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うちの隊長は大変ありがたられている事を知りませんし知りたくもありません
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「シーヴォラの奴帰って来ませんね」
呟いたのはマートランド次期伯のアンドリュー。
既に陽も傾きだし王都より北にあるアルホルンでは十分に寒いと言う気候になっていた。
昼間は陽が射していたので暑い位だったがその時間も終わり重厚な石造りの城内は既に暖炉がちょろちょろと焚かれていた。
時期的には早いものの、この暖炉一つでこの騎士棟総てを温められるのだ。
作りとして素晴らしいと感心してしまうもこの暖炉が魔石一つで補われているというのは理解しずらかった。
「まぁ、ルードと会えたのなら早々帰ってこないだろう。
なんせ前に宮廷騎士の服を着たシーヴォラを見て脱がせたいと言ってたから、すぐには戻ってくるまい」
「ああ、そう言えばそんなこと言ってましたね……」
は?と、耳を疑うウィルとアンディを他所にアルホルン勤めの宮廷騎士は懐かしそうに笑い声をあげて
「あの時は俺も耳を疑いましたが魔族との戦いの中でガチなんだって理解しましたよ。
魔族に対してあの攻撃だろ?
絶対敵にしたらいけない奴って一瞬で理解したぐらいですからね」
「けどあの人結局最後まで魔族に対して本気にならなかったじゃないでしょ。
俺聞いたんですよ、さっさと精霊になってカッコよく一瞬で倒しちゃえばよかったのに何でって。
そしたらあの人なんて言ったと思います?
精霊の力を使うまでもない相手だし室内だからラグナーに何かあったらいけないと思って派手な魔法も使えないから可能な限り剣で仕留めようと思った結果シーヴォラが狙われてブチギレたって言ってたんですよ」
「あいつらしいと言えばらしいのか?
どっちみちあの魔族の敗因はシーヴォラに敵意を向けた事だな」
あの時は魔族よりも怖かったなーなんて笑いながらの一同にウィルもアンディもそんな恐ろしい人がと、これから対面するだろう人物に想像を膨らませながら肝を冷やして行くも
「まぁ、シーヴォラが来てくれるおかげでこのアルホルンも安泰だしな」
「と言うかアヴェリオ殿、彼らの話しは?」
「まだだ。それはルードの方から言うだろう。
随分頑張ったからな。我々から言うべきではない」
「喜んでくれるといいでしょうね?」
「喜ばないわけないだろう」
「まぁ、おかげで俺達も助かってるしな」
「ああ、雑草取りの任務から解放されたのはほんとありがたい」
「確かにな!」
ウィルとアンディはそれこそ一体何なのだとアルホルンの先輩方の任務内容にさらに頭の中が混乱する。
「まぁ、お前達は当分城勤めだから知らなくていいが、一度ぐらいはアルホルン勤めを経験をした方が良いぞ。
次の代はどうなるか知らないが、当代のアルホルン大公は太っ腹だからな。
一生に一度食べれるかどうかわからない物を毎日食わしてくれる。
正直王都暮らしに戻れるか不安だな」
「馬鹿な事を言うな。
お前達は一年間の赴任期間を終えれば城勤めに戻るのだ。
この生活もあと数か月だと思え」
「くう、まだ飲んでないワインがあると言うのに……」
「シャトー・ブロムクヴィストに行けば好きなのが飲めるぞ」
「アヴェリオ殿!そんな事を言ったら一瞬で破産するしかないじゃないですか!」
「ならもっと味わって飲め。
ルードの小遣いで購入してると言う事を忘れるな」
「小遣いで買うなんて、大公って金銭感覚大丈夫かな?」
「その為の商会をやってる。
意外にも金銭感覚は庶民感覚だぞ」
「その感覚が判りません!」
「俺と外で食べる時は必ず割り勘だ」
「それはアヴェリオ殿が嫌われてるからじゃないのですか?」
「と言うか、アヴェリオ殿が年上なのだから奢りましょうよ」
