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うちの隊長は部下がとんでもない暴走をしようとしている事を知りません
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部下を置いてきぼりにせんとばかりの全力の駆け足で記憶に残るその木を探し出して確かこれだったとアルフォニアの大木に抱き着いた。
さすがに部下達はそんな俺の行動に驚いているものの
「ヴォーグさん、お願いです。
声が聞こえたら来て下さいませんか?
でないとアルフォニアの木をぶっこ抜きますよ?
それともアルフォニアの木でナニっても良いですか?」
「それは止めてくれ」
途端に森の匂いが強くなれば着の身着のままと言わんばかりに頭にタオルを巻いて半袖の袖を肩まで捲り上げ、大きな鋏を携えた作業姿の突然の出現にいくらなんでもそれはないだろ大公様と心の中で突っ込んでしまう。が
「話を聞いてください!!!」
植物の世話をしていたのだろう草の汁に染まる鋏を慌てて危ないと収納しながらも俺が飛び込む様にしてその体をすがる様に捕まえればそのまま地面に倒れ込むのだった。
「シルビオ小隊長、一体何があったのです?!」
突然の俺の行動に驚いて周囲に助けを求めるもみんな彷徨う視線の中俺達はノラスの家で起きた事を隊員全員の記憶の限りヴォーグに説明するのだった。
「……最悪だ」
頭を抱えての第一声に俺達は言葉通り最悪の予感を想像する。
「一体どうすればそんな事に、と言うか連帯人はダメだ。
みんなも絶対連帯人にはなるな。
いくら好きな人から親兄弟からでもお願いされても絶対断れ。
連帯人に総ての借金が向かうから、つまりこの場合ノラス小隊長の両親はお金が払えなくても問題がなく、総ての借金がノラス小隊長とその妹さんに向く。
両親が死んでも関係ない。
こうなるとノラス小隊長と妹さん欲しさに連帯人になってもらったという考え方の方がしっくりくる」
「ごめんなさい、それはどういった意味で……」
何を言っているのか判ってはいるが、理解したくないとこの後の事を教えないでくれと拒否している思考にヴォーグも聞き分けのない子供に諭すではなくただ真実を淡々ともう一度教えてくれた。
「連帯人と言う制度は借金を踏み倒さない為に別の人を保証とする制度だ。
借金を負った人が返済できなくて逃げても代わりに連帯人の人に払ってもらう事で返済可能と言う事でお金を貸してもらえるという約束になる。
話を聞くとお金を貸してくれる人の代が変わって今までなあなあだった所をきっちりと取り立てる事にしたという事だよな?
その結果二十数年分の借金の利息が増えに増えて八億六千万の借金……
ノラス小隊長の給金ではどう考えても返済不可能だ。
どうあがいても増える一方だぞ……」
「そんな……」
「まぁ、立地の良い家と躾の行き届いた働き盛りの息子と見目麗しいこれから花咲く年頃の娘となれば元々の金額がいくらか知らないが十分に元を取れると踏んだのだろうな」
諦めろと言うヴォーグにシルビオはしがみついて
「あいつ副隊長になれるかもしれないんです!
あいつの夢だった隊長の隣に立てていつかは隊長になるんだって!」
俺の言葉をきっかけに部下達もノラスの良い所を次々に並べ立てて行く。
それはどれもヴォーグも知るノラスの良さであり、彼の懸命な姿を知らないわけではない。
だがだ。
「それを俺に言ってどうする?」
ヴォーグはだから何だという。
途端に表情を怖ばせるシルビオに向いて
「俺がノラス小隊長を助ける理由がどこに在る?
彼はラグナーの部下の一人でしかない。
それに借金は彼ではなくその両親の物。
面識すらない相手に助言するのは一刻も早く小隊長と妹さんに本当の事を言ってその利息が正しい物か見直せと言うくらいだ」
「そんな……」
「大体だ。
この話を持ってきたシルビオ小隊長達が何の身を切らずに何で俺を頼る?
