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うちの隊長はあのお馬鹿より上の奴はなかなかいないもんだなとある種の感動をしております

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 ヴォーグの口調になんとなく

「物騒な自己紹介だな……」

 そこまで実の弟に言うか?と聞くも

「昔からこいつは人の物を羨み欲しがる躾のなってない奴なんだ。
 稼ごうともせず親の庇護下で騒ぐ事しか能のないアホで、それを理解できずに人の物を奪おうとする愚か者。
 イザムも覚えておけ、王女殿下との結婚はお前を監視する為の首輪だ。
 兄が盛大に祝ってやるから覚悟決めて王女殿下と結婚をしろ。
 学園生活もしっかりと授業料払ってやる。残りの学園生活は心を入れ替ええ勉強に励め。
 嫌なら学園を辞めて家で家庭教師を付けてやる。
 友人関係も見直さないといけないからね。それも必要だね。
 それならお前も暮らし馴染んだヴェナブルズの屋敷なら文句は言わないだろう。どっちがいい?」
「え、あ……」
「判断が遅い。
 決められないなら兄が決めてやる。
 家でもう一度ディディエ・セラに最初から学べ」
「セ、セラって!」
「お前が勝手に解雇したから俺が拾ってヴェナブルズの本宅で本宅の第二執事として働かせていた。
 一応顔を合わせない様に本宅滞在時は裏方に回すように指示をしていたが、知らないと言う事はちゃんと命令は守れていたようだな。
 主を勝手に変えるアトリーより信用のおけるお前の元執事だぞ?
 ああ、セラは今俺が個人的に雇ってるからお前の意見何て関係ない」

 遊び盛りの年頃に屋敷に閉じ込める無慈悲な提案でも見捨てることをしないヴォーグに

「優しい兄でよかったな?」
「これのどこが?!」

 涙目で立ち上がって抗議する弟に

「優しいだろ?
 普通学校なんてやめて働け、家がなければ野宿しろ、勉強したけりゃ働いて稼げ、それに何よりお友達はもちろん面倒見てくれる人なんているわけがない。
 こういう場合近寄って来る奴らは騙して全部奪って全く知人の伝手もないような所に放り出すと相場が決まっているのに、住み慣れた家での生活、悪い友達と縁を切らせ、昔のような優しさは求める事は出来ないだろうけどそれでも全く知らない人と新たに関係を作るよりは関係を修復する方が大切な幼い頃からを知る僕。
 なにより最低限の生活をさせてくれる。
 ワイズがどういう人かは俺はまだ知らないがこれだけヴォーグが信頼を置いている人だ。その人の采配の下での生活になるだろうから安全安心は約束されている。
 まぁ、学園のお友達とは二度と会えないだろうがな」

 言えば顔を歪めて何でと問う視線に

「婚約者がいるにも関わらずあの女に走ったお前を諌めないような奴らを良識ある者は友人とは呼ばない。
 それにそいつらにも何か、そうだな……
 金の貸し借りはしてないか?」
「馬鹿にするな、貸し借りなんてするわけないだろう!
 時々は手持ちが少くないからと貸したりする時はあったがそんなのは誰でもあるはずだ」
「まぁ、確かにあるな。
 俺もあまり金持って動いたりしないからアレクに良く借りたが、次の日にはきちんと返していた。
 細かい数字まで覚えてる自信はないからアレクの奴と領収書を見て思い出すって言うお互い不安な所もあったが、俺があんまりに繰り返すから他の奴らに返してもらった時領収書を見る癖がついて何故か俺に苦情が来たな」
「随分と細かくチェックするんですね?」
「そりゃ金の切れ目が縁の切れ目、いくら細かくても親友といい関係を続けたかったら特に金には注意が必要だよな」
「ふーん、平民の感覚ってけち臭いですね」

 その言葉に一瞬ヴォーグが殺気立つも、俺はなだめる様にソファ越しにヴォーグの背中に張り付く様に抱きしめながら気軽に話を続ける。

「となると貴族様はどう言った風に?」
「もちろん金の都合が出来次第だ。
 もっとも俺はヴェナブルズ子息として人に金を貸す事はあっても借りるような無様なまねはしない」
「ほう、立派なモノだ。
 じゃあ貸した者もきちんと返してもらってると?」
「借金取りの取り立てじゃあるまい。
 向こうの都合に合わせるに決まってるだろ」

 ドヤ顔で言う弟にさっきまで怒っていたヴォーグは何だか泣きそうな顔になっていた。
 仕方ない。
 だってそれはどう考えても

「一つ教えておく。
 それを世はたかられているって言うんだ。
 確かに貸し借りはないが、一方的に搾取されている事に気付け」

 俺の言葉を理解できないと言うようにキョトンとする弟にヴォーグは俺の腕から崩れ落ちてソファのアームに頭を乗せる様にぐったりと倒れ込んだ。

「馬鹿だ馬鹿だと思っていたがここまで馬鹿だとは……
 駄目だ。セラ一人じゃ不安だ……
 ワイズに任せるも負担が……
 リオネルじゃ……だめだ。まだ荷が重すぎる」

 項垂れながらもうーん、うーんと唸る様子に

「だったらアルホルンに連れて行けばいいじゃないか」

 難問を前に唸るヴォーグに俺の提案に嫌そうな顔を隠せないヴォーグに向かって

「あそこならアホな友人らとて来れないだろう。
 たかられようにも店もないしな。
 それよりもシルビオがいる」

 上げられた名前にヴォーグはえ?と言う様に目を点にして固まり、暫くの後に何を想像してかだらだらと汗を流しだした。

「シルビオにイザムを託すと?」
「まぁ、貴族として立ち振る舞いとか表面的な所はハイラに見てもらい、世話をセラとかいう奴に任せながらこのふざけた思考を改めるには更なるバカと対面するしかない。
 友人関係はシルビオ以下と友人にするには歳が離れているが宮廷騎士達に任せればいい」
「さ、更なるバカ?」

 義弟ですら疑問を抱く紹介にヴォーグ同様顔を引き攣らせている。
 何となくこの兄弟は似てるなと印象を改めた。

「トゥーレもいるから大丈夫だろう。
 なんせ口よりも手の方が早いからな。
 貴族様と渡り合うにはちょうどいい。
 ああ、そう言えば俺があいつをスカウトした理由は貴族相手に教育的指導と言った肉体的調教をしててな、何だかアレクと被ったから声をかけてみたんだ」
「それ、絶対トゥーレに言わないでくださいよ。
 ラグナーの事本当に尊敬してるんだから!
 あとクラウゼ隊長にも言わないで!!」
「当然。ヴォーグも二人には内緒だぞ?」

 片目をつぶってのウインクしながらの告白に項垂れながら肯くヴォーグの頭を撫でるラグナーのそんな話を聞かされた宮廷騎士とイザムは俺達も巻き込まれたとラグナーを恨むしかなかった。














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