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うちの隊長はいい思い出にされて泣かれている事を知りません
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夢を見ていた。
なんて暖かな夢だろうと目を覚ました時思わずと言うように零れ落ちた涙が頬を伝っていた。
指の腹でそっと拭えば透明な水滴は静かに手の平を伝って流れて行った。
前に泣いたのは何時だったか。
古い記憶を引き出そうとするもその前に手の甲で拭い、いつだったかなんて記憶探しは既に止めていた。
夢で逢っていた人を思い出して小さく笑い、自分のばかばかしさに呆れながらも彼との出会いを涙の記憶の代わりに思い出していた。
なんて綺麗な人なんだろう……
初めて会った時、呼吸をするのを忘れて魅入ってしまったというのにその人はその氷のような瞳に何の感情を乗せる事無くそして口数も少なく背筋を正しく伸ばして感情を読む事も難しい立ち姿での対面だった。
まるで彫刻か、それとも芸術か。
騎士だというのに何て静かた佇まいなのだろうとほんの数分のわずかな時間の対面の間、俺の意識は総てその人に奪われていた。
時間の流れが速いのか遅いのか判らなく、ただひたすら心臓の音が聞こえるのかと言わんばかりに緊張をしていた。
その後聞いたラグナー・シーヴォラと言う人の噂はとにかく両極端だった。
とても素晴らしいという人から、平民出なのに隊長にまでのし上がったのはあの綺麗な顔で上司達を籠絡して行ったからと始まって、とても難しい任務を幾つもこなすとても強い騎士だという人から、誰にでも股を開くあばずれだとも言う人もいた。
なんて両極端なんだと苦笑しつつも早々に顔を合わせる事のない下っ端の雑用と所属する隊の長とではすれ違うどころかその顔すら見ない日がほとんどだった。
とは言え書類書き要員としてはそれなりに目の疲れる仕事だがまだ陽のあるうちに家に帰れるという仕事はとても理想であり、そんな職場で見目麗しい上司がいるのは会えたらラッキーなくらいのレアキャラだと思っていた。
仕事を幾つか覚え、どんどん任せてもらううちに初めて小隊長以上が机を並べる部屋へと足を入れた日だった。
「とりあえず返却しそうにない人に渡してこい」
そんな教育係でもあるブリック補佐官の指示で隊長室に足を踏み入れるも誰がどう見ても不備があれば突っ返してくるような顔ぶれに途方に暮れてしまうもクラウゼ副隊長が俺を見付けて書類を受け取ってくれた。
この人も貴族らしく黒い髪と黒い瞳が似合う麗人と言う部類だろうか。
切れ長の瞳が文字を追っていくのをただ待つのは居心地が悪くざっと内容を伝えれば眉間にしわを寄せ、そして隊長をそのまま一睨みしてそれからこれはどう言った事だと言わんばかりに首をかしげるのだから、あまり広いとは言えない隊長室でそれは目立ち、ついに隊長まで動いて俺の書類を覗き見たのだった。
いきなりトップが見るのですか?
まだ書きなれてない書類に不備があったらあの感情のない視線で叱られるのはきついだろうなとぼんやりと眺めていればただ一言
「お前か」
初対面だというのに失望した。
何度聞かされた言葉だろう。
そんな大きなミスでもあったのだろうか。
『一度のミスが命取りになる』
何度も深層心理まで刻まれたその言葉に血の気が引くぐらいの恐怖に視界はくらくらとして足元がおぼつかない俺に背を向けて隊長はすぐさま何事もなかったというように机に戻って……
頭を横たえた?
いきなり泣き出した?
一体何がそこまであったのかと書類を見るもクラウゼ副隊長はとても申し訳ない顔で俺の書く文字が綺麗だと誉めていたと言ってくれた。
その後でこの対応?