討伐の仕方を教えてくれって言われて知り合いだから教えて報酬に魔物の素材を貰ってる程度の間柄だ。
頼るとしたらクラウゼ副隊長やそれこそラグナーだろ?」
そこまで言われて改めてこれだけ親しい間柄だと思っていた相手が境界線をきっちりと引いている事に気が付いた。
丁寧とかそう言ったものかと思っていたが相手は俺達なんて歯牙にもかけない人で、常々小隊長と呼ばれるのは彼の内でない他人だからだ。
「そもそもその金額ではクラウゼ家とは言え簡単に動かせない。
用立てるとしたらどこかの土地を売って買われて初めて得るお金になる。
正直クラウゼ家の土地はどれも直ぐ購入したいという場所柄でもないし、本宅なら総て売ればお釣りぐらいは出るが、あの土地はまだ父君の物だ。
となるとクラウゼ副隊長が動かせる程度の金はたかが知れてる。
そもそもクラウゼ副隊長にとっては騎士団の給金なんて小遣い程度でラグナーも孤児院に給金のほとんどを寄付してるから手持ちはないと思え」
一緒に暮らしていた時に討伐で稼がせた程度が彼の全財産だろう。
そればかりは孤児院の運営の為にならないと言って孤児院に寄付するのはやめさせていたが。
「確かに顔見知りの知人が借金で売られるというのは心が痛むが、彼を助けてやりたいと思う者が何も動かずに何で俺が身銭を切らなくてはいけない?」
当然の疑問と言うようにシルビオに聞けば彼は何やら顔を真っ赤にして考え込むも、空気の抜けた風船のように地面に寝転び
「すみません。
俺はただ相談したくて、連帯人とかそう言うのがなんか嫌な響きでヴォーグさんに無理言ってお話を聞いてもらっただけなんです。
大公だから、お金を持ってそうだからって目が曇りました。
とんだ勘違いをして申し訳ありません」
「それをわかってもらえばいいさ」
シルビオの言葉に部下達も自分達の勘違いが検討違いな事にやっと気づき項垂れる中シルビオは収納空間から銀行口座の通帳を取り出して
「ヴォーグさん、これだけあれば少しは役に立ちますか?!」
無防備にも中身を見せた内容と行動に部下も同じように通帳を取り出してヴォーグに並べて見せる。
早速行動しようと言う姿にヴォーグは頭痛を覚えながらもその数字を足して計算するが
「随分溜めたね。
もう少しで一億になる」
ほんの一割強の金額にしかならない事に愕然とする。
「あと、どれぐらい魔物を狩れば足りるかな?」
「さあ?
シルビオ小隊長達ならBクラス程度の魔物を相手として一日百万とするだろ?
これから毎日として約九十日として、それでもおおよそ一億だ。
騎士の仕事を辞めればだけど」
「全然足りない……」
「家を売って何とか隊のみんなにお金を貸して貰えば半分は行くだろう。
妹かノラス小隊長のどちらかは売られずに済むじゃないか」
「そんな……」
どちらかと言われたら絶対妹を守るとノラスは判断するだろう。
ヴォーグとてシーヴォラ隊に居る時に彼の妹が下級貴族の子息と恋仲だと噂を聞くぐらいだし、下級貴族の息子にそれだけの支払いは出来なく十分に破談の理由になってしまう。
そもそもすでに付き合っていいレベルではないだろうに、若さゆえか愛ゆえか判らないが手が切れてない状態は彼の家が酷く危うい。
「それはシルビオ小隊達が苦しむ問題ではなくて寧ろ頭を悩ませるのはノラス小隊の話しだ」
「だけどノラスを副隊長にするってあいつらもっ!」
「言い方は悪いが、別に珍しい話でもない」
突き放すようなヴォーグの言葉にシルビオは興奮したかのようにやけになって声を荒げ
「だったら俺を買ってください!
