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うちの隊長は部下の捕り物劇を黙って見守る事にしましたらとんでもない餌がやってきたようです

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 ノラスが居なくなっても無情に時は過ぎて行った。
 俺が団長室にノラスの退団届を出して戻ってきた時にはノラス一家を破たんさせたダルカイス商会が他に金目の物はないかと隊舎の前で小競り合いしてた。
 やっぱり来たかと怒りを通り越した冴え冴えとした視線でその様子を眺めていれば、俺の到着を見てダルカイス商会は正当な請求だと俺達に言う。

「すでに退団した者の私物は騎士団に置いておくことはできない。
 因って、渡せるものは何もない」
「そう言って、あんた達が隠してる事は証明できてねーなっ!」

 言うも納得しない様子にランダーが

「でしたら一度見て戴いたらどうです?
 ちなみに騎士団の備品を破損した場合は修理代をいただきますけど?」

 なんて困った顔のまま言う様子にダルカイス商会は隊舎の中へと潜り込むのだった。
 その姿を見てニヤリと笑う様子に普段なら嫌な予感しかない微笑みが妙に心強く見えて彼らを案内させれば開かれたノラスの個室の扉に飛び込んだダルカイス商会の者は何かおいてないかとクローゼットや机の引き出しを物凄い勢いで開けて確かめるのだったが……

 バターンッ!!!バキッ!!!ガッシャーンッ!!!

 派手な物音と舞う埃、そして巻き添えを喰った窓ガラスが窓枠事派手に割れていた。
 あまりの派手な物音に隊舎で待機していた者達まで慌てて飛び出してくるも、まさかこんな事になるなんてとダルカイス商会の者達は顔を真っ青にして壊れたクローゼットの扉と壊れた窓ガラスを愕然と眺めていた。 

「あらら、これは弁償してもらってもいいかな?」

 マリンが城の備品って城規格だから大きくて高いんだーとぼやけばダルカイス商会の男達はマリンに詰め寄って襟首を握りしめ、同時に顎を殴りつけて

「俺達をハメたなっ!!!」
「ふっざけんじゃねーぞ!!!」

 マリンは唇を切り、たらりと血を流していた。
 背後のレドフォード辺りが舌なめずりする音を聞いた気がしたが

「一体何の騒ぎだ!
 シーヴォラ隊長説明したまえ!」

 何故かこのタイミングでブルフォードが来た。
 俺達は思わず心の内で舌打ちするも、俺達とブルフォード達との違いが判らないダルカイス商会の男は今度はブルフォードにターゲットを変更して

「おい騎士様よ!
 このシーヴォラ隊だったかぁ?
 俺達にここをわざとぶっ潰させた挙句に弁償しろって言うんだぜ?!
 あんたらこの平民上がりの騎士様をどうしていつまでも雇ってんだよ!」

 まぁ、同じ平民からも言われ続けた言葉に俺は耐性があるけど、貴族でもない者から、それを初めて直接耳にしたブルフォードはその言葉に耳を疑って唖然としていれば、男達はブルフォードが完全にビビってるのと勘違いしてか隊服を握りしめ、自分の視線までブルフォードの長身の頭を引き摺り下ろすのだった。

「騎士様よぉ、俺達ちょー怖くってよぉ。
 ビビって涙が出そうなんだ。 
 こう言うのって当然慰謝料出るよな?」

 何故そう言った事になるのか俺達も疑問よりも先に耳を疑うがブルフォードはその手を無造作に振り払えば男達はさらに激昂して殴りつけるような拳でもう一度ブルフォードの隊服を握りしめて視線まで引きずり下ろす。
 さすがに今度はヤバいと思うもブルフォードはそのまま男を捕まえて器用に一瞬、男の身を引き寄せたかと思えば突き放し、そして足払いをしていた。
 それは見事に尻餅をついた男に向かってブルフォードは冷酷に言う。

「シーヴォラ隊この男達を拘束せよ。
 騎士団への侮辱罪、建物への器物破損、そして公務中の騎士に対する暴力の公務執行妨害。
 さらに陛下直属の配下である宮廷騎士への侮辱、陛下への侮辱として牢に放り込め。
 ダルカイス商会にも追って罰を言い渡す。
 連れて行けっ!」
「はっ!!!」

 すぐに返事をしたレーン小隊長がすぐに部下に拘束させて連れて行ってしまった。
 まだまだ拘束もきつく縛りがちで連行も乱雑な新人騎士達にやらせたのを黙って見送り去って行く後姿が見えなくなった所で

「シーヴォラいいか?
 身分とはこういう時に大いに利用するべきだ」
「やっぱりわざとですね?」
「ああ、グロス団長が一昨日の書類を慌てて持って来るから何かあるかもしれないから行けと言ってな……
 ほんとお前のカンは頼りになる」

 そんな風に褒めてくれるも

「ですが、俺は部下を守りきれませんでした」

 こんな形でノラスを守る事になってしまったが本当に守れたかどうかは疑問だけが残る。
 そんな俺にブルフォードは小さな笑みを零し

「ノラス小隊長の私物は何所だ?
 俺が絶対あいつらに奪われない絶好の隠し場所に隠して来てやるよ」

 絶対奪わせないから安心して任せろ。

 そんな言葉に苦笑するもランダー達が慌てて隠した先のシルビオの私室の惨状に誰もが言葉をなくすのだった。








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