素直に喜んでいいのかどうなのかと、でもとりあえず額面通りに感謝をして置けば
「アレク、そいつ見ない顔だけどどこの奴だ?」
なんて言う魔法だろうか。
大気中の魔素が反応もしてないのに、誰かが魔法を使っている気配さえないのに確実に室温はどんどんと下がり、気が付けば室内の温度が確実に体感5℃は下がった。
その中で副隊長が説明をするも、一言一言に室温が1℃ずつ下がって行って、氷点下に突入した頃
「この人はあの会議の時目を開けて寝てたのだから、貴方の挨拶さえ聞いてない酷い隊長なのだから頭を下げさせなさい」
「アレク、頼むそれ以上言わないでくれ!」
よほど恥ずかしいのだろう。
うん。
目を開けて必要に応じて返事をして求められる最低限の動きをしていたのにすべて睡眠下での行動だなんてとても口に出せる事じゃなくて……
頼むから他の部下達には知られないように黙っててくれなんて顔を真っ赤にして涙ながらにお願いされる様を見て氷の彫刻のような綺麗な人にも確かに人の感情と暖かさがあって、綺麗な人と言うイメージは何て可愛らしい人なのだろうと一変してしまったのは今も黙っている俺の思いだった。
それから何故か結婚する事となり、ただの書類上の付き合いになるという話だったはずなのにいつの間にか野良猫のごとく家に居着いてしまい、一室どころか挙句の果てには俺のベットまで占領されてしまっていた。
ちなみにいつの間にか風呂場も彼の好きな石鹸に変えられ、戸棚の茶葉も彼の好きな茶葉が数点並んでいて、なんて言う新婚プレイなのか是非とも教えてもらいたかった。
まだ幼い頃、七才だった俺は先生の元に預けられて一人寂しく泣いていた頃をふと思い出した。
泣き声を聞きつけてやってきた先生はそれから俺は先生のベットで寝る事となり、俺は先生に抱きしめられたまま寝付かされていたからすぐそばに人がいるというのは酷く安心して、大きくなってから一人で寝る事も多くなったけど身長が先生を越えても先生がいる時はいつも一緒で、安心で。
それを思い出してしまいベットに潜り込まれてもずっと拒絶できないで居た。
ただ、それにも慣れると今度は綺麗な顔をすぐ目の前で眺める事となり……
自分が男であることを嫌でも思い知らされる事となって少しだけ自己嫌悪に陥った。
ある日の事だった。
ついに決行された城での捕り物騒ぎの折りに、まさかの古い知人との再会から知人巡りをさせられて何とか解放された日の事だ。
ラグナーがアルホルンに出かけるという話を聞いて少しこの家も静かになるなと思いながら二階の寝室に着替えに行って気が付いた。
誰かが魔法を使った形跡を感じた。
ギルドがらみで何か罠でも仕掛けられたかと思いながら家じゅうに解除の魔法を掛けるも何も反応せず。
誰かが侵入したのかと思うも扉や窓に仕掛けた防犯魔法も作動せず。
一体何なんだと思って明かりの魔石と共に設置してある魔石を記憶媒体として部屋の監視魔法から記録を覗き見れば……
見てはいけない物がばっちりと映っていた。
思わず目が点になり、それから真っ赤になって、あまりにも大胆な様子とその声に……
なるほど。
これだけ正しく入って来れたのなら防犯にも引っかからないし、こんな事をしていたのなら魔法を使わなくてはいけないなと消去しようとするももう一度見る俺は男の性って虚しいなと実は今も消せないまま時折見ていたりしている。
彼から好意に似た物は感じていたけど、さすがにそう言った風に思われているとは思わなかった為に今後どういう付き合いして行けばいいのだろうと頭を悩ませていたけど、アルホルンの施設を使うに当たり緑の魔法使いとして薬を作らせてやると言う甘い言葉に乗せられてほいほいと着いて行った先で再会して……
よくあれで勃ったなと感心できる恐怖はあの記録も同時に思い出したからであって……
あの予備情報が無ければいくらインキュバスによって深層心理を引きずり出されているからと言っても信じられる事は出来なかった。
あの情報が無ければ俺はすっかり飯をたかりにきて懐かれている状況だと信じてたから……
理由はどこかの腹ペコムスメのせいだと思う。