俺なんでもどんな事でもしますからそれでノラスを副隊長にさせてください!」
伸びた草達が風に揺られてかさかさとなっていた。
さすがに部下達はそんな俺の行動に驚いているものの
「ヴォーグさん、お願いです。
声が聞こえたら来て下さいませんか?
でないとアルフォニアの木をぶっこ抜きますよ?
それともアルフォニアの木でナニっても良いですか?」
「それは止めてくれ」
途端に森の匂いが強くなれば着の身着のままと言わんばかりに頭にタオルを巻いて半袖の袖を肩まで捲り上げ、大きな鋏を携えた作業姿の突然の出現にいくらなんでもそれはないだろ大公様と心の中で突っ込んでしまう。が
「話を聞いてください!!!」
植物の世話をしていたのだろう草の汁に染まる鋏を慌てて危ないと収納しながらも俺が飛び込む様にしてその体をすがる様に捕まえればそのまま地面に倒れ込むのだった。
「シルビオ小隊長、一体何があったのです?!」
突然の俺の行動に驚いて周囲に助けを求めるもみんな彷徨う視線の中俺達はノラスの家で起きた事を隊員全員の記憶の限りヴォーグに説明するのだった。
「……最悪だ」
頭を抱えての第一声に俺達は言葉通り最悪の予感を想像する。
「一体どうすればそんな事に、と言うか連帯人はダメだ。
みんなも絶対連帯人にはなるな。
いくら好きな人から親兄弟からでもお願いされても絶対断れ。
連帯人に総ての借金が向かうから、つまりこの場合ノラス小隊長の両親はお金が払えなくても問題がなく、総ての借金がノラス小隊長とその妹さんに向く。
両親が死んでも関係ない。
こうなるとノラス小隊長と妹さん欲しさに連帯人になってもらったという考え方の方がしっくりくる」
「ごめんなさい、それはどういった意味で……」
何を言っているのか判ってはいるが、理解したくないとこの後の事を教えないでくれと拒否している思考にヴォーグも聞き分けのない子供に諭すではなくただ真実を淡々ともう一度教えてくれた。
「連帯人と言う制度は借金を踏み倒さない為に別の人を保証とする制度だ。
借金を負った人が返済できなくて逃げても代わりに連帯人の人に払ってもらう事で返済可能と言う事でお金を貸してもらえるという約束になる。
話を聞くとお金を貸してくれる人の代が変わって今までなあなあだった所をきっちりと取り立てる事にしたという事だよな?
その結果二十数年分の借金の利息が増えに増えて八億六千万の借金……
ノラス小隊長の給金ではどう考えても返済不可能だ。
どうあがいても増える一方だぞ……」
「そんな……」
「まぁ、立地の良い家と躾の行き届いた働き盛りの息子と見目麗しいこれから花咲く年頃の娘となれば元々の金額がいくらか知らないが十分に元を取れると踏んだのだろうな」
諦めろと言うヴォーグにシルビオはしがみついて
「あいつ副隊長になれるかもしれないんです!
あいつの夢だった隊長の隣に立てていつかは隊長になるんだって!」
俺の言葉をきっかけに部下達もノラスの良い所を次々に並べ立てて行く。
それはどれもヴォーグも知るノラスの良さであり、彼の懸命な姿を知らないわけではない。
だがだ。
「それを俺に言ってどうする?」
ヴォーグはだから何だという。
途端に表情を怖ばせるシルビオに向いて
「俺がノラス小隊長を助ける理由がどこに在る?
彼はラグナーの部下の一人でしかない。
それに借金は彼ではなくその両親の物。
面識すらない相手に助言するのは一刻も早く小隊長と妹さんに本当の事を言ってその利息が正しい物か見直せと言うくらいだ」
「そんな……」
「大体だ。
この話を持ってきたシルビオ小隊長達が何の身を切らずに何で俺を頼る?