「奢ると言えばきっぱりと断られる。それに屋台の食べ歩きはさすがに躊躇う」
「外ってレストランじゃなくて屋台の意味か?!」
「庶民感覚過ぎません?!」
「王都で一人で暮していた時だって自分で食事を作ってたぐらいだし、キャンプもお手の物だ。
何かあった時お前達より生存率は高いぞ」
「アヴェリオ殿質問です。
我々が大公の護衛に着く必要ってありますか?」
寧ろ何かあった時大公にお世話になるんじゃないかと言えば
「護衛に着く理由なんて決まってるだろ。
お前達の世話の為にあいつはそこらへんうろちょろできなくなる。
足止めの重しに十分役立ってる」
ブルフォードが項垂れながらも真実を突きつけるも
「でも大公しょっちゅう隣国とかにお出かけしてるじゃないですか?」
そんな宮廷騎士達の疑問にブルフォードは初めて知った真実にこめかみに血管を浮かばせるも
「でもちゃんと戻ってくる。
お前らを食べさせないといけないからと、律儀なもんだ」
「アヴェリオ殿、今一つ律儀の意味が分かりません」
はーいと手を上げて質問をするウィルバー・グランヴィル。
放っておいても問題ない位の環境は整ってるのにと言うも
「まぁ、あいつにとって植物の世話の延長上にお前達がいる。
水を与え肥料を与え、お前達にも食事を取らせ適度に運動させる。
ちゃんと話の通じる相手だから苦労はしないと言ってたな」
誰もが心の中で俺達は家畜やペットじゃないと叫んだ所でルードの青い鳥がやってきた。
室内をくるくると飛びフレデリク・アヴェリオの胸へと飛び込む様に体へと溶け込んでいった。
すっ……と全身が一瞬淡く青く輝けば
「ああ、そろそろ戻って来るらしい」
本日の護衛のクリフとメルが席を立つ。
「どちらに?」
「アルホルン城のルードの部屋に、寒いから風呂の準備をしてほしいとハイラに伝言を。
あと少し遠回りするから一時間ほどで戻ると」
「良くこの寒い中元気なものだ」
しょうがない大公だとジェームスが笑うも
「所で遠回りとはどこに行くんだ?」
ブルフォードが首を傾げればアルホルン勤めの宮廷騎士は死んだような目をして
「近道が可能な範囲でしょう」
一年近くも共に過ごせば考えるのも馬鹿馬鹿しいとフリップはやたらと座り心地のいい椅子の背もたれに体重を掛けて背伸びをするのだった。
呟いたのはマートランド次期伯のアンドリュー。
既に陽も傾きだし王都より北にあるアルホルンでは十分に寒いと言う気候になっていた。
昼間は陽が射していたので暑い位だったがその時間も終わり重厚な石造りの城内は既に暖炉がちょろちょろと焚かれていた。
時期的には早いものの、この暖炉一つでこの騎士棟総てを温められるのだ。
作りとして素晴らしいと感心してしまうもこの暖炉が魔石一つで補われているというのは理解しずらかった。
「まぁ、ルードと会えたのなら早々帰ってこないだろう。
なんせ前に宮廷騎士の服を着たシーヴォラを見て脱がせたいと言ってたから、すぐには戻ってくるまい」
「ああ、そう言えばそんなこと言ってましたね……」
は?と、耳を疑うウィルとアンディを他所にアルホルン勤めの宮廷騎士は懐かしそうに笑い声をあげて
「あの時は俺も耳を疑いましたが魔族との戦いの中でガチなんだって理解しましたよ。
魔族に対してあの攻撃だろ?
絶対敵にしたらいけない奴って一瞬で理解したぐらいですからね」
「けどあの人結局最後まで魔族に対して本気にならなかったじゃないでしょ。
俺聞いたんですよ、さっさと精霊になってカッコよく一瞬で倒しちゃえばよかったのに何でって。
そしたらあの人なんて言ったと思います?
精霊の力を使うまでもない相手だし室内だからラグナーに何かあったらいけないと思って派手な魔法も使えないから可能な限り剣で仕留めようと思った結果シーヴォラが狙われてブチギレたって言ってたんですよ」
「あいつらしいと言えばらしいのか?