出会った頃常時金欠で、ご飯代を身体で支払っていたあのアホの子その二のせいで身体を張る性に奔放なお国柄だと暢気に楽しんでいたが……
なんだかんだ言ってあの綺麗な顔で、氷のような冷たい視線に熱を孕ませて迫られたら誰が断れるのかと考えるも副隊長辺りあっさり断るんだろうなと考えて苦笑。
よく話し合ってようやく自分でもあの綺麗な顔に魅入られていた理由に向き合って。
誘われるまま願われるままの言葉どころか逆に説得ませされてしまい、俺がわけありでもよければと言う条件を出したのにもかかわらず妥協したのはまるで俺の方で。
「楽しかったなぁ」
思い出せば自然と笑みが作れて、ほんの数日だというのにすでに懐かしくて涙が出そうだった。
なんて暖かな夢だろうと目を覚ました時思わずと言うように零れ落ちた涙が頬を伝っていた。
指の腹でそっと拭えば透明な水滴は静かに手の平を伝って流れて行った。
前に泣いたのは何時だったか。
古い記憶を引き出そうとするもその前に手の甲で拭い、いつだったかなんて記憶探しは既に止めていた。
夢で逢っていた人を思い出して小さく笑い、自分のばかばかしさに呆れながらも彼との出会いを涙の記憶の代わりに思い出していた。
なんて綺麗な人なんだろう……
初めて会った時、呼吸をするのを忘れて魅入ってしまったというのにその人はその氷のような瞳に何の感情を乗せる事無くそして口数も少なく背筋を正しく伸ばして感情を読む事も難しい立ち姿での対面だった。
まるで彫刻か、それとも芸術か。
騎士だというのに何て静かた佇まいなのだろうとほんの数分のわずかな時間の対面の間、俺の意識は総てその人に奪われていた。
時間の流れが速いのか遅いのか判らなく、ただひたすら心臓の音が聞こえるのかと言わんばかりに緊張をしていた。
その後聞いたラグナー・シーヴォラと言う人の噂はとにかく両極端だった。
とても素晴らしいという人から、平民出なのに隊長にまでのし上がったのはあの綺麗な顔で上司達を籠絡して行ったからと始まって、とても難しい任務を幾つもこなすとても強い騎士だという人から、誰にでも股を開くあばずれだとも言う人もいた。
なんて両極端なんだと苦笑しつつも早々に顔を合わせる事のない下っ端の雑用と所属する隊の長とではすれ違うどころかその顔すら見ない日がほとんどだった。
とは言え書類書き要員としてはそれなりに目の疲れる仕事だがまだ陽のあるうちに家に帰れるという仕事はとても理想であり、そんな職場で見目麗しい上司がいるのは会えたらラッキーなくらいのレアキャラだと思っていた。
仕事を幾つか覚え、どんどん任せてもらううちに初めて小隊長以上が机を並べる部屋へと足を入れた日だった。
「とりあえず返却しそうにない人に渡してこい」
そんな教育係でもあるブリック補佐官の指示で隊長室に足を踏み入れるも誰がどう見ても不備があれば突っ返してくるような顔ぶれに途方に暮れてしまうもクラウゼ副隊長が俺を見付けて書類を受け取ってくれた。
この人も貴族らしく黒い髪と黒い瞳が似合う麗人と言う部類だろうか。
切れ長の瞳が文字を追っていくのをただ待つのは居心地が悪くざっと内容を伝えれば眉間にしわを寄せ、そして隊長をそのまま一睨みしてそれからこれはどう言った事だと言わんばかりに首をかしげるのだから、あまり広いとは言えない隊長室でそれは目立ち、ついに隊長まで動いて俺の書類を覗き見たのだった。
いきなりトップが見るのですか?
まだ書きなれてない書類に不備があったらあの感情のない視線で叱られるのはきついだろうなとぼんやりと眺めていればただ一言
「お前か」
初対面だというのに失望した。
何度聞かされた言葉だろう。
そんな大きなミスでもあったのだろうか。
『一度のミスが命取りになる』
何度も深層心理まで刻まれたその言葉に血の気が引くぐらいの恐怖に視界はくらくらとして足元がおぼつかない俺に背を向けて隊長はすぐさま何事もなかったというように机に戻って……
頭を横たえた?
いきなり泣き出した?
一体何がそこまであったのかと書類を見るもクラウゼ副隊長はとても申し訳ない顔で俺の書く文字が綺麗だと誉めていたと言ってくれた。
その後でこの対応?