討伐の仕方を教えてくれって言われて知り合いだから教えて報酬に魔物の素材を貰ってる程度の間柄だ。
頼るとしたらクラウゼ副隊長やそれこそラグナーだろ?」
そこまで言われて改めてこれだけ親しい間柄だと思っていた相手が境界線をきっちりと引いている事に気が付いた。
丁寧とかそう言ったものかと思っていたが相手は俺達なんて歯牙にもかけない人で、常々小隊長と呼ばれるのは彼の内でない他人だからだ。
「そもそもその金額ではクラウゼ家とは言え簡単に動かせない。
用立てるとしたらどこかの土地を売って買われて初めて得るお金になる。
正直クラウゼ家の土地はどれも直ぐ購入したいという場所柄でもないし、本宅なら総て売ればお釣りぐらいは出るが、あの土地はまだ父君の物だ。
となるとクラウゼ副隊長が動かせる程度の金はたかが知れてる。
そもそもクラウゼ副隊長にとっては騎士団の給金なんて小遣い程度でラグナーも孤児院に給金のほとんどを寄付してるから手持ちはないと思え」
一緒に暮らしていた時に討伐で稼がせた程度が彼の全財産だろう。
そればかりは孤児院の運営の為にならないと言って孤児院に寄付するのはやめさせていたが。
「確かに顔見知りの知人が借金で売られるというのは心が痛むが、彼を助けてやりたいと思う者が何も動かずに何で俺が身銭を切らなくてはいけない?」
当然の疑問と言うようにシルビオに聞けば彼は何やら顔を真っ赤にして考え込むも、空気の抜けた風船のように地面に寝転び
「すみません。
俺はただ相談したくて、連帯人とかそう言うのがなんか嫌な響きでヴォーグさんに無理言ってお話を聞いてもらっただけなんです。
大公だから、お金を持ってそうだからって目が曇りました。
とんだ勘違いをして申し訳ありません」
「それをわかってもらえばいいさ」
シルビオの言葉に部下達も自分達の勘違いが検討違いな事にやっと気づき項垂れる中シルビオは収納空間から銀行口座の通帳を取り出して
「ヴォーグさん、これだけあれば少しは役に立ちますか?!」
無防備にも中身を見せた内容と行動に部下も同じように通帳を取り出してヴォーグに並べて見せる。
早速行動しようと言う姿にヴォーグは頭痛を覚えながらもその数字を足して計算するが
「随分溜めたね。
もう少しで一億になる」
ほんの一割強の金額にしかならない事に愕然とする。
「あと、どれぐらい魔物を狩れば足りるかな?」
「さあ?
シルビオ小隊長達ならBクラス程度の魔物を相手として一日百万とするだろ?
これから毎日として約九十日として、それでもおおよそ一億だ。
騎士の仕事を辞めればだけど」
「全然足りない……」
「家を売って何とか隊のみんなにお金を貸して貰えば半分は行くだろう。
妹かノラス小隊長のどちらかは売られずに済むじゃないか」
「そんな……」
どちらかと言われたら絶対妹を守るとノラスは判断するだろう。
ヴォーグとてシーヴォラ隊に居る時に彼の妹が下級貴族の子息と恋仲だと噂を聞くぐらいだし、下級貴族の息子にそれだけの支払いは出来なく十分に破談の理由になってしまう。
そもそもすでに付き合っていいレベルではないだろうに、若さゆえか愛ゆえか判らないが手が切れてない状態は彼の家が酷く危うい。
「それはシルビオ小隊達が苦しむ問題ではなくて寧ろ頭を悩ませるのはノラス小隊の話しだ」
「だけどノラスを副隊長にするってあいつらもっ!」
「言い方は悪いが、別に珍しい話でもない」
突き放すようなヴォーグの言葉にシルビオは興奮したかのようにやけになって声を荒げ
「だったら俺を買ってください!
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