うちの隊長は補佐官殿が気になるようですが

雪那 由多

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うちの隊長はこの戦闘風景を城から眺めていました

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 低い姿勢でトゥロとテレサがぐるぐると渦を巻く羊の角を持つ魔族のシュヴェアに襲い掛かる。
 素早い二人のアタックにシュヴェアは嬉しそうな顔でどこからか取り出した剣で二人の剣を受け止めていた。

「ははは、人間にしては動きがいい!」
「くうー!アルホルンの時の魔族より強い?!」
「テレサ掴まるなよ!」

 捕まえようとした手をトゥロの合図で潜り抜けて距離を取ればすかさず背後からユハの弓が一撃を当てていた。

「よっし!全弾命中!」

 五本の矢は総て連続でシュヴェアに降り注げばその勢いで地面に突っ伏す事になったシュヴェアに

「だっせー。
 人間に転ばされてやんのな?」
「うるせー!」

 仲間がやられても楽しそうに笑うドバリーにむきになるシュヴェアだが

「大体お前ダヴィド程度にも勝てないくせに何張り切ってるのかなぁ?」

 笑うドバリーはホルガーと剣を交わしつつもシュヴェアを見て笑っていた。

「そう言うドバリーもダヴィドからいつも逃げっぱなしの癖に!」
「あいつ変に触って来るから苦手なんだよ。
 だからインキュバスって奴らは嫌なんだよ」
「うん。納得」

 何故か真顔で返答していた。
 何があったか想像はインキュバスと言う時点でつきそうだったがホルガーは勘弁しろよと言えばだろう?と敵にいい笑顔で返されてしまった。
 
「俺達ダヴィドだったか?
 そいつに当らなくてよかった……
 やたらと噛みついてくる程度のヴァンパイアキングでよかった……」

 穴は開くだろうが男として何かを失うわけではないとほっとしつつも人として何かを失うのはいかがなものかと考えていたが

「おまえかジクストゥスをやったのは」

 ドバリーは楽しそうな顔をしつつも警戒する様に瞳の色を変え

「あいつああ見えても俺といい勝負してた奴なんだぜ?」
「ならお前もやれるな」
「ここまでのし上がるのにずっと一緒に来たやつなんだ!」

 目の色が黄金色に変わる。
 二本の鋭く突きでた角が鋭くスクリューを描いたと思えばそのまま槍になってそれを手に取った。

「着脱可能?!」

 たまたま横を通り過ぎたテレサがかっこいい!と褒め称えるもドバリーの目は真剣にホルガーを睨んでいて

「お前は俺が殺す!」

 血走ったかの良な目で睨まれればさっきまでののほほんとした雰囲気はどこに行ったのか先端の鋭い角で何度も貫くように攻撃をしてきた。
 紙一重で辛うじて避ける物の服にはかわしきれない傷跡の血が浮かび上がっていた。

「お前死んだな!
 ドバリーの本気に串刺しになっちまいな!」

 笑うシュヴェアは何時の間にだろうか幾つもの切り傷が刻み込まれ全身血まみれだったが、それでも戦闘狂と言う様に笑っていた。

「ああ、いいなぁ。
 こんな風に命の削り合いの戦いが出来るなんて!
 このシュヴェアも人間の殺意によって殺されて魔王クウォールッツの力の糧になる。
 最高だぁー!」

 嬉しそうに、それでも確実にトゥロとテレサを執拗に狙う魔族らしい男に

「ユハ準備出来たわ!」
「二人とも離れろ!」

 その合図とともに一条の光の矢が走った。

「あはは、ばっかだなぁ。
 攻撃するのに合図をしてたら防御するに決まってるだろ……」

 言うも光の矢の攻撃の総てを防げなかったというように体中の至る所が焦げて皮膚がただれた姿になるもそこは魔族。
 痛みよりも興奮する性質なのか余計やる気になってユハに襲いかかろうとするも

「光咲け、炎と遊べ、踊り狂う狂嵐のミュリエル!」

 光が爆ぜた。同時に肺まで焼かれそうな熱が嵐のごとく暴れ回る。
 術者、マーカーを伴う仲間はその熱で肌一枚焼く事はないが、建物にも通路の一角からまるでここに境目があるというようにその熱は漏れる事はなく、恐ろしい熱量の火柱だけが天に向かって立ち昇っていた。

「が、あ……」

 その中心にいたシュヴェアは奇跡的にも形は残っていたものの、消し炭のような姿になっており……

 トゥロが手に持つ剣でその体の中心にある魔核を砕いていた。
 
 パキン……

 魔石となった核を砕く音はいつも美しい涼やかな音を奏で、魔石が幾つにも砕けて落ちた音はまるで何かの音楽のようだった。
 同時に消し炭の体は風の余波にまかれるようにやがてどこにも見当たらなくなって、キラキラと光る魔石だけが幻想的な光景を残していた。








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