりの途中
「ラグナー様ようこそおいでになりました」
迎えに来てくれたのはゴルディーニで
「俺も偉くなった物だな」
「大公の伴侶です。
我ら宮廷騎士が出迎えるのは当然かと」
「……何か変わりはないですか?」
とは言え宮廷騎士の長が自ら迎えに来るのは何かないわけがないと半眼で問えば、ゴルディーニは苦笑して
「変わりではないですが大公が既に天藍の間にてお待ちです」
「へ、はあ?」
思わず耳を疑った。
「今朝アルホルンの方に一度向われたそうですが既に出立した後とハイラ殿よりお聞きになったようで、先ほどまでお休みになられてましたが今は食事を済ませ準備を終えた所でしょう」
「くっ、ギリギリに駆け込んでくるって賭けてたのに!」
遅くなってごめんねーなんて全く悪びれてない顔で謝って、でも少しだけ毛先を乱していて、当然と俺の腰に手を回して全く遅刻してないと言う態度でにこにことした顔であいさつ回りをするのだろう。
そんな事になるはずだと思っていたのにと拳を握りしめて負けを悔しがれば、背後ではギリギリ来るとか言っておきながらたまには早くやってきて待ち構えていると言う大穴を一人で賭けた元団は済ました顔で、でも少しだけニヤリと負けて悔しむ面々を見ていた。
「アヴェリオ殿も一体何やってるのですか。
それに伴侶ならお土産を大量に買って待ち構えている位期待してあげなさい。
何やら向こうの名物や産物、そして武器を大量に購入して来てましたよ」
新婚の癖にと呆れ果てた顔をしていたものの土産に大量の武器とは……ゴルディーニがわざわざ迎えに来るわけだと納得した。
「今度は王家はルードに何をしたのだ?」
思わずと言う様に元団は厳しい顔でゴルディーニを見るも、彼は呆れた顔で
「我ら宮廷騎士への贈り物らしいです。
先に少しですが見せて戴いたのですが、どれもこれも素晴らしい業物。
有名な鍛冶師がいるとは聞いていたのですが、満足する物を作る過程の普通の物が奥に眠っていたから貰って来たとおっしゃってましたが……」
「鍛冶師の納得いかないレベルとは言え十分親から子に受け継いでいくにも十分だし、あの鍛冶師の剣は早々刃こぼれする事もないし血のりで曇る事もない。基本的な手入れさえちゃんとしておけば一生使える名剣だよ。
最も試作品だから国宝レベルとは言い難いけど普段使いにするにはもってこいだ」
ゴルディーニの背後からひょいとその長身をいかして俺達の目の前に現れたヴォーグは笑みを浮かべて
「ラグナーだ、久しぶり!」
両手を広げて俺の首筋に顔を埋めるように抱き着いてきた。
「おい、こら……」
周りが見てるぞと注意しようとするもくんかくんかと俺の匂いを確かめるような巨大な犬のようなしぐさにくすぐったく「止めてくれ~」と情けない声が零れてしまう。
「ルード、困ってるだろう」
さすがに周囲の目もあってか元団が助けてくれた。
「いやぁ、なかなか心労の積る話をして来たからラグナーで癒されたくってね」
言いながらもまだ背後から腕を回してぎゅうぎゅうと抱きしめられる俺はもうぬいぐるみのような状態だ。
「あとイザムも連れて来てくれてありがとう。
イザムも頑張ってたんだって?ハイラが誉めてたよ」
「え?いつも注意って言うかこうすると良いって直されてばかりなのに……」
信じられないと言うか驚きに目を点にしてる様子が可愛く誰もが顔を反らして失笑する。
「ハイラはイザムが一言言えばちゃんと直すから面と向かってほめて伸ばすって事をしないだけだよ。
だけどがんばってるのはちゃんと見てるから直接言わない代わりに周囲の人に言い聞かせてるんだ。
だから、アルホルンに着た頃より居心地がいいとは思わないか?」
「そう言えば……」
俯いて考えだすイザムを見て
「これもハイラが言ってる。
セラと口げんかをしなくなったんだって?
あいつは言葉で言いくるめる口うるさい所があるけど、俺が留守の間うまくやっていたと聞いて安心したよ」
まさかラグナーのあの時の言葉で二人だけではない誰もが考え方を改めなくてはいけない事があったとはここでは言えない。
だけど、少し留守にした間にそのような報告を聞いて喜ぶヴォーグを見て俺の苦言は間違えではなかった事に喜びと自分のただヴォーグに愛されるだけではないと言う存在価値に自信を見つけた。
「だからじゃないけどイザムにもちゃんとお土産をあげるよ。
部屋に用意してあるから一番に選ぶ権利を上げるよ」
「え、でも……」
ちらりと俺を見るあたり何か可愛い義弟が出来たなとほっこりとしてしまえば
「安心して。ラグナーのは別枠で避けて在るから」
その言葉にホッとした顔を見せるイザムを見に俺でなくても誰もがほっこりと見守っていた。
アルホルンに連れて言った頃のわがまま放題の性格からたかが数か月で良くここまで変わった物だと感心しながら、周りに影響されやすいとは言っていたけど一流の騎士に囲まれた今の環境が彼には合っている事に安心をしてしまう。
このまま訓練を続け、騎士になったとしよう。
ヴォーグの弟だからという理由ではなくイザム自身の実力で誰もが宮廷騎士に推薦したくなる精神の持ち主になるだろうと予測できる未来はあかるい方へと向いている。
「じゃあそろそろ部屋に戻ろう。ワイズが退屈してるし向こうはセラに任せてハイラも連れてきたんだ。
クラウゼ伯もご家族でお待ちになられている。急ごうか」
「アレクも?」
「お土産を渡す為に来ていただいたんだ」
クラウゼ隊長も相変わらずですよと言う言葉にそれ以外の様子を全く予想できないものの、足取り軽く天藍の間での再会は久しぶりの「貴方は向こうでも変な事してないでしょうね」と黙しても語る視線に相変わらずだと納得するしかなかった。
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