どっちみちあの魔族の敗因はシーヴォラに敵意を向けた事だな」
あの時は魔族よりも怖かったなーなんて笑いながらの一同にウィルもアンディもそんな恐ろしい人がと、これから対面するだろう人物に想像を膨らませながら肝を冷やして行くも
「まぁ、シーヴォラが来てくれるおかげでこのアルホルンも安泰だしな」
「と言うかアヴェリオ殿、彼らの話しは?」
「まだだ。それはルードの方から言うだろう。
随分頑張ったからな。我々から言うべきではない」
「喜んでくれるといいでしょうね?」
「喜ばないわけないだろう」
「まぁ、おかげで俺達も助かってるしな」
「ああ、雑草取りの任務から解放されたのはほんとありがたい」
「確かにな!」
ウィルとアンディはそれこそ一体何なのだとアルホルンの先輩方の任務内容にさらに頭の中が混乱する。
「まぁ、お前達は当分城勤めだから知らなくていいが、一度ぐらいはアルホルン勤めを経験をした方が良いぞ。
次の代はどうなるか知らないが、当代のアルホルン大公は太っ腹だからな。
一生に一度食べれるかどうかわからない物を毎日食わしてくれる。
正直王都暮らしに戻れるか不安だな」
「馬鹿な事を言うな。
お前達は一年間の赴任期間を終えれば城勤めに戻るのだ。
この生活もあと数か月だと思え」
「くう、まだ飲んでないワインがあると言うのに……」
「シャトー・ブロムクヴィストに行けば好きなのが飲めるぞ」
「アヴェリオ殿!そんな事を言ったら一瞬で破産するしかないじゃないですか!」
「ならもっと味わって飲め。
ルードの小遣いで購入してると言う事を忘れるな」
「小遣いで買うなんて、大公って金銭感覚大丈夫かな?」
「その為の商会をやってる。
意外にも金銭感覚は庶民感覚だぞ」
「その感覚が判りません!」
「俺と外で食べる時は必ず割り勘だ」
「それはアヴェリオ殿が嫌われてるからじゃないのですか?」
「と言うか、アヴェリオ殿が年上なのだから奢りましょうよ」
「奢ると言えばきっぱりと断られる。それに屋台の食べ歩きはさすがに躊躇う」
「外ってレストランじゃなくて屋台の意味か?!」
「庶民感覚過ぎません?!」
「王都で一人で暮していた時だって自分で食事を作ってたぐらいだし、キャンプもお手の物だ。
何かあった時お前達より生存率は高いぞ」
「アヴェリオ殿質問です。
我々が大公の護衛に着く必要ってありますか?」
寧ろ何かあった時大公にお世話になるんじゃないかと言えば
「護衛に着く理由なんて決まってるだろ。
お前達の世話の為にあいつはそこらへんうろちょろできなくなる。
足止めの重しに十分役立ってる」
ブルフォードが項垂れながらも真実を突きつけるも
「でも大公しょっちゅう隣国とかにお出かけしてるじゃないですか?」
そんな宮廷騎士達の疑問にブルフォードは初めて知った真実にこめかみに血管を浮かばせるも
「でもちゃんと戻ってくる。
お前らを食べさせないといけないからと、律儀なもんだ」
「アヴェリオ殿、今一つ律儀の意味が分かりません」
はーいと手を上げて質問をするウィルバー・グランヴィル。
放っておいても問題ない位の環境は整ってるのにと言うも
「まぁ、あいつにとって植物の世話の延長上にお前達がいる。
水を与え肥料を与え、お前達にも食事を取らせ適度に運動させる。
ちゃんと話の通じる相手だから苦労はしないと言ってたな」
誰もが心の中で俺達は家畜やペットじゃないと叫んだ所でルードの青い鳥がやってきた。
室内をくるくると飛びフレデリク・アヴェリオの胸へと飛び込む様に体へと溶け込んでいった。
すっ……と全身が一瞬淡く青く輝けば
「ああ、そろそろ戻って来るらしい」
本日の護衛のクリフとメルが席を立つ。
「どちらに?」
「アルホルン城のルードの部屋に、寒いから風呂の準備をしてほしいとハイラに伝言を。
あと少し遠回りするから一時間ほどで戻ると」
「良くこの寒い中元気なものだ」
しょうがない大公だとジェームスが笑うも
「所で遠回りとはどこに行くんだ?」
ブルフォードが首を傾げればアルホルン勤めの宮廷騎士は死んだような目をして
「近道が可能な範囲でしょう」
一年近くも共に過ごせば考えるのも馬鹿馬鹿しいとフリップはやたらと座り心地のいい椅子の背もたれに体重を掛けて背伸びをするのだった。
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