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うちの隊長も元伴侶の空間収納の中身をとても気になって仕方がないのです

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 リオネルの説明をフレッドに一通り済ませた所でヴォーグは気付け薬で目を覚まさせた。
 魔石について話しをしてたはずなのにいつの間にか従業員はいないし何故か寝ているという覚えのない自分の様子に冷静な顔を隠せずに慌てふためいているのをマリーはかわいいですねと微笑んでいたが、三十過ぎた男を可愛いと称するかと首をひねらせる。
 まぁ、素直で可愛い所はあるのだがと、先ほどの時だってどんな目に合わせられるか判っていただろうに素直に大人しく受け入れた部分は確かに可愛いなと思わず頷いてしまえばフレッドの視線が鋭さを増していた。
 誤魔化すように咳払いをして仕事の話しに入るからとマリーを店に戻させた所で切り出した。

「さてリオネル、今回ウィングフィールドに来たのは件の魔石の仕入れ先でもあるダルカイス商会のラザル・ダルカイスについてだ。
 お前の今知る限りでいいから教えろ」
「ダルカイス殿ですか?
 私が知る限りでは先代が体調を崩してから店長として手腕を振るい、先代までの職人を育てる為の投資と言う経営方針から転換して売り上げ至上主義になりました。
 それに前にも話をしたかと思いますが、隣国に出店しましてそちらでこの国では扱えない商品を取り扱っていると聞いています」
「人身売買だな?」
「御存知でしたか。
 ですがあちらでは合法の為に我が国からとやかくは言う事が出来ません」
「だが、借金の形にこの国の人間が向こうに連れて行かれて売られるというのはお前はどう思う?」
「……」

 長い沈黙は自身の生い立ちも考えてしまうのだろう。
 ちらりとフレッドを見る視線には「これは知ってる」と言えばゆっくりと口を開いた。

「仕方がないと思います。
 返済不可能なまで借りる方にも問題があるし、見通しの甘さがそもそもの原因です。
 この国でも一定金額以上の借り入れには保証人制度を取る様になってやっとお金を貸す方も破産する事無くまともな営業が出来ると言う物なので」
「ちなみにうちでは?」
「金貸しはしておりません。
 数名の従業員が家を購入した時の借金があるようですが店には害はありません。
 最悪の場合は裏方に回して仕事を変えさせたりとは考えてますが、今の所順調に返済をして居る様子です。
 そう言った一部を抜けば従業員も含めて借りもしてません」

 一瞬よぎった不安も汲み取っての返答に満足して頷く。
 こいつのこういった口に出して言わなくても察する気配りが気持ちいいよなとちらりと背後に立つ男を見る。
 こいつとて察しはいいのだが俺と話をする為にわざと言葉を重ねさせる辺りめんどくさい男なのだが、そのめんどくさいも最近では楽しんでいる俺が居て、なんだか居心地の悪い俺も居たりもする。
 何が言いたいと言うような視線の男にむっとして思わず睨みつけてしまうも
 
「最近こんな話を聞いた。
 二十年ほど前に件の店の前店主より金を借りて商売を始めるも失敗するが少しずつ返済を続けていた。
 子供達も育ってようやく返済のめどが経った頃、その前の店主が亡くなり今の店主と代替わりした。
 しかしお前が言った通り経営方針の転換から利子まできっちりと払って欲しいとなり二十年ほど前に借りた時までさかのぼって再計算したらしいのだがどう単純計算しても膨大に膨れ上がった利子に返済の見込みは望めなく、その子供達が親によって勝手に保証人とされて数カ月後には売られていく予定になっている」

 驚きから段々怒りを含む色合いに変化していくリオネルの怒りはもっともだとおもう。

「ダルカイス商会はそこまで堕ちましたか……」
「話を聞く限りではその子供達欲しさと言う様子も見てとれる。
 詳しくは今情報を集めさせている状態だが、噂話でもいい。
 何日か王都にいるから話しを集めておいてくれ」
「承りました」

 ピシッとした背筋をそのまま倒す綺麗な姿勢をシルビオ達にも学ばせたいなと思いながら顔を上げるのを待って

「因みにその時の借金の原因は魔石だ」

 リオネルの表情が固まった。
 先ほどまで勘違いして大恥すらかいた男はなんで突然俺がこの店にやって来た事をやっと理解した顔になった。

「帳簿を見る限りまだ扱い始めだからか向こうも警戒しているが、この程度の屑石を手渡して来た辺りこちらを舐め始めた傾向だろう。
 今度売りに来たらお前は別の購入ルートを見付けたと言って断ればいい。
 買い付けに行く必要もない。
 単純にこれほどの在庫を用立てる事が出来たと言って追い返しても構わん。
 最もお前なら俺なんかより上手くやるだろうがな」

 言いながら収納空間から魔石を取り出した。
 俺の中でランク分けした中から最下層の魔石を机の上にゴロゴロと吐きだした。
 小さな魔石はやがて山になり、机一杯に広がって端から落ちて行き……

「ルードは溜めすぎだ」
「ああ、うん。さすがにそう思った。
 いくらでも入るから適当に入れておいたままだったからな……」
「いい加減収納空間の中身を整理しろ」
「つまり、旦那様はこれほどの数の魔物を倒されたという事でしょうか……」

 残念な事にこの大陸では魔石の鉱脈が発見されていないので入手方法はそうなってしまう。

「これだけの山を見ると何だか魔物が可哀想になってきました」
「だがこれ以上の人間が魔物に殺されている。 
 どちらが可愛そうか、何が可愛そうか下手な事を言うな」

 さすがは元騎士団長。
 魔物に滅ぼされた辺境の村を幾つも見てきた男の言葉の重みは違うなと頷きながら

「ダルカイス商会のやり方は気に入らん。
 喧嘩売るなら正当に買ってやろう。
 販売レートは向こうと同じぐらいでいい。
 向こうが安くしても今の価格を維持しろ、元手はただも同然なのだから。
 これを集める冒険者達の仕事を安くするわけにはいかない。
    この国の魔物対策はほとんどが冒険者頼りだから。
 それにだ」

 二人の顔を見てニヤリと笑う。

「本物の良さを知れば安物何て二度と買いたくなくしてやる。
 向こうは一度下げた値を上げる事は出来ないだろうし、金額に見合った価値を安く感じるぐらいの細工をしてやる」

 ふふふと笑う俺はいくつか手に取った魔石に単純な魔法を仕込んだ。
 魔法陣なんて必要ないんじゃないのかと言う二人分の視線を受け止めながら

「少しでも長く使える様に無駄な力の放出を抑えさせただけだ。
 この魔法陣を組み込んだだけで単純な使用方法なら同レベルの代物より何倍も使える。
 独学の魔法使いでは見よう見まねで組み込んでみても暴発するだけの繊細な加減を必要とするが、俺からすればトレーニングの一環程度の技術だ。
 フレッド、お前に教えるから暫く訓練して居ろ」

 言いながらフレッドは魔石の山を見つめ

「これ全部ですか?」
「これが終わる頃にはお前はこの国では俺に次ぐ繊細な魔法を扱える技術を身に着ける事が出来るだろう」

 珍しく顔を引き攣る男の表情にヴォーグは酷く満足するのだった。







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