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うちの隊長は整理整頓大掃除は大切だよな?!と心の内では大慌てです

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 契約も終了して輝きも落ち着いたアルフォニアの木の下で俺とヴォーグ、そして殿下と寝転んで枝の隙間から見える夜空を見上げていた。
 ヴォーグの屋敷と城から零れ落ちる明かりに夜空の星達は見えない。
 土まみれになり爪ははがれ指先からは血が流れている王は着替えと治療に、王妃は付き添って行ってしまい、既に俺の傍らには数名の宮廷騎士と元団しかいない。
 さっきまでの賑やかさが嘘のように静まり返った中で殿下は涙こそ止まったものの今もまだ枝を抱えていた。

「その枝早くしまえば、折れるよ?」
「あー、今荷物がいっぱいでさ。
 前に教えてもらった空間に荷物を詰める訓練を今も実践してるんだけどなかなかどうして詰める物がなくってな」
「お前の場合私物は総て国の物だからなぁ」
「持ち運びの荷物を入れても出さないといけないからな」
「とりあえず出せ。全部出して気づく結構どうでもいい物が入ってる」

 言いながらパチンと指を鳴らせば殿下を中心にいろんなものが溢れ出したのだった。

「おわっ、何でぇ?!」

 悲鳴にも似た叫び声に宮廷騎士の人達が思わずと言う様に駆けよってきたが、それ以上に足を進めれなかった理由はエリオットを中心として雑多な物が山積みとされていたからだ。
 慌ててかき集めては収納してを繰り返す横で俺はとりあえず見覚えのある本を拾って中身を見れば

「ああ、殿下も読んだんですかこのエ……」
「悪いかよ!貰いもんだけどこんなの俺の部屋のどこに置けって言うんだよ!」

 数ページがパラリと捲られただけで一瞬で取り返されて収納されてしまった。
 確かに自室とは言えプライベートも何もない身分。
 収納空間だけが完全なプライベートだよなと思いつつもそれをどうやったかは知らないがこじ開けたヴォーグは何だか楽しそうに物色しているその中からはらりと一枚薄い布が風になびいていたから摘まみ上げれば……

「へえ、王太子殿下とあろうお方が女性物の下着を……
 どう言ったご使用でしょうかねぇ?
 頂き物?それともご自身の……?」
「違う!断じて違う!!
 ルードそんな目で俺を見るな!」
「殿下、なかなかキワドイ下着をお好みで……
 スケスケですよ?って言うかこれほぼ紐って、下着の意味あるんですか?」
「俺はこんなの知らない!!!」

 絶叫する王太子殿下を他所に思わず無言で見守っている元団に聞くも聞こえちゃいないと言う様にあからさまに散らかった本やらなんやらと片づけ始めた。

「世の中大胆な女性もいる物ですねぇ」

 ニヤニヤとした視線で下着を掲げながらヴォーグと二人で殿下を見てる合間にも奪われて片づけられてしまった。

「なるほど、こうやって永久的に収納されるのか」
「まぁ、殿下も一人の男性として女性の下着に興味があってよろしいじゃないですか。
 安全を兼ねて入手方法をお聞きしたい所ですけど、まだ散らかってる物を回収しなくてはね?
 他に何があるでしょうかね?」

 何やらきれいな瓶やら怪しげな薬の瓶もある。
 中には護身用の剣や何かあった時の金貨や換金用の宝石、自分の身分を示す徽章のブローチなど王家の人間として最低限持っていなくてはいけない物もきちんとあった。
 そちらは見つけ次第すぐにわたして収納するも

「何だかかわいい物がある……
 かわいい物なのか?」

 薄暗い庭にヴォーグがカンテラを幾つも置いて明りを灯せばそこらじゅうに散った物を宮廷騎士達も拾い集めてくる中で一つの古いぬいぐるみを見つけた。
 随分とぼろぼろで中からわたもはみ出しているような物だった。
 クマだろうか?
 おおよそ王子だったエリオットの持ち物としては思えないような代物だと思った。
 縫い目一つ揃ってなく、そして腕の太さや目の代わりのボタンも割れていた。
 可愛いと言うより可哀想な状態のぬいぐるみを持ち上げれば一瞬にして目の前から消えた。

「これに触るな!」

 怒りと言うより恐れと言う顔で俺を睨み、ゆっくりと周囲を逡巡してから見られまいというように抱きすくめぺたりと座り込んでいた。
 そんなにも強く抱きしめたら腕が取れてしまいますよと言いたくもあるが、その必死な顔が言葉を言わせてくれなかった。
 だけど代わりに

「ここに在ったのか」

 元団の言葉にびくっと体が震えていた。
 蹲る様にぼろぼろのクマだろうぬいぐるみを抱きしめたまま怯えた様に、だけど何も言うなと言うように懇願するかのように元団を見上げている。
 何の意味があるのだろうかと思うも

「フレッド、あのぬいぐるみは何だ?」

 何を知ってると言うヴォーグの声に元団はひゅっ……吐息を呑み込むも

「昔私の知り合いが壊れたそのぬいぐるみを直してくれたのですが、またそのような状態だと言う事は乱雑に扱ったのでしょう。
 お渡しした際に今度は大切にと約束したのに」

 とても大切なぬいぐるみと言う事だろうか。
 ぼろぼろになるくらい共に過ごし更に新しいモノにも変える事も出来ずに直してもらってまで側に在り続けた特別と言うべき思い入れの品と言う事でいいのだろうかと思うも、経年劣化からか首につけられていたリボンが取れた。
 先端につけられたガラス玉の重さもあるのだろうが、エリオットが気付かなかったからと言う様に俺が拾い上げてそこに書かれた文字を思わず読んでしまった。

「ルード、ヴォーグ……」

 盛大に顔をしかめた元団と怯える様にぬいぐるみを抱きしめるエリオット、そして名前を呼ばれた当人はこれ以上となく戸惑っていて

「フレッド、説明を」

 聞くべきかどうするべきかと思う物の説明を求めたのはヴォーグで、下僕の元団長は重々しく口を開けるのだった。












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