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うちの隊長は久しぶりの森を今度は堪能するつもりのようです

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 朝食も終わりポーション飲んで着替えも済んで騎士棟に向えば全員が既に出立の準備が出来ていた。
 俺はラグナーの腰に手を回してご機嫌よく朝の挨拶をする。
 新人達は俺達に白い視線を向けるも、すでに何度もこう言う事を体験しているベテランさんはさあ行くぞと荷物を持って立ち上がった。
 そして騎士棟の外に出れば既にラグナー達が乗ってきた馬も用意されていた。
 当然ヴォーグ達の馬も用意されている。
 馬車がないのを見るとこれからどのような厳しい道のりで帰る事になるのかと息をのむ、特にアルホルンに向かう道のりで馬術に自信を無くしているアンディは既に顔を真っ青にしている。
 可哀想にと思うもこれからもっと驚きの事があるのにと馬に荷物をくくりつけている様子を他所に相変わらず手荷物一切なしのヴォーグは馬を撫でて待っていた。

「そろそろいける?」

 待たせていたはずなのにいつの間にか待つ側になっていたヴォーグは準備が出来たのを確認して

「なら行こう。
 ハイラとアルホルン待機組はあとよろしく。
 トゥーレも頼んだ薬草とシルビオ達の世話を頼むね」

 返事も聞かずにその一言と共に足を一歩踏み出した瞬間森の匂いが強くなった。
 肥沃な大地と濃い緑の匂い。
 穏やかな風は少し暖かく、でも空を覆いつくさんと広げた枝葉のおかげで何処か薄暗い。
 そして何となく予想していた

「ここは何所なんだよおおぉぉぉ!!!」

 ウィルも驚いて悲鳴を上げようとしていた物のそれより先にアンディが悲鳴を上げた為に不発でおわっていた。

「なんか微笑ましいなぁ」
「初めての時を思い出すな」

 そう言う本日の随行の人はクリフォードとメルヴィン。

「とは言っても素直に驚く余裕はなかったな」
「確かに」
「驚ける余裕がないと言うか驚きの連続にどこに驚くポイントを持って来るかの方が難しかったな」

 魔族との戦いの時を思い出して誰もが失笑。

「そこ、笑える場所なんですか?」

 ウィルのツッコミに誰もが首を横に振る。
 ついでに思い出したランダー捨身の渾身の一撃。
 なんどあの馬鹿さ加減に救われたかと思うも

「皆さんお元気でしょうか?」
「さあ?
 とりあえず俺は最後の日にイリスと一緒に給料3割カットとトイレ掃除を共に半年ほど命じて来たから、がんばっているだろう事は確かだな」
「な、今度は何をしたんですか?」
「まぁ、一言では語れないような事を」

 つい……と視線をそらせるラグナーに何があったのかと問いただしたかったがあの二人がかかわっているとなれば聞かない方が幸せだと言う事もある。
 たぶんそちら側が大きいと思って

「まぁ、そのうち他から聞けるから今は止めとくよ」

 その方が良いと頷くラグナーと共に森の中を歩く。
 ヴォーグが先導する馬の後ろを追いかける様にして森を見上げながら

「前回はゆっくり見る余裕すらなかったけどものの見事アルフォニアの木ばかりだな。
 ちなみにここはアルホルンのどこ当たりだ?」
「ここは精霊界と人間界の境界線あたりです。アルホルンですらありません。
 俺も詳しくないのですが、精霊アルホルンは決して強いとは言えない精霊ですが、精霊としての能力は高い精霊と聞きました。
 能力の一つに精霊の住まう世界と人の住まう世界を行き来するにはいくつかの難しい制約があるそうです。
 ですがアルホルンはその制約を越えて精霊界と人間界を行き来できると言います。
 その道がこのアルフォニアの森だそうです。
 ですが、そう簡単に行き来できたりしたら大変な事になります。
 なのでこの森に足を踏み入れた者総て精霊アルホルンの思い一つで運命が決まります。
 他に植物に関係する事ぐらいでこれと言った能力はないそうですが、このアルフォニアの支配者としていたそうです。
 ですが、精霊側にもあまり知られてないあげくに、臆病な精霊達はこんな物騒な場所に足を運びたがらずで、結果何かと気にかけてくれた精霊クウォールッツに傾倒していったとの事です」
「それもまた怖いな」
「ええ、他国では魔王と恐れられているのにこの国では精霊として敬うのはそう言った事が理由ですね」

 なので魔王を討伐をする勇者同盟にも入らず、故に周辺国から恨まれると言うめんどくさい立ち位置のこの国だが、それでも人道的支援はしているので周辺国と貿易が無事できている。

「さて、そろそろ出口です。
 あちらの木と木の間を通り抜けてください」

 言えば最初にブルフォードが出て次にアンディとウィルがアルフォニアの森を出て行く。
 そして護衛、元団長、そして

「なんかこの森に二人きりってドキドキしません?」
「まぁ、いろんな意味でもな?」

 馬の上なのに器用に身を乗り出してちゅ、と唇を重ねたヴォーグにまさかこれが理由で最後までわざと残ったんじゃないだろうなと少しだけ照れるも、まぁ、新婚だし?と開き直る事にしたラグナーだった。




 

 





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