素直に喜んでいいのかどうなのかと、でもとりあえず額面通りに感謝をして置けば
「アレク、そいつ見ない顔だけどどこの奴だ?」
なんて言う魔法だろうか。
大気中の魔素が反応もしてないのに、誰かが魔法を使っている気配さえないのに確実に室温はどんどんと下がり、気が付けば室内の温度が確実に体感5℃は下がった。
その中で副隊長が説明をするも、一言一言に室温が1℃ずつ下がって行って、氷点下に突入した頃
「この人はあの会議の時目を開けて寝てたのだから、貴方の挨拶さえ聞いてない酷い隊長なのだから頭を下げさせなさい」
「アレク、頼むそれ以上言わないでくれ!」
よほど恥ずかしいのだろう。
うん。
目を開けて必要に応じて返事をして求められる最低限の動きをしていたのにすべて睡眠下での行動だなんてとても口に出せる事じゃなくて……
頼むから他の部下達には知られないように黙っててくれなんて顔を真っ赤にして涙ながらにお願いされる様を見て氷の彫刻のような綺麗な人にも確かに人の感情と暖かさがあって、綺麗な人と言うイメージは何て可愛らしい人なのだろうと一変してしまったのは今も黙っている俺の思いだった。
それから何故か結婚する事となり、ただの書類上の付き合いになるという話だったはずなのにいつの間にか野良猫のごとく家に居着いてしまい、一室どころか挙句の果てには俺のベットまで占領されてしまっていた。
ちなみにいつの間にか風呂場も彼の好きな石鹸に変えられ、戸棚の茶葉も彼の好きな茶葉が数点並んでいて、なんて言う新婚プレイなのか是非とも教えてもらいたかった。
まだ幼い頃、七才だった俺は先生の元に預けられて一人寂しく泣いていた頃をふと思い出した。
泣き声を聞きつけてやってきた先生はそれから俺は先生のベットで寝る事となり、俺は先生に抱きしめられたまま寝付かされていたからすぐそばに人がいるというのは酷く安心して、大きくなってから一人で寝る事も多くなったけど身長が先生を越えても先生がいる時はいつも一緒で、安心で。
それを思い出してしまいベットに潜り込まれてもずっと拒絶できないで居た。
ただ、それにも慣れると今度は綺麗な顔をすぐ目の前で眺める事となり……
自分が男であることを嫌でも思い知らされる事となって少しだけ自己嫌悪に陥った。
ある日の事だった。
ついに決行された城での捕り物騒ぎの折りに、まさかの古い知人との再会から知人巡りをさせられて何とか解放された日の事だ。
ラグナーがアルホルンに出かけるという話を聞いて少しこの家も静かになるなと思いながら二階の寝室に着替えに行って気が付いた。
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ギルドがらみで何か罠でも仕掛けられたかと思いながら家じゅうに解除の魔法を掛けるも何も反応せず。
誰かが侵入したのかと思うも扉や窓に仕掛けた防犯魔法も作動せず。
一体何なんだと思って明かりの魔石と共に設置してある魔石を記憶媒体として部屋の監視魔法から記録を覗き見れば……
見てはいけない物がばっちりと映っていた。
思わず目が点になり、それから真っ赤になって、あまりにも大胆な様子とその声に……
なるほど。
これだけ正しく入って来れたのなら防犯にも引っかからないし、こんな事をしていたのなら魔法を使わなくてはいけないなと消去しようとするももう一度見る俺は男の性って虚しいなと実は今も消せないまま時折見ていたりしている。
彼から好意に似た物は感じていたけど、さすがにそう言った風に思われているとは思わなかった為に今後どういう付き合いして行けばいいのだろうと頭を悩ませていたけど、アルホルンの施設を使うに当たり緑の魔法使いとして薬を作らせてやると言う甘い言葉に乗せられてほいほいと着いて行った先で再会して……
よくあれで勃ったなと感心できる恐怖はあの記録も同時に思い出したからであって……
あの予備情報が無ければいくらインキュバスによって深層心理を引きずり出されているからと言っても信じられる事は出来なかった。
あの情報が無ければ俺はすっかり飯をたかりにきて懐かれている状況だと信じてたから……
理由はどこかの腹ペコムスメのせいだと思う。
出会った頃常時金欠で、ご飯代を身体で支払っていたあのアホの子その二のせいで身体を張る性に奔放なお国柄だと暢気に楽しんでいたが……
なんだかんだ言ってあの綺麗な顔で、氷のような冷たい視線に熱を孕ませて迫られたら誰が断れるのかと考えるも副隊長辺りあっさり断るんだろうなと考えて苦笑。
よく話し合ってようやく自分でもあの綺麗な顔に魅入られていた理由に向き合って。
誘われるまま願われるままの言葉どころか逆に説得ませされてしまい、俺がわけありでもよければと言う条件を出したのにもかかわらず妥協したのはまるで俺の方で。
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思い出せば自然と笑みが作れて、ほんの数日だというのにすでに懐かしくて涙が出そうだった。
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